2023/02/08

性感染症には、梅毒や性器ヘルペスウイルス、淋菌などさまざまなものがあります。なかでもとくに患者数が多いのが性器クラミジアです。無症状のことも多い性器クラミジアですが、治療せず放っておくとリスクもあります。

しかし、医療機関を受診するのが恥ずかしかったり親にバレたくない、簡単に治療したいと思ったりしている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、性器クラミジアが市販薬でも治療できるのか、症状や予防法にはどのようなものがあるのかについて解説します。

性器クラミジアとはそもそもどんな感染症?

性器クラミジアは、男性よりも女性で見られやすい感染症です。比較的若い方で患者数が多く、気づかないうちに感染していたりパートナーにうつしていたりすることがあります。

日本でもっとも多い感染症

もっとも患者数の多い性感染症として知られているのが、性器クラミジアです。厚生労働省の統計によると、令和2年に報告された性器クラミジアの患者数は28,381人でした。同じく令和2年の患者数が性器ヘルペスでは9,000人、梅毒では5,867人だったことを考えると、患者数の多さがわかるかと思います。

参考

性器クラミジアで見られる症状

性器クラミジアでは、感染しても何も症状が出ないことが少なくありません。女性の約75%、男性の約50%は無症状だといわれています。そのため、自分が感染していることに気がつかず、感染症を周りに広めてしまうことが多くあるものです。一方で、感染により何かしらの症状が出る方もいます。

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〈女性で見られる症状〉
  • おりものの増加
  • 頻尿
  • 排尿痛
  • 性交時の痛み
  • 骨盤痛
〈男性で見られる症状〉
  • 排尿痛
  • 尿道の不快感
  • かゆみ
  • 尿道炎

症状に早く気が付き早期治療ができれば、性器クラミジアはしっかり治療できます。しかし、治療を受けることなく放置した状態が続くと、骨盤炎になったり咽頭にクラミジアが感染したりすることがあるので注意が必要です。

性器クラミジアの感染経路

性器クラミジアは、おもに性交渉によって感染します。クラミジア・トラコマチスという細菌が皮膚にある小さな傷口から侵入することで感染が成立するのです。性器と性器だけでなく、口との接触によっても感染します。のどに感染した場合は、性器よりも治療に時間がかかることが一般的です。

性器クラミジアの治療方法

性器クラミジアであるかどうかは、医療機関を受診することですぐにわかります。受診した当日にその場ですぐに結果がわかることが多いため、感染がわかった場合はすぐに治療を受けましょう。

クラミジアは細菌の一種であることから、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗生物質が有効です。ただし、抗生物質を用法用量通りにきちんと服用しても感知しないケースもあります。そのため、完治したかどうかを調べるために数週間後に再び受診して検査してもらうことが望ましいでしょう。

無事に完治していたら治療は終了、まだクラミジアの菌が残っているようでしたら再度治療が必要です。「薬を飲むのをよく忘れてしまう」という方には、1回の服用で効果が10日間持続する、アジスロマイシン(ジスロマック)というお薬が便利です。抗生物質は指示通りに服用しないと効果が薄れてしまうため、飲み忘れやすい方は医師に相談してみるとよいでしょう。

性器クラミジアにかかったらするべきこと

性器クラミジアに感染していることがわかったら、まずご自身の治療を開始することが大切です。クラミジアはとても感染力が強いため、治療開始と同時にパートナーにも自分が感染していたことを伝えてください。パートナーからうつった可能性もありますし、自分がパートナーにうつしている可能性もあります。

「症状が何もないから大丈夫だよ」と言われるかもしれませんが、そもそも性器クラミジアは感染していても無症状のことが多いものです。そのこともパートナーに伝えたうえで、医療機関を受診して検査してもらうように促しましょう。

ご自身が完治しても、パートナーが感染したままだと再び感染してしまうことがあります。性器クラミジアは自分だけが治ればよいものではありません。パートナーも一緒に治療することで、はじめて本当に完治したといえるでしょう。

性器クラミジアの市販薬はあるの?

