腎臓病

腎臓病とは、血液中の塩分や老廃物を濾過する働きのある糸球体と、尿細管が冒されることで腎臓の働きが悪くなる病気です。
主に糸球体や腎臓の部位に炎症が起きる「腎炎」や、症状の悪化により腎機能が低下する「腎不全」が代表的な疾患です。
「腎炎」や「腎不全」は共に大きく2つに分類されます。症状の悪化により急激に腎機能が低下する「急性」のものと、同症状が長期的に続く「慢性」のものがあります。治療による回復見込みがある急性腎不全に対して、慢性腎不全の場合は腎機能の劇的な回復は見込めません。重度の腎機能低下が見られる患者の多くは末期腎不全へと進行し、腎臓移植や人工透析療法が必要となります。

腎臓は、背中側腰上部にある左右一対の臓器。主な機能は、心臓から送られてきた血液を濾過し、老廃物を尿として排泄することです。また、ナトリウム・カリウム・カルシウム等、人体に必要なものを取り込み、不要なものを排泄し体内環境を整える役割もあります。
その他にも、血液の詰まりを感知して酵素を生成し、血液中のタンパク質と反応させ、血管収縮を促し血圧を安定化する等、様々な役割を担っています。

腎臓病は、このような腎臓機能の低下によって引き起こされる病気です。

原因

腎炎の場合、主に糸球体や腎臓の部位にできた炎症で発症します。原因としては未だ不明な点が多く、主に免疫異常が関係しているのではないかと考えられています。

IgA腎症

糸球体腎炎でも日本人の発症が多いとされるのが「IgA腎症」です。唾液や鼻汁、消化液等で分泌されるタンパク質の1つであるIgAが、なんらかの原因により糸球体に付着して炎症を起こすことで発症します。

糖尿病性腎症

「糖尿病性腎症」は糖尿病の合併症として起こる病気です。血液中の血糖が高くなることで血管が広がり、運び出される血液量が増えることで腎臓内に圧力がかかります。圧力がかかることで腎臓細胞がダメージを受け、腎機能低下に繋がるのです。

また、腎臓病の中でも「多発性のう胞腎」「アルポート症候群」「遺伝性腎がん」の3つに関しては、発病が遺伝に起因します。

症状

腎臓病の主な症状はむくみ・血尿・タンパク尿・高血圧等です。腎機能の低下により水分や血圧の調整ができなくなることにより起こります。
急性腎不全の場合、尿の出が悪くなることや、まったく出なくなることもあります。一方、慢性腎不全では血尿やタンパク尿は微量であることが多く、早期発見が難しい病気です。そのため、殆どが気づかないうちにゆっくりと病気が進行していきます。

尿毒症

腎不全の末期状態で引き起こされる尿毒症は、個人差はあるものの下記のように全身に様々な症状が現れます。

  • 意識障
  • 頭痛
  • 視力障害
  • 味覚障害
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • むくみ
  • 貧血
  • 心不全
  • 高血圧
  • 息苦しさ
  • 肺水腫
  • 尿量減少

治療

腎臓病の一般的な治療方法として、一般療法・食事療法・薬物療法・透析療法・血漿交換療法等があります。それぞれの原因や進行の度合いに応じて、適切な治療方法を取る必要があります。

急性腎不全の治療方法

急性腎不全の治療方法では、腎不全によって破綻した体内の内部環境を維持することが重要です。脱水や大量出血等による循環血液量を補うための輸液や輸血、尿路閉塞の解除等で腎機能の回復が見込めます。原因に対する治療を放棄すると回復は期待できず、慢性腎不全になる可能性が高くなります。

また、急性腎不全において重要な治療方法のひとつが、食事療法です。腎臓病では、経過ごとに内容は変わりますが、エネルギーを十分に確保しつつ塩分とタンパク質の制限が必要です。塩分やタンパク質を制限することで、腎臓への負担を少なくします。

その他にも腎不全の原因や患者の状態に合わせ、利尿薬や昇圧薬、抗生物質、制酸薬等を使用した薬物療法もあります。

慢性腎不全の治療方法

慢性腎不全に特効薬はありません。治療では急性腎不全と同様に薬剤治療を取り入れます。しかし、慢性腎不全では腎機能の劇的な回復は見込めません。そのため、少しでも病気の進行を予防し、透析療法を遅らせるための治療を中心に行います。

また、慢性腎不全が進行により様々な合併症もリスクが高まるため、合併症予防にも注意が必要です。

腎臓機能悪化している場合、タンパク質の制限による総摂取エネルギーの低下が懸念されます。総摂取エネルギーの低い状態が続くと、栄養状態が悪くなり、腎機能がさらに低下してしまうのです。そのため、持続的にエネルギーが摂取しやすくなるよう、特殊食品を利用することや、1日1回は油が使われた料理を食べる等の食事面に関する工夫が重要となってきます。

予防

腎臓病は、遺伝性や後天性等引き起こされる原因は様々です。しかし、急性・慢性に関わらず、症状を悪化させない治療と生活習慣を心懸けなくてはなりません。

自覚症状が出にくい特徴もあるため、早期発見が難しい病気です。血の混じりや白濁した尿等、毎日の尿によるセルフチェックも予防に繋がります。また、血圧の変化にも注意が必要です。高血圧は、腎臓病だけでなく、脳卒中や糖尿病等、様々な病気を引き起こしかねません。血圧測定により自己管理することも重要です。

この記事の監修

いとう腎・泌尿器科クリニック 院長伊藤 誠一

平成7年に鳥取大学を卒業、平成11年から呉共済病院へ赴任し17年間勤務しました。高齢化が進む呉地区で長らく勤務した経験を生かして地域の皆さんと長いお付き合いがしたいと思いこの度呉市中通2丁目にクリニックを開院しました。リオオリンピック開催や25年ぶりの広島カープ優勝の記憶に残る年に開院できた事をうれしく思っています。

受診される皆様それぞれにクリニックに求める物が違うと思いますので、皆様の話をしっかり聞いた上で総合病院や専門病院とも密に連携を取りながら、それぞれのニーズに応じた幅広い診療を地道に続けていきたいと思っています。そのために私をはじめとして職員一同が向上心を持ち日々診療を続けて行く事を大事に思っています。

【経歴・資格・所属学会】

[経歴]
平成7年 鳥取大学医学部卒業
平成7年 岡山大学医学部泌尿器科研修医
平成8年 福山市民病院泌尿器科
平成8年 国立病院機構岩国医療センター泌尿器科
平成9年 倉敷成人病センター泌尿器科
平成11年 国家公務員共済組合連合会 呉共済病院泌尿器科
平成28年 いとう腎・泌尿器科クリニック開院

[資格]
日本泌尿器科学会専門医
日本泌尿器科学会指導医
腎移植学会専門医
臨床腎移植学会専門医

[学会]
日本泌尿器科学会
日本移植学会
臨床腎移植学会

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