漢方薬の補中益気湯の効果は?おすすめの市販薬や服用時の注意点を解説

2024/12/06

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、疲労回復や術後の体力回復などのために使われる漢方薬です。

市販で手軽に購入できるため、効果について気になっている方もいるのではないでしょうか。

最近では、新型コロナウイルス感染症による倦怠感の治療薬として使用されるケースもあり、耳にする機会が増えてきました。

今回は、補中益気湯がもつ具体的な効果について文献を見ながら詳しく解説します。市販で購入できる補中益気湯も紹介しているので、参考にご覧ください。

補中益気湯とは

補中益気湯は、生命のエネルギーとなる「気」を増やす働きがある漢方薬です。「気」が不足すると、体がエネルギー不足となり疲労を感じやすくなります。補中益気湯は、元気を出すための漢方薬といえるでしょう。

補中益気湯の効果

補中益気湯には、次のような症状を改善する効果があります。

  • 虚弱体質
  • 疲労倦怠
  • 病後・術後の衰弱
  • 食欲不振
  • 寝汗
  • 風邪

体力がないときだけでなく、食欲不振や寝汗などにも使える漢方薬です。体力がなく、胃腸の働きが衰えていて疲れやすい体質の方に向いています。

1-2.補中益気湯に含まれている生薬の種類

補中益気湯に含まれている生薬は、次の10種類です。

  • ニンジン
  • ビャクジュツ
  • オウギ
  • トウキ
  • タイソウ
  • サイコ
  • チンピ
  • カンゾウ
  • ショウキョウ
  • ショウマ

新型コロナウイルス感染症による後遺症の治療にも用いられている

新型コロナウイルス感染症は、人によっては熱が下がった後も倦怠感や咳などの症状が数週間から数か月、またはそれ以上続くことがあります。罹患後症状の多くは時間の経過とともに改善するといわれていますが、治療法についてはまだ十分に確立されていません。

補中益気湯は新型コロナ後遺症による全身倦怠感に効果が期待されている漢方薬の一つです。岡山大学の研究によると、新型コロナ後遺症に対してもっとも多く処方された漢方薬は補中益気湯(71.6%)であったことが分かっています。

補中益気湯を使用するメリット・デメリット

補中益気湯は、病院で入院患者にも処方されることがあるほど使いやすい漢方薬です。市販でも購入できるため、使いたいときにすぐ手に入れることができます。では、補中益気湯にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

補中益気湯のメリット

補中益気湯のメリットは、副作用が出づらく多くの方が使いやすいことです。人によって合わないこともありますが、基本的に長期的に服用しても問題ないといわれています。そのため、長期間にわたり体調管理をしたいときによいでしょう。

補中益気湯のデメリット

使いやすい漢方薬ではありますが、体質に合わない方が使用すると効果が出づらいことがあります。また、即効性が期待しづらいのもデメリットです。

どのような症状のために使用するのかにもよりますが、効果を実感できるまでに1週間から1か月ほどかかることがあります。

1か月ほど服用しても効果を実感できない場合は体質に合っていない可能性があるので、服用を中止して医師や薬剤師に相談しましょう。

補中益気湯の効果に関する文献

ここからは、補中益気湯の効果を詳しく紹介します。どのような効果があるのか、文献を参考に一緒に見ていきましょう。

インフルエンザを予防する効果

補中益気湯には、インフルエンザを予防する効果があることでも知られています。あらかじめ補中益気湯を使用することでインフルエンザウイルスによる影響を受けにくくなることが分かっています。

また、小林製薬が行った研究では、補中益気湯が体内でのウイルス増殖を抑制することも明らかになりました。同時に、感染症状も抑えられたとの結果が出ています。

免疫機能を改善する効果

補中益気湯は免疫機能にも影響を与える効果があることが期待されています。抗原として生分解性微粒子を3日間にわたり経口投与したマウスを用意し、補中益気湯を投与しました。
その結果、抗原に対するIgA抗体の力価が有意に増加したという結果が出ています。

IgA抗体とは、体内でもっとも多く産生されている抗体の一つです。抗体が増加したということは、それだけ免疫機能が活発になったといえます。

慢性疲労を改善する効果

補中益気湯は慢性疲労に対しても有効です。国寮金沢若松病院において、全身疲労感と頭痛が主訴で入院している27歳の女性の治療が行われました。

この女性は急性気管支炎に罹患した後、吐き気や食欲不振などが見られ体重が8kg減少し、全身疲労感があり歩行できない状態でした。

女性に補中益気湯を投与したところ、約2か月で症状が改善し、退院することに成功しています。また、免疫機能に関わっているNK細胞の活性も17.4%だったのが正常に戻ったことが確認されました。

