急性肝炎
急性肝炎とは、主に肝炎ウイルスの感染によって肝臓の機能が短期的に破壊され、肝臓に炎症が起き障害を及ぼしている状態のことです。
肝炎ウイルスには、A、B、C、D、Eの5種類の型があり、このうち急性肝炎を引き起こすのはA型、E型肝炎となり、B型とC型は急性肝炎と慢性肝炎を引き起こします。
肝炎ウイルスの他には、その他のウイルス性(EBウイルス、サイトメガロウイルス等)、薬や健康食品が原因となる薬物性、自己免疫性等があります。
急性肝炎は自然に治る可能性が高いですが、重症化して劇症肝炎や急性肝不全といった重い病態に移行することもあります。
急性肝炎の原因
肝炎にはウイルス性、自己免疫性、アルコール性等の原因があり基本的には自然に治りますが、1か月や2か月の間に治るものを「急性肝炎」、急性肝炎が治らずに炎症が持続するものを「慢性肝炎」と言います。
稀に(1%から2%)劇症肝炎や急性肝不全といった重篤な病態に重症化することがあり、死に至る可能性が高く、肝臓移植治療が必要になる場合があります。
ウイルス性肝炎
A型、B型、C型、D型、E型の肝炎ウイルスが原因となって炎症が起こる肝炎です。A型とE型は不衛生な水や食べ物、生のカキや肉等の経口感染、B型、C型、D型は血液・体液を介して感染します。
アルコール性肝炎
長期間にわたってアルコールを飲み続けると、肝細胞が壊死したり繊維化したりしますが、どの程度の期間・量でアルコール性の肝障害や脂肪肝、肝炎が起こるのかには個人差があります。
急性肝炎の症状
急性肝炎の初期は、発熱や喉の痛み、頭痛、倦怠感等、風邪のような症状が現れるため、風邪と間違うこともありますが、肝炎の特徴は黄疸です。
尿の色が濃くなることで病気に気が付くことが多く、肝炎が進行すると皮膚や白目が黄色くなり、吐き気や食欲不振等の症状が現れます。
急性肝炎の予防と治療
急性肝炎の予防
急性肝炎は5種類ある肝炎ウイルスの何れかに感染することやアルコールの接種等によって起こるため、毎日アルコールを摂取するのではなく、休肝日を設ける等の対策を取りましょう。
肝炎ウイルスの感染経路は、A型とE型は不衛生な水や食べ物、生のカキや肉の経口感染ですので、生水は飲まない、肉はよく焼く等して摂取することが予防となりますが、A型の肝炎ウイルスにはワクチンがあります。
B型、C型、D型は血液や体液を介して感染し、この内のB型にはワクチンがあり、2016年から定期接種化されています。
急性肝炎の治療
ウイルス性肝炎
入院はしますが、特別な治療は行わずに安静とバランスの良い食事を摂る等で自然に治癒します。
しかし、C型急性肝炎の場合慢性化することが多く、慢性化した時には速やかに抗ウイルス療法を行います。以前はインターフェロンが使われていましたが、現在は飲み薬で治療することが主になっています。
自己免疫性肝炎
早期発見し、免疫抑制作用のある薬物治療を行うことにより、肝硬変への移行を防ぐことが可能です。
アルコール性肝炎
安静にするために入院し、禁酒した上で点滴を行います。
重症の場合には、ステロイド薬の投与や血漿交換を行います。
急性肝炎は自然治癒しやすい疾患ですが、注意して経過を見ることも重要です。重症化や劇症化が疑われる場合に、速やかに専門医に紹介する必要があるためです。
仁愛内科医院 院長今川 宏樹
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務