2022/06/13

「効果が分からなくてもサプリメントは飲み続けるべき?」「そもそもサプリメントに効果はあるの?」

サプリメントに対して、このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。令和元年に行われた「国民健康・栄養調査結果の概要」によると、20歳以上の方では男性の30.2%、女性の38.2%がサプリメントや健康食品を摂取しているそうです。

とても多くの方が使用しているサプリメントですが、サプリメントの効果について正しい認識をもっている方は多くはありません。そこで今回は、サプリメントに期待できる効果や正しい活用方法を解説します。

参考

サプリメント・健康食品にはいくつか種類がある

サプリメントや健康食品と呼ばれるものに、明確な定義はありません。健康増進に役立つことを売りにした健康食品のうち、とくにある成分をピンポイントで摂取できるものをサプリメントと呼ぶことが多いでしょう。サプリメントや健康食品は、種類によって期待できる効果が異なります。

一般食品

多くのサプリメントや健康食品は、食品と同じ扱いです。医薬品のように特定の効能効果はありません。錠剤やカプセルの形をしていると、いかにも何らかの効果があるように感じてしまいますが、実はそうではないのです。

特定保健用食品

いわゆる特保と呼ばれるものは、生理学的機能に影響を与える成分が含まれているサプリメントや健康食品のことを指します。特保の認定を受けているものは、「骨の健康に役立つ」や「おなかの調子を整える」といった表記が可能です。

栄養機能食品

特定の栄養成分を補給するために利用されるものを栄養機能食品といいます。「亜鉛は、味覚を正常に保つのに必要な栄養素です」や「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」などのように、限られた範囲での標榜が可能です。

機能性表示食品

サプリメントや健康食品を製造販売している事業者の責任により、科学的根拠をもとに機能性を表示したものを指します。

科学的根拠について国は審査を一切しないため、事業者が適正な表示を行うことが大切です。「本品には○○が含まれているので、○○の機能があります」のように表示できます。

サプリメントでの摂取が推奨されている成分

ドラッグストアや薬局に行くと、驚くほど多くのサプリメントが販売されています。しかし、摂取したほうがよいと言われているのは、葉酸や鉄くらいではないでしょうか。

妊娠初期に葉酸が不足すると胎児の神経管閉鎖障害を起こすリスクが高まることがわかっています。葉酸は食事から摂ってもよいのですが、サプリメントから摂取した方が体内で効率よく使われることが明らかです。そのため、とくに妊娠中の女性は葉酸の摂取が推奨されています。

また鉄は、補充することで低出生体重児を出産するリスクを減らすことが可能です。そのため米国産科婦人科学会は、鉄をサプリメントで摂取することを推奨しています。

参考

サプリメントで明確な効果は期待できない

サプリメントは基本的に、食品と同じ扱いです。特定保健用食品や機能性表示食品を除き、何かしらの機能があるような表示はできません。

特定保健用食品や機能性表示食品であっても、医薬品のような効果は認められていないため、「血圧を下げる効果があります」のような表記はできない決まりです。

そのため、サプリメントはそもそも効果を期待して飲むものではありません。

サプリメントの正しい活用方法

医薬品と同じような効果はありませんが、健康のために何か飲んでおきたいと思われている方は多いでしょう。サプリメントを飲んでいる方の約70%は、健康の保持や増進を期待して飲んでいるそうです。

仕事や家事、育児などが忙しく生活習慣を改めることが難しいこともあり、手軽に摂取できるサプリメントに頼らざるを得ない方が多いのでしょう。ではこのような場合、サプリメントをどのようにして活用していけばよいのでしょうか。

参考

薬の代わりには使わない

サプリメントを薬の代わりに使うのは絶対に避けてください。血圧が気になるからGABA、コレステロールが気になるからナットウキナーゼとついつい手を出したくなりますが、サプリメントと医薬品はまったく別のものです。

医薬品を使ってきちんと治療しないことにより病状が悪化したり、症状が進んだりして体調不良を招く恐れがあります。何か気になる症状があるのなら、サプリメントで治そうと考えずに必ず受診して治療するようにしましょう。

いつ何をどれくらい飲んだかメモをしておく

サプリメントでアレルギーが起きたり、体に合わず体調が悪くなったりという例は少なからず報告されています。

何か起きたときのために、何をいつどれくらいの量飲んだのか、簡単でよいのでメモを取っておくようにしましょう。体調に異常が出た際、メモが大きく役立つことがあります。

たくさん摂取すればするほどよいというわけではない

サプリメントは食品と同じ扱いですが、だからといってどれだけ摂取しても問題ないわけではありません。たとえば、亜鉛は過剰摂取により胃障害やめまい、吐き気が起こることがあります。

ビタミンCは尿結石ができやすくなったり下痢や腹痛が起きたりすることも報告されているため注意が必要です。

サプリメントには思わぬ害が隠れていることも

医薬品のような効果がなくても、少しでも健康によいならサプリメントを摂る意味があるのではと思われる方もいるでしょう。しかし、サプリメントを使用することで健康被害が出たという報告は少なくありません。

とくに、個人輸入で海外から取り寄せるサプリメントでは、健康被害がいくつも報告されています。サプリメントとして販売されていながら医薬品成分が混ざっていることもあるため注意が必要です。

また、ビタミンのサプリメントを継続的に摂取することでがんのリスクが高くなったという研究データもあります。もともと、がんのリスクをもっている方がサプリメントを飲んでいた可能性もありますが、サプリメントが必ずしも健康によいとは限らない可能性があるのです。

参考

体調が気になるときは生活習慣を改めるのが効果的

サプリメントを使用している方のうち、約5%が病気を治療する目的で利用していると言われています。しかし、何度もお伝えしているようにサプリメントに医薬品のような効果はありません。治療、予防、軽減などはすべてできないため、病気のために飲むのは避けましょう。

健康が気になるのなら安易にサプリメントに手を出さず、生活習慣を改めるのが一番です。厚生労働省は、健康作りのために30分以上の運動を週に2日以上行うことを推奨しています。主食と副菜、主菜、果物などをバランスよく摂る食事も大切です。

参考

変化が実感できなければ摂取を一度止めてみよう

体に変化があるのかないのか分からず、止め時を見失ってなんとなくずっと飲み続けている方もいるのではないでしょうか。サプリメントを飲み続けてもとくに変わったことがない場合は、一度飲むのを止めてみるのも1つの方法です。

止めてみて「やっぱり飲んでいたほうがいい」と感じれば、また飲み始めてみてください。惰性で飲み続けていても出費がかさんでしまうだけのことがあります。

まとめ

健康のために飲んでいる方が多いサプリメントですが、医薬品のように何かを治したり予防したりする効果はないので注意しましょう。サプリメントは、大きな分類で見れば食品と同じです。病気のために飲むのではなく、サプリメントの使用をきっかけに健康にもっと目を向けるようにしてみてはいかがでしょうか。

明らかに体の調子が悪いときは、サプリメントに手を出すのではなく適切な治療を受けることを優先してください。

世の中にはいかにも何かに効きそうな宣伝文句のサプリメントが多くありますが、耳あたりのよい言葉に惑わされず、自分にとって必要なのかそうではないのかを上手に取捨選択していくことが大切です。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

 関連記事

column/btn_column_page
トップ