市販で購入できる補中益気湯

さまざまなメーカーから補中益気湯の市販薬が販売されています。どれを選んでも効果に大きな差はありませんが、配合されているエキス量や飲みやすさなどが異なることから、自分に合うものを見つけることが大切です。

クラシエ 補中益気湯エキス錠

5歳以上から服用できる錠剤タイプの補中益気湯です。エネルギー源となる「気」を増やして胃腸の働きを高め、倦怠感などの症状を緩和します。錠剤になっているので、漢方薬の味が苦手な方でもサッと飲み込めることが特徴です。

剤形 錠剤
エキス量(1日あたり) 3,200mg
用法用量 15歳以上:1日3回、1回4錠
7歳以上15歳未満:1日3回、1回3錠
5歳以上7歳未満:1日3回、1回2錠

ツムラ 補中益気湯エキス顆粒

顆粒タイプの補中益気湯です。2歳から服用できます。小さな子どもから服用できますが、小児が服用する場合は保護者が管理を行うようにしてください。スティック包装されているため、持ち運びに便利です。

剤形 顆粒
エキス量(1日あたり) 2,500mg
用法用量 15歳以上:1日2回、1回1包
7歳以上15歳未満:1日2回、1回2/3包
4歳以上7歳未満:1日2回、1回1/2包
2歳以上4歳未満:1日2回、1回1/3包

補中益気湯エキス錠N「コタロー」

錠剤タイプの補中益気湯です。成人1日量あたり補中益気湯エキスが4,200mg含まれています。胃腸が丈夫でない方、太れないことでお悩みの方に、病後で体調がいまいち優れない方などが対象です。

剤形 錠剤
エキス量(1日あたり) 4,200mg
用法用量 15歳以上:1日3回、1回5錠
7歳以上15歳未満:1日3回、1回4錠
5歳以上7歳未満:1日3回、1回3錠

補中益気湯を服用するときの注意点

補中益気湯は体力回復や倦怠感改善に働くとても便利な漢方薬です。しかし、個々の体質もあるため、すべての方に十分な効果が発揮されるわけではありません。

また、副作用が出にくい薬ではあるものの、人によっては発疹や蕁麻疹、下痢や胃部不快感などの症状が出ることがあります。服用して何か異常を感じた場合は、すぐに使用を中止して医師や薬剤師に相談しましょう。

このような症状があるときは医療機関を受診しよう

補中益気湯を服用しているときに次のような症状が出たら、使用を中止して医療機関を受診してください。

  • 息苦しさ
  • 高熱
  • むくみ
  • 体重増加
  • 血圧上昇
  • 手足のしびれ
  • 脱力感

このような症状が出た場合は、偽アルドステロン症や低カリウム血症などの副作用が起きている可能性があります。

まとめ

補中益気湯は、虚弱体質や疲労倦怠、食欲不振などに効果を示す漢方薬です。最近では、新型コロナ後遺症の治療にも用いられています。

副作用が出づらく長期的に使いやすいことがメリットですが、人によっては効果が出ないこともあります。症状が長引くときは原因となる病気が隠れていることもあるため、早めに医療機関を受診して相談しましょう。

コラムニスト

薬剤師ライター  岡本 妃香里 

薬剤師としてドラッグストアで働いていくなかで「このままではいけない」と日に日に強く思うようになっていきました。なぜなら「市販薬を正しく選べている方があまりに少なすぎる」と感じたからです。

「本当はもっと適した薬があるのに…」
「合う薬を選べれば、症状はきっと楽になるはずなのに…」

こんなことを思わずにはいられないくらい、CMやパッケージの印象だけで薬を選ばれている方がほとんどでした。

市販薬を買いに来られる方のなかには「病院に行くのが気まずいから市販薬で済ませたい」と思われている方もいるでしょう。かつての私もそうでした。親にも誰にも知られたくないから市販薬に頼る。でもどれを買ったらいいかわからない。

そんな方たちの助けになりたいと思い、WEBで情報を発信するようになりました。この症状にはどの市販薬がいいのか、どんな症状があったら病院に行くべきなのか、記事を通して少しでも参考にしていただけたら幸いです。

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