「痔になったけど恥ずかしくて相談できない」と思っていませんか?
場所が場所なだけに相談しにくいかもしれませんが、痔は誰もがかかる可能性のある病気です。便秘や妊娠、出産などを機に痔になる方もいます。
周りに相談することができず、できれば病院にかからず市販薬で治療したいと考えている方もいるのではないでしょうか。今回は、痔の治療に使える市販薬の選び方について詳しく解説します。代表的な市販薬も紹介しているので、参考にしてみてください。
「痔」と聞いて、どのようなものを想像しますか?いくつか種類があるため、人によって想像するものが違うかもしれません。ここでは、まず痔の種類について紹介します。
いぼ痔は、肛門にいぼ状の腫れが見られるものです。痔のなかでも、もっとも多いと言われています。直腸側にできたいぼ痔を内痔核、肛門部分にできたいぼ痔を外痔核と呼びます。
いぼ痔ができる原因は、便秘や激しい下痢、硬い便などさまざまです。症状が軽い場合は痛みを感じることはありませんが、血栓性外痔核や嵌頓(かんとん)痔核になると激しい痛みを伴います。
肛門付近の皮膚が裂けたものが切れ痔です。20~40代の女性で多く見られます。排便時に痛みが出たり、出血したりなどの症状が代表的です。いぼ痔と比べると、出血量はあまり多くありません。
便秘や下痢、水分不足などが切れ痔の原因です。皮膚が裂けているところから細菌が入り、痔ろうになることもあります。
痔ろうとは、直腸から肛門周囲の皮膚にかけてトンネルができた状態のことです。下痢などによって肛門の組織に細菌が感染することで発症すると言われています。痔ろうになると、肛門周囲がズキズキと痛むだけでなく、発熱したりお尻から膿が出たりすることが特徴です。
市販に痔の薬があることはご存知の方が多いでしょう。しかし、すべての痔に対して市販薬が有効なわけではありません。市販薬で対処できる痔はある程度限られています。
3種類ある痔のうち、市販薬で対処できるのはいぼ痔と切れ痔のみです。ただし、いぼ痔は症状がひどくないものに限られます。いぼ痔が脱出していないもの、排便時に脱出しても自然と元に戻るものが対象です。
いぼ痔が脱出して指で押し込まないと戻らない場合は、主に手術による治療が行われます。「いぼ痔が戻らなくて…」とドラッグストアに駆け込む方も多いのですが、戻らない場合は早めに医療機関を受診しましょう。
痔ろうができると、自然治癒することはありません。また市販薬も効かないため、基本的には手術が必要です。トンネルをなくす手術をしなければ、何度も繰り返し症状が起こります。
痔ろうをそのまま長い期間にわたって放置しておくと、痔ろうがんになるケースもあるため、早めに医療機関で治療を受けることが大切です。
痔に効く市販薬には、大きく分けて軟膏と座薬、内服薬の3種類があります。痔の種類や症状が出ている場所に応じて、適切な市販薬を選びましょう。
軟膏は肛門の外側や肛門付近にできた痔に、座薬は肛門の内側にできた痔に適しています。このほか、注入軟膏というものもあり、こちらは内側と外側どちらの痔に対しても有効です。軟膏はガーゼやティッシュなどに取って患部に直接塗って使用してください。
座薬は肛門に挿入して使用します。しっかり炎症を取り除いて痛みを緩和したい方はステロイドが配合された市販薬がおすすめです。症状が軽い方やステロイドの使用に抵抗がある方は、抗炎症作用をもつグリチルレチン酸が配合されたものを選ぶとよいでしょう。
痔の市販薬といえば軟膏や座薬が有名ですが、実は内服薬もあります。生薬エキスなどの働きによって患部の血流を良くし、いぼ痔や切れ痔の症状を改善するものです。
いぼ痔の腫れを改善し、炎症を抑える内服薬もあります。軟膏や座薬とは異なり、服用してすぐに効果が出るものではありません。
今すぐ症状を改善したい場合は、内服薬よりも軟膏や座薬のほうが向いているでしょう。内服薬はじっくりと根本的に痔を改善したい方向けです。もちろん、軟膏や座薬と内服薬を併用しても問題ありません。
痔に効く市販薬は、症状が出ている部位や程度によって選びます。
症状が肛門の内部にある場合、軟膏を塗っても成分が届かないため座薬や注入軟膏を選びましょう。注入軟膏は、座薬としても軟膏としても使える便利な剤形です。外部と内部の両方に症状があり、薬を何種類も買うのが面倒だという方は注入軟膏を選ぶと便利でしょう。
症状が肛門の外部のみにある場合は、軟膏を使います。注入軟膏でも構いません。衛生面を保つためにも、塗布するときはガーゼやティッシュを使うようにしてください。手が届かない部位にも症状がある場合は、座薬や注入軟膏を選びましょう。
痔の市販薬には、ステロイドが配合されているものと配合されていないものがあります。よく売れているのは、炎症を抑える効果が高いステロイド配合の市販薬です。
痛みや腫れが気になるときは、ステロイド配合のものを選びましょう。また、複数の治療を組み合わせて効率良く治していきたい方は、内服薬の併用も候補となります。
ここからは、ドラッグストアや薬局で購入できる痔に効く市販薬を紹介します。
ステロイド成分であるプレドニゾロン酢酸エステルが主成分の塗り薬です。炎症をおさえて出血や腫れ、かゆみなどの症状を改善します。局所麻酔成分であるリドカインも配合されているため、痛みやかゆみがつらいときにもぴったりです。
ステロイド成分であるプレドニゾロン酢酸エステルが配合された座薬タイプの市販薬です。患部が肛門の内部にある場合は座薬の使用が適しています。こちらも局所麻酔成分のリドカインが配合されているため、痛みやかゆみに効果的です。
ステロイド成分であるヒドロコルチゾン酢酸エステルが配合された注入軟膏です。症状が肛門の内部にあるときは注入して使い、外部にあるときは塗り薬として使います。2パターンの使い方ができるので、常備しておくと便利です。
いぼ痔専用の内服薬です。主成分の静脈血管叢エキスが患部のうっ血を取り除き、いぼ痔を根元から小さくしていきます。軟膏や座薬などと併用して治療を行いたい方向けです。
いぼ痔は治ったように見えても、一時的に腫れが治まっただけで根元が残っている場合があります。ヘモリンド舌下錠は、この根元にアプローチする薬です。
乙字湯は、緩やかな排便作用によって便通を整えたり、血流を改善したりする漢方薬です。いぼ痔や切れ痔の治療はもちろん、便秘の改善にも使用できます。
脱出したいぼ痔が戻らなくなった場合は、医療機関を受診しましょう。この程度まで症状が進むと、市販薬を使っても効果が期待できません。また、市販薬を使用しても痛みや腫れが引かなかったり、お尻に不快感が続いたりするようなときも早めに受診しましょう。
いぼ痔や切れ痔なら市販薬でも対応できます。ただし、いぼ痔が脱出したまま自然に戻らない場合は、医療機関で治療を受けましょう。症状が肛門の内部にある方は座薬、外部にある方は軟膏、両方にある方は注入軟膏の使用が向いています。
痛みや腫れが強い場合はステロイド配合のものが効果的です。いぼ痔が自然に戻ろらない方や痔ろうがある方は市販薬での対応が難しいため、早めに医療機関を受診してください。
薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。
「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」
こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。
市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。
そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。
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