ウットは精神の興奮を抑えたり、鎮静させたりするときに使う市販薬です。
どなたでも購入できる薬ですが、使用するにあたっていくつか注意点があります。
しかし、注意点を知らずに漫然とウットを使用している方が少なくありません。ウットは正しく使用しないと依存性が出たり、思わぬ副作用が出て心身に影響が出たりする恐れがあります。
今回は、ウットを正しく使用するための注意点について見ていきましょう。ウットがパニック障害に使えるのか、デパスの代わりになるのかについても解説しているので参考にご覧ください。
ウットのホームページを見てみると、「ウットは、精神の興奮や神経衰弱などの鎮静を目的とした薬です。」と記載があります。
この記載通り、ウットは神経を落ち着かせるための薬です。この記載だけを見るととくに問題がないように見えますが、成分を詳しく見ていくと注意が必要な薬であることが分かります。
ウット3錠(一日量)あたりに含まれている成分は次の通りです。
ブロモバレリル尿素 | 250mg |
---|---|
アリルイソプロピルアセチル尿素 | 150mg |
ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 25mg |
ブロモバレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素には、鎮静作用があります。イライラしているときや心が落ち着かないときに使うとリラックスさせてくれる便利な成分です。
しかし、この2つには依存性があります。用法用量を守って服用しても、連用することで依存する可能性は十分にあるため、注意が必要です。
海外では、ブロモバレリル尿素の使用を禁止している国もあります。日本でも「安易に市販薬に配合するのはどうなのか」と言われることが多い成分です。便利そうに見える薬である反面、危険性も兼ね備えています。
ウットの効能効果は、次の通りです。
神経を落ち着かせる薬としてよく知られていますが、実は頭痛にも効果があります。ただし、依存性があるため通常の頭痛薬のように使用するのはあまりおすすめできません。
ウットの添付文書には、次のような副作用が記載されています。
特別に気をつけるべき副作用はありません。ただし、排尿困難は人によっては注意が必要な副作用です。ウットには、抗コリン作用のあるジフェンヒドラミン塩酸塩が配合されています。この成分の副作用で尿が出にくくなることがあるのです。
とくに前立腺肥大症がある方では抗コリン作用によって排尿困難を起こすことがあります。ひどくなると尿閉といって尿がまったく出ない状態になる可能性もあるため、前立腺肥大症がある方は医師に相談してから服用するようにしてください。
ウットは一般的な市販薬とは違って、いくつか注意点があります。正しく使用しなかったことにより入院となったケースもあるため、正しい使い方を守ることが非常に重要です。
鎮静成分の一つであるアリルイソプロピルアセチル尿素は、一般的な解熱鎮痛剤にも配合されています。これらの解熱鎮痛剤とウットを併用すると、アリルイソプロピルアセチル尿素を過剰摂取してしまうことにつながるため、併用するときは成分をよく確認するようにしてください。
解熱鎮痛剤を併用するときは、アリルイソプロピルアセチル尿素が含まれていないものを使用しましょう。
使用するときは、必ず用法用量を守って服用します。1回1錠を1日1~3回、食後に服用してください。15歳未満の方は服用できません。まれにオーバードーズ(OD)といって、わざと多量にウットを服用する方がいます。
オーバードーズすると、多幸感を得られることがあるのです。しかし、ウットには依存性があります。多量に服用していると、ウットを服用しないと落ち着かなかったりイライラしたりして服用せずにはいられなくなるので十分に注意してください。
オーバードーズの治療のためにウットの服用を中止し、せん妄状態になった例も報告されています。
ウットに含まれているブロモバレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素、ジフェンヒドラミン塩酸塩は、どれも眠気が出やすい成分です。人によっては強い眠気が出ることがあるため、服用後に乗り物や機械の操作は行わないようにしてください。
ウットに含まれているブロモバレリル尿素には、多量に服用することで慢性中毒になるとの報告があります。依存性があり、ウットによって神経障害を起こす恐れがあるため過剰摂取は絶対に避けてください。
一時的な使用にとどめ、長期間にわたって漫然と使用しないようにします。使い方によっては、命を危険にさらすこともある薬です。実際に、ウットの服用が引き金となって救急搬送された例が報告されています。
摂食障害とうつ病の治療をしていた方が処方薬と一緒に162錠のウットを服用したことにより、意識不明となって搬送されたのです。ウットを過剰摂取すると、このように意識不明となったり、心停止や呼吸不全を起こしたりする危険性があります。
ウット以外にもイライラや興奮を抑える市販薬があります。以下に紹介する市販薬は、どれも依存性のある成分が含まれていません。ウットの服用を止めたい方、使用に不安がある方は、抑肝散やイララック、パンセダンなどの使用を検討してみてください。
神経が高ぶってイライラしやすい方に適している漢方薬です。ウットのように依存性のある成分は含まれていません。体力が中等度の方に向いています。神経症や不眠症のほか、小児の夜泣きや更年期障害、歯ぎしりなどにも効果的です。
イララックは、イライラ感や興奮を鎮静させるための市販薬です。植物由来の成分が気持ちを落ち着かせてくれます。こちらも依存性のある成分は含まれていません。
鎮静作用をもつ4種類のハーブが配合された市販薬です。パッシフローラエキス、セイヨウヤドリギエキス、カギカズラエキス、ホップ乾燥エキスが配合されています。いずれの成分も依存性はありません。
ウットは長期連用することを前提に作られている市販薬ではありません。一時的な症状を緩和するための薬です。そのため、ウットを5~6回服用しても症状の改善が見られない場合は、服用を続けずに医療機関を受診するようにしましょう。
最後に、ウットに関してよく聞かれる質問にお答えします。
ブロモバレリル尿素やアリルイソプロピルアセチル尿素が配合されているため、依存性があります。用法用量を守らずに服用すると、ウットを止められなくなることもあるため、必ず正しい使い方を守るようにしてください。
ブロモバレリル尿素はもともと抗不安薬として使われていた成分です。そのため、パニック障害にも効果があると考えられます。しかし、パニック障害は医療機関での適切な治療が必要な病気です。ウットの服用は最小限にとどめ、早めに受診するようにしてください。
ウットは販売中止にはなっていません。パッケージが新しくなる際、一時的に欠品した店舗があるため、販売中止になったのではと言われていた時期があります。
デパスの代わりにウットを服用することはできません。デパスは医療機関で処方してもらう必要があるため、服用の必要がある方は受診するようにしてください。
ウットは、イライラする気持ちを落ち着かせたり興奮を抑えたりするための市販薬です。ブロモバレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素、ジフェンヒドラミン塩酸塩の3種類の成分が配合されています。
ブロモバレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素には依存性があるため、服用するときは必ず用法用量を守ってください。5~6回服用しても症状が改善しない場合は、服用を続けずに早めに医療機関を受診しましょう。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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