腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは、24個の椎骨のうち5個ある腰椎部で、老化や運動等によって、椎間板が本来の位置からはみ出した状態のことです。はみ出た部分が神経を圧迫することで、腰や臀部、下肢の痛みや痺れといった症状が発生します。尚「ヘルニア」とは、臓器などが本来あるべき位置から外に出てしまった状態のことです。
腰椎間板ヘルニアの原因
椎間板は、髄核というゼリー状の組織を、線維輪というコラーゲンの線維でできた組織が包み込むような構造になっていて、背骨をつなぎ、クッションの役目をしています。椎間板が加齢によって老化したり、重たいものを持ち上げる動作などにより、髄核が線維輪を破って外へはみ出すことがあり、これが「椎間板ヘルニア」です。椎間板ヘルニアのうち、腰椎でヘルニアを起こすと「腰椎椎間板ヘルニア」となります。
椎間板ヘルニアはさまざまな原因で発症しますが、腰椎椎間板ヘルニアは青壮年期に多く、怪我などの大きな原因なく発症します。悪い姿勢での動作や作業、喫煙が原因となることがあります。
腰椎椎間板ヘルニアの症状
主な症状は、腰や臀部の痛み、下肢のしびれや痛みです。時に股関節痛や、足に力が入りにくい、足の感覚が鈍いといった症状を認めます。さらに症状が進行すると、下肢の麻痺や膀胱直腸障害もみられるようになります。「膀胱直腸障害」とは、排尿しようとしても尿が出なかったり、排尿後に残尿感が感じられる状態のことです。
腰椎椎間板ヘルニアの治療と予防
腰椎椎間板ヘルニアの治療
痛みが強い時期には、安静を心がけ、コルセットを着けたりします。また、消炎鎮痛薬を飲んだり、神経ブロック(神経の周りに痛みや炎症を抑える薬を注射する。)を行い、痛みを和らげます。疼痛が軽くなれば、牽引を行ったり、リハビリを行います。腹筋などの筋力の低下や下肢の柔軟性低下、姿勢などが原因となるため、リハビリでは腹筋を鍛えたり、下肢や股関節のストレッチなどを行います。
基本的に手術になることは少なく、上記の保存療法でよくなりますが、下肢の筋力低下が3ヵ月以上続く場合や、膀胱直腸障害がある場合は手術が選択されます。
手術では、「ヘルニア摘出術」が多く行われ、顕微鏡下や内視鏡下に行われ、最近は低侵襲な手術が増加傾向にあります。2018年には、コンドリアーゼという物質を椎間板内に注入する、「椎間板内酵素注入療法」が本邦でも許可されました。ただし、コンドリアーゼはたんぱく製剤であるため、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)の危険性があり、生涯で一度しか投与できません。
腰椎椎間板ヘルニアの予防
椎間板は誰でも加齢とともに傷んでいく(椎間板変性)宿命をもっており、できる範囲で負担をかけないようにすることはヘルニアの予防や治療、再発予防になると考えられます。悪い姿勢や下肢の柔軟性低下により椎間板への負担が高まるため、普段から姿勢に注意して、下肢のストレッチを行うといいでしょう。
腰痛をきたす病気は椎間板ヘルニア以外にも、脊椎骨折や婦人科疾患などさまざまあり、中には解離性大動脈瘤や転移性骨腫瘍など生命にかかわる重大な病気の可能性もあります。症状が強い場合や3週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診して下さい。
やまぐち整形外科リハビリクリニック 院長山口 一敏
【経歴・資格・所属学会】
1986年 修道高校卒業
1996年 同志社大学卒業
2003年
関西医科大学卒業、広島大学整形外科学教室入局
広島大学病院(研修医)(~9月)
マツダ病院(研修医)(~2005年3月)
2005年 松山市民病院
2007年 広島共立病院
2009年 安芸太田病院
2014年 山口整形外科病院
2021年 やまぐち整形外科リハビリクリニック開業
【資格】
日本整形外科学会認定整形外科専門医
【所属学会】
日本整形外科学会