枕が変わると眠れない方がいるように、枕と睡眠は密接な関係があります。枕、そして睡眠は私たちの健康に大きく影響します。
その割に、枕をマジメに考えたことがある方は、多くないのではないでしょうか?なんとなく今も使っているその枕。あなたの寝ちがいや頚椎椎間板ヘルニアによる症状の原因になっているかも。
ここでは枕をマジメに、科学的・医学的に考えていきたいと思います。
いろいろな枕を試してみる時、皆さんはどのような点に注目して選ぶでしょうか?枕の高さ、固さ、形、首や頭にフィットするか、通気性、反発性・・など枕にはさまざまな要素がありますね。自分にぴったり合った枕というのは、そう簡単に見つかるものではないようです。
体に合わない枕が原因となる疾患の一つ、それが寝ちがいです。寝ちがいはご存知の通り、目が覚めた時に首から肩のあたりが痛くなり、首を動かすとイタタッとなるあれです。
寝ちがいの原因は不明な点も多いのですが、睡眠中からだにとって無理な姿勢を取り続けると、炎症が生じたり血行が悪くなったりして症状を引き起こすと考えられます。
枕が高すぎれば首は前に曲げられる姿勢になり、低すぎれば首はむしろ反らされる姿勢になります。枕がやわらかすぎて沈み込んでしまうと、寝返りがしづらくなり長時間同じ姿勢になる可能性があります。その姿勢が本人にとって無理な姿勢である場合、神経や筋肉、関節や靱帯に負担がかかり痛みの原因となります。
寝ちがいをよく起こす方、お悩みの方は枕を見直してみた方がいいかもしれません。
首を支えている骨のことを、頚椎といいます。頚椎は全部で7つあって、第1頚椎から第7頚椎までが縦につらなってできています。骨と骨の継ぎ目で動くことができるため、私たちの首は前に曲げたり後ろに反らしたり、横にひねったりすることができるのです。
頚椎の継ぎ目は、大まかにいうと前後の2箇所があります。前方にあるのが椎間板という部分で、水分を含んだ軟骨のような組織が衝撃を吸収し、同時に継ぎ目を安定させる役割を担っています。後方にあるのが椎間関節という部分で、小さな骨同士の継ぎ目が左右に2箇所あります。
骨の継ぎ目は首を動かすたびに大きな力がかかるので、ダメージが蓄積しやすい場所となります。首を前に倒せば前方にある椎間板に負担がかかり、後ろに反らせば後方にある椎間関節に負担がかかります。椎間板に亀裂が入り外に飛び出してしまうのが頚椎椎間板ヘルニア、椎間板や椎間関節などに負担がかかり骨の変形が起こるのが頚椎症です。
頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症の方にとって、枕選びは重要です。その方にとって高すぎる枕を選択すれば首は前に倒される姿勢となるため前方にある椎間板に負担をかけ、逆に低すぎる枕は後方にある椎間関節に負担をかけることになるからです。健常な方と比較して、その許容範囲は狭いものとなるはずです。
「枕外来」を設置しているクリニックでは、首のこりや痛みを訴えた患者さん410人の方の枕調整を行ったところ、頚椎椎間板ヘルニアの患者さんでは特に改善率が高かったと報告しています1)。
首のこりや痛みだけでなく、首からくる神経の症状(手のしびれや動かしづらさなど)にも、枕が影響する可能性があります。頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、頚椎症性神経根症、頚椎後縦靭帯骨化症などの病名を告げられている方は、より枕に気を配ったほうが良いでしょう。
からだに合う枕とは、頭を乗せた時に頚椎の骨の並びがその人にとって自然な形となり、周りの筋肉に負担がかからない枕です。そして、寝返りをスムーズにしやすい枕です。
本来の骨の並びに近い姿勢であれば周りの筋肉は通常の長さとなるため、最も自然な形になるはずです。それでもずっと同じ姿勢でいると筋肉の血流が悪くなってしまうため、一定時間で姿勢を変える寝返りをしやすいことが重要です。
頚椎の骨の並びには個人差があります。横から見た時に少し後ろに反った並びが良いとされていますが、近年ではストレートネックと呼ばれるように頚椎が縦にまっすぐ並んでいる方や、逆に前に曲がったように骨が並んでいる方もいます。からだに合う枕は人それぞれであるため、自分にあった枕の調節方法を知っておく必要があります。
自分にあった枕には、3つの条件があります。それは、からだに合った枕の高さ、沈み込みすぎない適度な硬さ、体格の変化に合わせて微調整を行うことです2)。
枕の高さは頚椎や脊椎の骨の並びに合わせるため、重要な要素です。高すぎても低すぎても使用する人にとっては不自然な姿勢になってしまいます。そして寝ている時は横向きになることもあるため、仰向けでも横向きでもちょうどいい高さである必要があります。
仰向けで寝た時の目安は、横からみて首の角度が地面と約15度になっていることです。呼吸が楽にできて、頭がぴったり枕に乗っていること、首の後ろに変な力がかかっていないか確認しながら高さの調整を行います。
横向きで寝た時には、額と鼻、顎、胸の中心が一直線に地面と平行になる枕の高さが理想的です。実際に寝返りをしながらスムーズに行うことができるか、肩や腕にしびれがでないかなど確認します。
ちょうどいい角度を実現するためには、5mm程度の単位で高さを調節する必要があります。実践する場合には、土台にはマットなどやや硬めのものを使用し、その上にタオルなどを重ねて枚数で調節すると良いでしょう。
枕がやわらかく沈み込んでしまうと、せっかく高さの調節をしても寝ている間にそれがずれてしまいます。ちょうどいい高さを維持するための硬さが必要です。もちろん寝心地も重要ですので、両者を両立できるような素材が良いということになります。
からだの骨の形や骨の並びは年齢とともに、徐々に変化していきます。若い頃に使っていてお気に入りだった枕も、もしかしたら今のからだには合わないものになっているかもしれません。今の体格に合わせた微調整が必要です。
デスクワークやPC作業を行う時間、スマホに触れる時間が長くなりがちな近年では、首周りのこりや痛みは私たちの共通の悩みになりつつあります。適度な運動習慣を持つことや、リラックスする時間を設けるなど、さまざまな対策が考えられますが、枕の見直しも一つの解決策かもしれません。
がまんしているばかりでなく、枕のことを少しマジメに考えてみませんか?
患者さんやご家族が病状や治療について十分に理解し、医療職と協力しながら本人にとって最善の治療を選択していくこの時代。
医師も積極的に正しい情報発信をするべきと考え、医療ライターとして活動しています。
「よく分からないけど、お医者さんの言うことだから聞いておけば安心。」
「医者の言うことは、難しくて分かんね。」
そんな思いを抱えながら治療を受けることも多いでしょう。
しかし医療に絶対はありません。
どのような治療結果になったとしても、そのプロセスや治療内容を理解することで次に進むことができます。
医療の進歩はめざましく、施設によって方針が異なる場合もあります。
記事を参考にして、主治医とよく相談し後悔のない治療を受けてほしいと願っています。
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