みなさんはお子さんのおちんちんについて困ることはあったでしょうか?
赤みがある、かゆい、痛いといった症状で病院を受診し、亀頭包皮炎と診断され薬をもらった経験がある方もいるかもしれません。
お子さんの包茎については、インターネットなどではさまざまな情報が飛び交い、早めに対処したほうが良い、対処のためには「むきぐせ」をつけたほうが良いとの意見も。一方で、強引に包皮をむいてしまったために包皮が戻らなくなり、救急外来を受診するようなケースもあるため注意が必要です。
記事では以下のことを紹介します。
成人男性の約半数は包茎です。お母さんにとって、男の子のおちんちんについてどう対処して良いかわからないことも多いと思います。包茎について学び、正しく対処しましょう。
包茎とは、亀頭が包皮におおわれて露出していない状態のことをいいます。包茎がどのような状態のものをあらわすか、有名な例はミケランジェロが製作したダビデ像です。インターネットで画像を検索していただけばわかりますが、ダビデ像の亀頭の部分は包皮におおわれ隠れています。
日本では平常時は亀頭が包皮におおわれ、勃起時にはじめて亀頭が見えるようになるものを仮性包茎、勃起をしても亀頭が見えず、包皮の口が狭くなったままのものを真性包茎と呼んでいます。しかし、仮性包茎、真性包茎という呼び方をするのは日本だけです。海外では包茎というと真性包茎のことをさし、日本で言うところの仮性包茎という言葉はありません。ですので、包茎は対処すべき包茎は真性包茎のみともいえます。
陰茎の先端の皮膚が折り返して亀頭をおおっているのが包皮で、包皮の外側を外板、内側を内板と呼びます。外板は空気に触れている部分で外から見えますが、内板は亀頭の表面とくっついているため見えません。そして、外板と内板の折り返しの部分は包皮の先端にある包皮口となり、ここから尿が出ます。
包皮は亀頭を保護するもので、ほとんどの哺乳類は通常、交尾などの性行為で亀頭が勃起するときだけ包皮がめくれます。ヒトの場合も、亀頭が未発達な子供では包皮が亀頭を保護する役割を担っていと考えられるでしょう。一方、動物でも包皮の開口部によって亀頭がしめつけられる嵌頓包茎も報告されており、包皮のトラブルはヒトも動物も同じようです。
生まれたばかりの赤ちゃんはみんな真性包茎ですが、異常ではありません。成長にともない勃起をしたり、亀頭と内板のあいだに垢(恥垢)がたまってすこしずつ内板と亀頭がはがれていきます。
イギリスの論文では、生後6ヶ月で15%、1歳で50%、2歳で80%、3歳で90%が包皮をめくることができたと報告されています[1]。また、デンマークでは、生後6ヶ月で20%、3歳で90%、11〜12歳で92〜94%、17歳で内板と亀頭の間がはがれ、包皮をめくることができると報告されています[2]。日本人を対象とした報告では、新生児の0.4%、3歳児の38.4%が包皮をめくることができるそうです[3]。
ユダヤ教では昔から割礼と呼ばれる包茎の手術が行われており、男の子が生まれると8日目に割礼をおこなうことが伝統となっています[4]。また、イスラム教でも伝統的に割礼が行われるそうで[5]。ただ、不衛生な環境下では感染や出血などの合併症が問題となっています。
お子さんに起こりやすい例を中心に、包皮にかかわるトラブルについて説明します。
お子さんのおちんちんのトラブルに多いものが亀頭包皮炎です。亀頭包皮炎は、包茎の男児に見られる亀頭と包皮の炎症です。包茎手術を受けていない男児の約1.5%に発生し、2~5歳の間におこることが多いようです[6][7][8]。菌が付いたり、包皮に傷がつくこと、接触による刺激やアレルギーなどが主な原因ですが、明らかな原因がない場合もあります。亀頭包皮炎では、包皮の先端や包皮全体に赤みや腫れがあり、痛み、うみ、おしっこの際の痛みがみられます[9]。
