2023/02/13

「針で刺されたような痛み」「痛くて夜寝られない」といわれるほど強い痛みを伴う帯状疱疹。

できるだけ早く痛みから解放されたいと思う方がほとんどでしょう。しかし、なかなか病院に行く時間が取れない方も多いかと思います。

そんなときにあると便利なのが市販薬です。今回は、帯状疱疹は市販薬で治せるのか、どうすれば帯状疱疹を予防できるのかについて解説します。

帯状疱疹とは?

帯状疱疹とは、名前のとおり帯状に湿疹が広がるものです。体の右側、もしくは左側のどちらか一方に症状が出ることが一般的です。

帯状疱疹になる原因

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症します。水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうを引き起こすウイルスと同じです。日本人の多くが小さい頃に水ぼうそうにかかっているため、ほとんどの方が水痘・帯状疱疹ウイルスに対して抗体をもっています。

しかし、水ぼうそうの症状が落ち着いても水痘・帯状疱疹ウイルスは体から完全に消えることはありません。症状として出ることはなくても、神経細胞にウイルスが残っているのです。

なんらかの原因によって免疫機能が低下すると、神経細胞に潜んでいるウイルスの働きが活発になり、帯状疱疹として現れます。つまり、水痘・帯状疱疹ウイルスの保有者であれば誰でも帯状疱疹になる可能性があるのです。ちなみに帯状疱疹は、若い方よりも年齢が高い方でよく発症します。発症者の約70%が50歳以上です。

帯状疱疹の治療方法

帯状疱疹の治療には、ウイルスの働きを抑える抗ウイルス薬を使用します。具体的にはアシクロビルやバラシクロビル、ファムシクロビルなどです。帯状疱疹ができたら、できるだけ早めにこれらの抗ウイルス薬を服用します。

通常は飲み薬の服用で済みますが、広範囲に湿疹が出現したり水ぼうそうのような発疹が見られたりするなど重症の場合は点滴が必要です。痛みを抑えるための鎮痛薬や二次感染を防ぐための塗り薬が用いられることもあります。

帯状疱疹の症状

通常、発疹ができる前からピリピリやチクチクといった神経痛のような痛みが始まります。痛みが出始めてから数日~10日ほどで帯状に発疹ができることが一般的です。人によっては、発疹に加えてリンパ節が腫れたり頭痛が起きたりなどの症状も見られます。

最初は虫刺されのような発疹ができますが、次第に水ぶくれができ1週間ほどで破れることが多いでしょう。3週間ほどで発疹は自然によくなっていきます。ただし、発疹がよくなっても痛みが残ってしまうことが少なくありません。これは帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼ばれており、神経に炎症が起きることで痛みが継続して残ってしまうものです。

帯状疱疹後神経痛は半年や数年単位で持続することもあります。帯状疱疹になる年齢が高いほど帯状疱疹後神経痛にもなりやすいため、まずは帯状疱疹にならないよう予防することが大切です。

帯状疱疹に効く市販薬はある?

帯状疱疹は強い痛みを伴うことが多いため、一刻も早く症状を抑えたいと思う方が多いでしょう。市販薬があればいつでも薬局やドラッグストアで購入できるため、忙しい方でもすぐに治療を始められます。しかし、残念ながら市販では帯状疱疹に効果のある薬は販売されていません。

帯状疱疹そのものを治す薬は売られていない

帯状疱疹の治療は、アシクロビルやバラシクロビル、ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬の内服をすることが基本です。しかし、これらの薬は市販されておらず、医師に処方してもらわなければ手に入りません。そのため、帯状疱疹が疑われる場合には皮膚科を受診する必要があります。

早く治療を始めれば始めるほどウイルスの増殖を抑えられるため、早期発見・早期治療が大切です。また、早めに治療することで帯状疱疹の合併症である帯状疱疹後神経痛の予防にもつながります。

帯状疱疹の痛みを止める市販薬ならある

市販で帯状疱疹の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスに効く飲み薬の扱いはありません。しかし、帯状疱疹による痛みを一時的に止める薬はいくつか扱いがあります。ロキソニンSやタイレノールなどの一般的な鎮痛薬は、帯状疱疹の痛みにも有効です。医療機関を受診するまでのつなぎとして、一時的に鎮痛薬を利用するとよいでしょう。

