口腔のトラブルメイカーとも呼ばれる親知らず。いつかは抜かなければならない、あるいは今すぐにでも抜いた方が良いのでは?など、親知らずの悩みを抱えている方は極めて多いです。
それは新たに社会人となった方々も例外ではありません。マウスピース矯正を展開する株式会社Zenyum Japanが行った「新社会人の歯に関する意識調査」でも、全体の3割が親知らずに不安を感じていると回答しています。ここではそんな親知らずに対して新社会人がどのような不安や悩みを持っているのか。また、親知らずに見られる症状や抜歯する方法などを詳しく解説します。
新社会人は親知らずに対して、次のような悩みを抱えているようです。
驚くべきことに、これらの回答からは多くのケースで親知らずに何らかの症状や問題が生じていることがわかります。具体的には「隣の歯を押していて痛い」や「歯茎が痛い」は、実質的な悪影響が生じていることから、できるだけ早く歯科を受診すべきといえます。
ただ、抜歯の費用が高くなりそうで不安であったり、抜歯する時間が取れなかったりするなど、それぞれ歯科の受診をためらわせる要因があるようなので、今回はそうした不安や疑問を一つひとつ解消していきたいと思います。とくに自由回答で見られた「親知らずを抜くことで、歯並びが悪くなるんじゃないか」という不安は、正しい知識を学ぶことできれいに解消できます。
はじめに、親知らずの基本事項を確認しておきましょう。親知らずは、専門的に「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」や「智歯(ちし)」とも呼ばれる永久歯で、前から8番目に生えてきます。上下左右を合わせると、最大4本存在していますが、実際に何本生えてくるかは個人によって異なります。4本すべて歯茎から出てくる人もいれば、1本も生えてこない人もいるのです。また、歯茎の中に親知らずが1本も存在していない人もいるため、この点は歯科医院でレントゲン撮影を行ってみなければ、正確な状態は把握できません。
親知らずは、その他の永久歯とは異なる生え方をすることが多いです。具体的には、以下の4種類生え方に大別できます。
親知らずの理想的な生え方は、このタイプです。真っすぐ正常に生えている親知らずは、トラブルの原因になりにくいです。それどころか噛み合わせにも参加するため、歯列全体の咀嚼能率を向上させることにも寄与するでしょう。
親知らずが斜めに倒れ込んでいたり、横を向いて生えていたりするタイプは、トラブルの原因となりやすいです。こうした親知らずは、清掃性が悪く、歯周病や虫歯のリスクが高くなっている点に注意しましょう。手前の歯を圧迫して不要な負担をかけるケースもあります。あなたの親知らずがこのタイプであれば、小まめに経過を見ていく必要があります。
親知らずが歯茎の中に埋まっていて、口腔からは何もないような状態に見えるタイプです。過去に、歯科でパノラマ撮影を行ったことがない方は、その存在にすら気付いていないかもしれません。このタイプは、ある日突然、歯茎から頭を出してくることもあれば、一生涯、埋まったままのこともあります。
ですから、親知らずが歯茎の中に埋まっていたとしても、安心はせず定期的に経過を見ていった方が良いといえます。ちなみに、親知らずが生え始めるのは、20歳前後くらいからです。その他の永久歯よりも生えてくる時期がかなり遅いので、その点はご注意ください。また、人によっては30歳や40歳で生えてくることもあります。
歯茎の中に埋まっている親知らずには、通常とは逆を向いているパターンもあります。専門的には「逆性埋伏智歯(ぎゃくせいまいふくちし)」と呼ばれるもので、口腔内に生えてくる可能性は極めて低いですが、親知らずの周りに嚢胞が形成されたり、逆の方向に移動して顎の骨を圧迫したりするリスクを伴います。少し特殊な親知らずの生え方ですが、これもパノラマ撮影を行うことで確認できます。
ここまでは、親知らずの特徴や生え方の種類に解説してきましたが、おそらく、この歯が口腔のトラブルメイカーと呼ばれる理由についてもある程度わかってきたかと思います。なぜなら親知らずはその他の永久歯とは生えてくる時期も生え方も大きく異なることが多いからです。そこでまず生えてくる時期が異なることで、どのような弊害が生じるのかを考えてみましょう。
