胆石症
肝臓で作られる胆汁という消化液を、肝臓から十二指腸に運ぶ管を胆管、胆管の途中で枝分かれした先にある袋状の臓器を胆嚢といいます。
胆石症は、胆石ができる場所により「胆嚢結石」「胆管結石」「肝内結石」に分けられ、症状や治療法が異なります。
胆石を起こしやすい要素を「5F」と呼びます。「5F」とは、40歳代(Forty)・女性(Female)・肥満(Fatty)・白色人種(Fair)・多産婦(Fecurd)という5つの項目です。
胆石症とは、その胆嚢や胆管に結石ができた状態です。
胆石症の原因
胆石症は、胆汁のバランスが崩れることで発症します。胆汁には、コレステロール、レシチン、胆汁酸、ビリルビン等が含まれており、これらのバランスが保たれることで消化液として機能します。しかし、食生活のバランスの乱れ等により、胆汁内のバランスが乱れると食べたものが溶けきれなくなり、結石となります。
胆石症の中でも大半を占めているのが「コレステロール結石」です。コレステロール結石は、脂質の多い食事を続けることで、胆汁内に占めるコレステロールの量が多くなり、バランスが崩れることで発症します。
また、食生活の乱れ以外にも、胆汁が細菌に感染すると発症することもあるほか、妊娠や過剰なダイエットが原因となることもあります。
胆石症の症状
胆石症の主な症状は、胆石発作、胆嚢炎、胆管炎です。
胆石発作は胆嚢結石の症状として現れることが多くあります。通常、胆嚢結石は、胆嚢に結石ができたとしても症状が現れることはありません。胆嚢は、脂肪分の多い食事を摂ると強く収縮します。この際に胆嚢の出口に胆石が詰まってしまうことで、右のわき腹やみぞおちに強い痛みが生じます。この症状を「胆石発作」と言います。また、右肩に痛みが生じたり、嘔吐を伴う場合もあります。
胆嚢炎は、細菌感染により発症した胆石症の症状です。胆嚢に細菌が感染すると、胆汁の流れが滞ります。これにより、発熱や右わき腹に痛みが生じます。ただし、高齢者や糖尿病を患っている方は自覚症状がないこともあり、発見が遅れるケースも少なくないため注意が必要です。
胆管炎は、結石が胆管で詰まって胆汁の流れをせき止めてしまい細菌感染を起こしたことで発症します。腹痛、発熱、黄疸、悪寒等の症状が見られることが多くあります。尚、黄疸(おうだん)とは、皮膚や目の色が黄色く変色することです。また、胆管炎を発症すると血液にも感染が拡大することがあります。この場合、急に意識を失ってショック状態になることもあり、最悪の場合命を落とす危険があります。
胆石症の治療法
胆石症は、胆嚢結石か胆管結石かで治療法が分けられます。
胆嚢結石で症状がない場合は経過観察になります。1年に1回程度、腹部超音波検査等の検査を受けながら経過を見ます。症状がある場合や、胆嚢炎を併発している、胆嚢癌を併発する恐れがある場合には、手術が検討されます。胆嚢結石の手術は、腹腔鏡手術が選択されることが多くあります。腹腔鏡手術はお腹に小さな穴を開けて専用器具を挿入し、胆嚢ごと摘出します。開腹手術に比べて身体の負担が少なく、通常3日〜1週間程度で退院できます。
胆管結石では、内視鏡手術が行われます。内視鏡手術では、内視鏡を口から挿入して胆石を除去します。胆管結石は急に胆管炎を起こしショック状態になる危険もあるため、症状がなくても治療が検討されることが多くあります。
胆嚢摘出術や内視鏡手術が困難な場合には、体外衝撃波結石破砕術という内科的治療が検討されます。体外衝撃波結石破砕術とは、体外から衝撃波をあてて結石を砕く治療法のことです。
胆石症の予防
胆石症を予防するためには、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。コレステロールや脂肪分の多い食事は避けてください。コレステロールは肉や魚の肝に多く含まれており、脂肪は動物性のものの摂り過ぎに特に注意が必要です。また、タンパク質や食物繊維を積極的に摂取して便秘を予防することも、胆石症の予防に繋がります。
仁愛内科医院 院長今川 宏樹
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務