ただし鎮痛薬は、痛みを止めるだけでありウイルスの増殖そのものを止める効果はありません。痛みが止まったからといって受診するのを止めないようにしてください。

帯状疱疹を予防する方法

帯状疱疹は、免疫機能が低下したときに発症しやすくなります。多くの方が幼少期に水ぼうそうにかかっていることから、ほとんどの方は水痘・帯状疱疹ウイルスをもっているといっても過言ではありません。いつ誰が発症してもおかしくないことから、予防をしておくことが大切です。

ワクチンを接種する

予防にもっとも効果的なのはワクチンです。日本人の約90%は水痘・帯状疱疹ウイルスを保持しており、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。何も対策しなければ高い確率で帯状疱疹を発症してしまいますが、ワクチンを接種することで予防が可能です。

50歳以上になるとワクチンの接種ができるようになるので、できれば受けておくようにしましょう。ちなみに、ワクチンを打ったからといって帯状疱疹の発症を100%抑えられるわけではありません。

発症率を低下させる効果と、発症したとしても重症化しないようにする効果があります。痛みが後遺症として残るリスクも低減できますので、気になる方はお近くの医療機関に相談してみてください。

ストレスや疲れを溜め込まない

ストレスや疲れを溜め込むと、免疫機能が低下してしまいます。帯状疱疹は免疫の働きが弱ったときに発症するので、ストレスや疲れは溜め込まないように気をつけましょう。次のような様子があるようでしたら、ストレスや疲れが溜まっている可能性があります。

  • なかなか寝付けない
  • 寝てもすぐに目が覚める
  • 起きたときに疲れが残っている
  • ちょっとしたことでイライラする

このようなサインがあったら、早めに対処しましょう。気分転換をしたり休息をしっかり取ったりすることが大切です。

帯状疱疹を放置しておくリスク

帯状疱疹は症状が軽ければ自然治癒することもあります。しかし、何も治療せず放置しておくのはおすすめできません。見た目上では湿疹が落ち着いても、強い痛みが残る帯状疱疹後神経痛になる恐れがあるためです。

帯状疱疹後神経痛は数カ月程度で治まることもあれば、数年続くこともあります。帯状疱疹を発症してから何年もの間、強い痛みに悩まされることになるのです。重症化すると、入院治療が必要になるケースもあります。

また、ライムゼイ・ハント症候群といって顔面麻痺や味覚障害が起こる合併症を起こすリスクもゼロではありません。痛みを伴う湿疹ができた場合は、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。

帯状疱疹は早めに医療機関を受診することが大切

帯状疱疹を市販薬で治療することはできません。痛み止めを服用することで一時的に痛みを止めることはできますが、ウイルスそのものをやっつけるものではないので注意してください。治療が遅れると重症化したり合併症を起こしたりするリスクが上がります。

自己判断で塗り薬を購入したり痛み止めでやり過ごそうとしたりせず、早めに皮膚科を受診しましょう。早期治療を行うことで長年にわたって痛みに苦しむリスクを最小限にし、効率よく帯状疱疹の治療ができます。

帯状疱疹に関するQ&A

最後に、帯状疱疹に関する質問にお答えします。

市販のアラセナは帯状疱疹に使えますか?

アラセナは帯状疱疹には使用できません。公式サイトにも次のように記載がされています。

"アラセナSは「口唇ヘルペスの再発」の方のための医薬品ですので、効能以外は使用しないでください。"
引用

帯状疱疹にオロナインは効きますか?

オロナインを使っても帯状疱疹の治療はできません。帯状疱疹が疑われる場合は、必ず皮膚科を受診してください。

帯状疱疹に効く塗り薬は市販でありますか?

帯状疱疹に効く塗り薬は市販にはありません。飲み薬も扱いはないため、皮膚科を受診して治療を受けてください。

帯状疱疹は人にうつりますか?

基本的に帯状疱疹が人にうつることはありません。ただし、水ぼうそうにかかったことがない方では、水ぼうそうを発症させることがあります。

まとめ

帯状疱疹はとても痛くつらいものです。しかし、市販薬では帯状疱疹に効く薬の扱いがありません。忙しいとなかなか受診できないかと思いますが、帯状疱疹を治療するためには皮膚科を受診する必要があります。どうしても受診できない場合は、一時的に痛み止めを使うのもよいでしょう。重症化や合併症のリスクを抑えるためにも早めの受診をおすすめします。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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