軽症の場合は、抗菌薬の軟膏で治療します。重症の場合は、抗菌薬に加えてステロイドを含む軟膏を使用することがあります。まれに入院が必要な場合もありますが、ほとんどの場合は外来で経過を見ることが可能です。おちんちんの痛みが強く、怖がってうまく排尿できないお子さんには痛み止めを処方する必要もあるでしょう。
いっぽう、注意すべき包皮炎として閉塞性乾燥性亀頭炎があります。これは炎症によって包皮の先が白く、硬くなり、尿が出づらくなった状態です。多くは手術適応となることが多いため、専門医の判断が必要です。夜間の外来を受診された場合は、翌日以降に小児科医や泌尿器科医に相談し、経過を観察してもらいましょう。
包皮のトラブルで最も緊急性が高いのが嵌頓包茎です。包皮の出口が狭いにもかかわらず、強引に包皮をむいてしまうため、亀頭や包皮の血の巡りが悪くなる状態です。最悪の場合、亀頭が壊死するのですみやかに医療機関を受診してください。自分で知識を仕入れて包皮をむいてしまうことのほか、友達同士で包皮をむいて遊んでみたり、お父さんや兄弟が強引に包皮をむいてしまったりして嵌頓包茎を起こしてしまうこともあります。お子さんの様子がいつもと違う場合には、体を注意深く観察してみましょう。
おちんちんのトラブルの多くは入浴時や夜のおむつがえ・着替えの際に見つかります。
昼間から症状があっても、恥ずかしさなどから言い出せずに隠していることも。同様に、おちんちんが痛いということが言い出せずに「お腹が痛い」という表現で痛みを訴えることもあるので、男の子がどこかを痛がる場合には包皮のトラブルについても念頭に置いてください。また、嵌頓包茎と同様に緊急処置が必要な病気として精巣捻転があります。精巣がねじれてしまう病気で、陰嚢の激しい痛みが特徴です。お子さんがどこを痛がっているのか、丁寧に聞いてあげてください。
包皮について、よく聞かれる質問について回答します。
基本的には必要ありません。
インターネットなどで包茎について検索をすると、毎日包皮をむくような動きをおこない亀頭を露出させる「むきむき体操」をおすすめする方はいらっしゃいます。理論上は正しいのですがご自宅で正しい処置をおこなうことは難しく、強引に包皮をむくことで炎症を起こし、かえって包皮が厚くなったり出口が狭くなります。お近くに信頼できる先生がいるようでしたらお願いするのもよいと思いますが、トラブルに対してバックアップがない以上は避けるべきでしょう。基本的には自然に包皮が向けてくるのを待ち、思春期以降に真性包茎が残るようなら保険での手術を考えましょう。
一般的には、亀頭包皮炎を繰り返すことはまれだといわれています[10]。包皮が白く変色し炎症を起こすBXOはおしっこの出が悪くなるため手術が必要ですが、それ以外では不要でしょう。ただし、亀頭包皮炎を繰り返すような場合は手術を考える必要があるため、主治医の先生と相談してください。
排尿をする際に包皮が広がり、水風船のようになっていることがあります。これはバルーニングと呼ばれ、BXOとはことなる状態です。包皮の出口部分と亀頭にある尿の出口が一直線にならないためにおこり、包皮の部分に尿がたまる状態です。尿を出すことには問題がないと報告されていますが、気になる場合は医師の診察を受けてください[11]。
夜に気づかれやすい包皮のトラブル、特にお母さんは対応に困ってしまうことも多いのではないでしょうか。包皮で亀頭が見えないこと自体は問題ではありません。今回の記事を参考に、気になることがあれば信頼できる医師に相談しましょう。
医師、泌尿器科専門医、性機能専門医、性感染症専門医、抗加齢専門医、医学博士。都内での初期研修・後期研修ののち、大学・基幹病院での臨床・研究に従事。国内外の論文(エビデンス)をもとにした一般向けのわかりやすい医療記事の執筆が得意。趣味が高じてファイナンシャルプランナー2級・福祉住環境コーディネーター3級を取得。
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