自然気胸
自然気胸とは、肺の表面を覆っている胸膜の一部が膨れ上がることで「ブラ」と呼ばれる袋ができ、その袋の部分に穴が開いてしまう病気です。
自然気胸の原因
肺に穴が開くことで肺の空気が外に漏れ出し、穴のあいた肺はしぼんで小さくなり、また漏れた空気がさらに肺を圧迫し、換気ができなくなっていきます。10代後半から20代の若いやせ型体型の男性に多く発症する傾向があります。胸膜が膨れてブラができる明らかな原因が分かっていないことから、特発性自然気胸と呼ばれることもあります。
山間部に住む人よりも都市部に住む人に多いことや喫煙者に多いこと、長身痩せ型の人に多いこと等から、大気中に含まれる有害物質が原因ではないかという見解が有力です。自然気胸は、肺の中でも特に上部に起こりやすく、その理由として、肺の上部は代謝で十分な有害物質の分解ができず、肺組織が弱まりやすいためブラができるのではないかと考えられています。
自然気胸の症状
自然気胸の患者の大半は、気胸が起こっている側の胸の痛みを訴えることが多く、呼吸障害が起こることもあります。元々の肺の状態によって症状の度合いは様々ですが、軽度の呼吸障害であっても放置していると重度の呼吸障害へ進行する危険性があるため、医療機関の早期受診が大切です。
また、肺から大量の空気が漏れ続けると、肺のみならず心臓も圧迫するようになり、血圧低下や多臓器不全、すなわちショック状態を引き起こす重篤なケースもあるため、異変を感じたら速やかに医療機関を受診しましょう。
稀に、左右の肺に同時に発症することもあるため、注意が必要です。自然気胸の診断は、聴診器で左右の肺の音を聴き比べて異常が発見された場合、胸部X線検査で肺のしぼみや肺に肋骨等が刺さっていないか等を確認します。さらに場合によってはCT検査を追加して、ブラや胸膜の癒着の有無を確認することもあります。
自然気胸の予防と治療
自然気胸の疑いがある場合、胸部X線検査を行い、通院で治療可能な軽度から入院が必要な中等度、入院かつ継続治療が必要な高度まで重症度を確認します。比較的軽度の自然気胸の場合は、通院しているうちに自然と穴が塞がることもあるため、定期的に胸部X線検査を行い経過観察を行うことも多いでしょう。
穴が塞がれば肺は再び膨らんでいきます。一方で、入院を要する中等度から重度の気胸の場合は、胸の中にドレーンと呼ばれるチューブを挿入して、肺から漏れ出た空気を体外に排出する「胸腔ドレナージ」という治療を行います。胸腔ドレナージを行っているうちに自然と穴が塞がる場合は問題ありませんが、なかなか穴が塞がらない場合や左右同時に発症している場合、また何度も再発を繰り返す場合には、嚢胞を切除した後に肺を縫い合わせる「胸腔鏡手術」を行う必要があります。
場合によっては、メッシュ状のシートで肺を覆って補強する処置が施されます。自然気胸は再発することが多いとされていますが、手術を行うことで再発リスクを軽減することが可能です。何らかの事情で手術を行えない場合は、ドレーンを挿入して患者自身の血液を注入することでかさぶたを作って穴を塞ぐ癒着療法等、手術以外の治療が施されます。
手術等の治療後は再発を防ぐために予防をする必要がありますが、自然気胸の原因となるブラがなぜできるのか解明されていないことから、現段階では明確な予防方法はありません。ただし、喫煙者に多く発症することから、禁煙や喫煙本数を減らすことが自然気胸の予防に繋がると考えられています。また、自然気胸の治療を行った後は、飛行機への搭乗やスキューバーダイビングのほか、激しい運動等肺に負担がかかる行動は少なくとも1カ月は行わないよう注意しましょう。
はるた呼吸器クリニック 院長春田 吉則
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部卒業
中国労災病院・広島大学病院・広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀等で勤務