親知らずは医学的に「第三大臼歯」と呼ばれ、基本的にはその他の永久歯と同じ扱いを受けていますが、実際は異なる点が多く、親元から離れる20歳前後に生えてくることから「親知らず」という変わった名前で呼ばれるようになりました。前から7番目の第二大臼歯は、12歳くらいの生えてくるため、親知らずが生えてくる頃には永久歯列が完成し、顎の骨の成長も止まっています。その状態で親知らずが生えてくると、多くのケースでスペース不足が生じます。スペースが足りなないと、上段で解説したような異常な生え方をしてしまうのです。
繰り返しになりますが、横向きや斜めを向いている親知らずは、清掃性が悪く、歯周病や虫歯のリスクが高くなっています。その中でも注意しなければならないのが「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」です。智歯周囲炎とは、親知らず特有の歯周疾患で、歯茎に炎症をもたらし、顎の骨を破壊します。その症状は、周りの歯周組織にも波及しやすく、歯周病治療を行っても完治させることが容易ではないことから、抜歯が第一選択となることも珍しくありません。
生え方が悪くて、手前の歯を圧迫している親知らずは、全体の歯並びや噛み合わせを乱したり、健全な永久歯にダメージを与えたりします。その他、親知らずでは、歯茎の中に埋まっているタイプでも手前の歯の歯根を吸収したり、嚢胞を形成して顎全体に深刻な悪影響を及ぼしたりすることもあります。このように親知らずは、極めて多くのリスクを背負った永久歯であることから、口腔のトラブルメイカーと呼ばれているのです。
次に、抜歯をした方が良い親知らずの特徴を解説します。以下に挙げるような症状が見られる場合は、歯科医院で抜歯を提案されることが多いです。
親知らずが虫歯になっている場合は、軽度であれば通常の虫歯治療で対応することもありますが、中等度から重度の虫歯は、抜歯が第一選択となることも珍しくありません。なぜなら生え方の悪い親知らずは、虫歯治療を行ってもすぐに再発してしまうからです。手前の歯に虫歯がうつるリスクも高いため、抜歯をした方が予後も良くなることが多いです。
智歯周囲炎は、通常の歯周病よりも重症化しやすく、治療もしにくいことから、抜歯をせざるを得なくなるケースが比較的多いです。智歯周囲炎を重症化させると、顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)や上顎洞炎(じょうがくどうえん)、蜂窩織炎(ほうかしきえん)といったより深刻な炎症性疾患を引き起こしやすいため、十分な注意が必要となります。
親知らずが手前の歯を圧迫して歯並びを悪くしたり、歯根を吸収させたりしている場合は、抜歯の検討が必要となります。今回のアンケートでも「親知らずが隣の歯を押していて痛い」という回答が40%で見られましたが、多くのケースでは早期に抜歯をした方が良いという診断が下されるでしょう。
親知らずが原因で全体の歯並び・噛み合わせが悪くなっている場合も適切な時期に抜歯した方が良いでしょう。ただし、親知らずを抜歯することによって重要な血管や神経を損傷するリスクが高い、もしくは外科手術に耐えられないような身体的な問題を抱えている場合は、とりあえず経過を見ていくことになります。
親知らずの生え方が悪くて、歯茎や舌、頬の内側の粘膜を噛みやすい場合は、抜歯を検討します。専門的には誤咬(ごこう)と呼ばれる現象で、そのまま放置するのは良くありません。
歯茎に埋まっている親知らずの周りに嚢胞(のうほう)ができた場合は、その大きさや周りの組織への影響も踏まえて、抜歯を検討します。臨床で最もよく見られるのは含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)で、親知らずと一塊で外科的に摘出することになります。
真っ直ぐ生えている場合はケースバイケースですが、埋伏歯(埋まってる歯)の場合は20代前半までに抜くのが良いとされています。理由は若い頃は骨に柔軟性があり、歯根が成長しきってなく短いことが多く、抜き易いためです。また回復力も高く傷の治りも早く、7番の歯周ポケットも浅く治癒することが多いです。
親知らずを抜くリスクとしては
などがあります。
新社会人の皆さんに見られる「歯茎の腫れや痛み」「親知らずの虫歯」「隣の歯への圧迫」などは、どれも抜歯が必要となる症状に該当するため、できるだけ早期に歯科を受診した方が良いです。そこで気になるのが親知らずの抜歯にかかる費用と時間ですね。