市販薬には残念ながら性器クラミジアに効果のある治療薬はありません。デリケートゾーン用のかゆみ止めは数多くありますが、どれもクラミジアを除菌することはできないので注意してください。

そもそも、市販薬では抗生物質の飲み薬は取り扱いがなく、医師の処方が必要です。性器クラミジアが疑われる場合は、早めに婦人科や泌尿器科などを受診して治療を受けてください。

性器クラミジアを予防するには?

性器クラミジアを予防するためには、うつされないようにすることが大切です。そのためには、コンドームの着用が役立ちます。コンドームは性器同士が直接接触するのを防げるため、性器クラミジアだけでなくさまざまな性感染症の予防に効果的です。

もし複数のパートナーがいる場合は、完全に感染を予防することが難しいケースもあるかと思いますので、定期的に検査を受けて感染していないか確認するようにしてください。

性器クラミジアに感染したら早めに医療機関を受診しよう

性器クラミジアに感染しても、症状がない方が多くいます。そのため、受診のタイミングが遅れてしまう方がとても多いものです。もし何かしら気になる症状があれば、早めに医療機関を受診して検査をしてもらってください。症状が何もない場合でも、定期的な受診をすることで早期発見ができます。

放置しておくと症状が悪化する可能性がある

性器クラミジアを治療せずに放置しておくと、男性の場合は精巣上体炎、女性は骨盤内炎症性疾患へと発展する可能性があります。精巣上体炎とは精巣上体に炎症が起きるもので、痛みや発熱などの症状が代表的です。陰嚢が腫れて痛みがある場合はすぐに泌尿器科を受診しましょう。

骨盤内炎症性疾患とは、子宮や卵巣、骨盤腹膜などに炎症が起こる疾患のことです。下腹部痛や発熱の原因となり、安静にしていても改善しないためすぐに婦人科を受診する必要があります。このように、性器クラミジアは自覚症状がないまま精巣上体炎や骨盤内炎症性疾患へと発展する恐れがあるものです。感染が疑われる場合は放置せず、早めに治療を受けましょう。

不妊になることがある

性器クラミジアは、不妊の原因になることでも知られています。精巣上体炎が進行すると精巣にも影響が出て精子の活動性が低下してしまうためです。炎症によって精液の通り道が塞がり、無精子症になることもあります。

女性の場合は、感染が進んで子宮頸管や子宮内膜にまで炎症が広がると、不妊になることがあるので注意しましょう。性器クラミジアは、気づかないうちに感染して気づかないうちに症状が進行してしまう怖い感染症なのです。不妊をはじめ症状の悪化を防ぐためにも、定期的に検査を受けることがとても大切です。

性器クラミジアに関するQ&A

最後に、性器クラミジアに関してよく聞かれる質問にお答えします。

通販で性器クラミジアの薬を購入してもいいですか?

通販(個人輸入)での購入は控えてください。ネットを使えば個人輸入で誰でも性器クラミジアの治療薬を購入できるようになっています。しかし、個人輸入した薬の40%は偽物だというデータがあるのをご存知でしょうか。効果がないだけでなく、健康被害が出る可能性もあるため、必ず医療機関を受診して治療を受けるようにしてください。

参考

市販薬に抗生物質は売っていますか?

市販薬で抗生物質の飲み薬の扱いはありません。性器クラミジアは抗生物質の飲み薬を使って治療を行っていくものであるため、市販薬での治療は不可能です。デリケートゾーン用の塗り薬を使っても効果はありませんので医療機関を受診しましょう。

パートナーの分の薬も病院で貰えますか?

医療機関で処方してもらえるのは、ご自身が使う分の薬のみです。パートナーの分まで一緒に薬を出してもらうことはできません。そもそもパートナーが性器クラミジアに感染しているかは検査しないとわからないので、受診してもらうように促してください。

まとめ

性器クラミジアとは、クラミジア・トラコマチスという細菌によって起こる性感染症です。抗生物質を服用して治療する方法が一般的ですが、市販には抗生物質の取り扱いがありません。市販薬では性器クラミジアの治療ができないため、必ず医療機関を受診して治療を受けるようにしてください。症状に乏しいことが多いですが、放置しておくと不妊の原因にもなります。自分では感染していることに気が付きにくいので、定期的に検査を受けるのがおすすめです。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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