親知らずの抜歯は、生え方によって費用が変わりますが、痛みや腫れなどの症状が出ている場合は、原則として保険が適用されるため、患者さんの負担は1~3割にとどまります。それほど難しくない抜歯症例なら1本あたり2,000~5,000円程度、歯茎をメスで切開して、歯根を複数に分割したり、骨を削除したりする難症例の場合は、1本あたり6,000~15,000円程度の費用がかかります。
これらは3割負担での金額となります。いずれにしても毎月一定額の給料がもらえるようになった新社会人であれば、許容できる範囲の経済的負担にとどまるのではないでしょうか。
親知らずの抜歯にかかる時間も患者さんのお口の中の状態によって変わります。生え方が正常で、特別な外科処置を必要としない親知らずなら、5~10分程度で抜歯できます。大きな病院の口腔外科でなければ対応できない難症例では、30~60分程度の時間がかかります。また、難症例の場合は、抜歯後のダウンタイムもやや長くなる点に注意が必要です。
親知らずの抜歯で入院が必要となるケースは稀です。ほとんどの症例は局所麻酔で手術できますし、抜歯後すぐに会社に戻って仕事をすることも可能です。中等度から重度の症例でも入院は不要ですが、その日は会社に戻らず、家で安静に過ごしておいた方が良いでしょう。ただし、重篤な全身疾患を患っていたり、複数の親知らずを同時に抜いたりする症例では、例外的に入院が必要となることもあります。
アンケートの中に、「親知らずを抜くことで、歯並びが悪くなるんじゃないかと不安」という回答がありましたが、基本的にそのような弊害が現れることはまずありません。むしろ、親知らずを抜かずに残しておくことの方が、歯並び噛み合わせを悪くするリスクが高まります。この点は一般の方ならではの誤解といえますので、正しく理解しておく必要があります。もちろん、親知らずがなくなることで、周りの歯が移動したり、歯並び・噛み合わせが変化したりすることはありますが、それは邪魔なものがなくなって、正しい位置へと誘導された結果なので、お口の健康に深刻な悪影響を及ぼすことはないでしょう。
さて、親知らずを抜歯した方が良い症状についてはご理解いただけたかと思います。そこでもうひとつ知っておいていただきたいのが抜歯をしなくても良い親知らずについてです。上述した症状が現れておらず、真っすぐ正常に生えている親知らずは、基本的に抜歯をする必要はありません。抜歯も少なからずリスクを伴うことから、必要性が低い場合は何もせず経過を見ていった方が良いでしょう。しかも、親知らずを抜かずに残しておけば、将来、歯を失った時の移植歯やブリッジの支台歯として活用することも可能となります。その選択肢を持っていることは、患者さんにとって極めて大きなメリットとなることでしょう。
今回は、新社会人の3割が気になっている親知らずについて解説をしました。親知らずの周りの歯茎が腫れていたり、痛みが生じていたりする場合はもちろん、隣の歯を押していて歯並びが悪くなっているようなケースでも、まずは歯科を受診してどのような状態になるのかを診断してもらった方が良いです。仮に親知らずの抜歯が必要になったとしても、手術にそれほど長い時間はかかりませんし、費用も数千円程度にとどまるのが一般的ですので、新社会人の方もためらわずに歯科医師に診てもらってください。問題のある親知らずを放置したまま社会人生活を送っっていくことの方が、身体的にも精神的にもデメリットが多くなるのは確かです。
このたび広島市安佐南区緑井で歯科_ワイズデンタルクリニックを開院致しました中本幸夫と申します。
歯科医院というのは痛い、怖いなどマイナスイメージをお持ちの方が多いと思います。
そこで私たちスタッフ一同は、感染対策を含め安心で安全な治療が受けられる環境を提供し、皆様のお口の健康管理のお手伝いをさせて頂きたいと思います。
地域の皆様に末永く愛される歯医者を目指しスタッフ一同努力してまいりますので、宜しくお願い致します。
口腔のトラブルメイカーとも呼ばれる親知らず。いつかは抜かなければならない、あるいは今すぐにでも抜いた方が良いのでは?など、親知らずの悩みを抱えている方は極めて多いです。
口腔のトラブルメイカーとも呼ばれる親知らず。いつかは抜かなければならない、あるいは今すぐにでも抜いた方が良いのでは?など、親知らずの悩みを抱えている方は極めて多...続きを読む