鼻腔異物
鼻腔異物とは、鼻腔にビーズやBB弾、ドングリといった外部からの異物が入っている状態のことです。鼻腔に入るサイズのものであれば、様々なものが原因になり得ます。
特に5歳以下の小さな子供の発症率が高くあります。
鼻腔異物の原因
鼻腔異物の原因となるものは様々ですが、例としてはビーズやBB弾、ドングリ、小石、ボタン電池等が挙げられます。この中で特に注意が必要なのがボタン電池です。ボタン電池により鼻腔異物が生じると、鼻の粘膜とボタン電池が反応して粘膜損傷が強くなる恐れがあります。
また、ボタン電池は鼻腔異物以外にも食道異物の原因となることもあります。食道異物とは誤って口に入れて飲み込んでしまうことです。食道異物が生じた際も粘膜が損傷しやすく、ひどい場合には食道に穴が開く危険があります。
鼻腔異物は小さな子供の発症率が高くあります。これは、初めて見るものに対して大きな関心を持ち、興味本位から鼻腔に入れてしまうことがあるためです。
鼻腔異物の症状
鼻腔異物の主な初期症状は、出血、鼻の痛み等です。鼻腔異物の原因となったものによっては、誤嚥を起こすこともあります。鼻腔異物による誤嚥とは、異物が喉頭と気管に入ってしまった状態のことを指します。鼻腔異物を数日以上放置すると、悪臭を伴った一側性の鼻漏が生じるようになります。鼻漏が生じているにも関わらずさらに放置すると、頭痛、発熱等副鼻腔炎のような症状が見られるようになります。
また、前述の通りボタン電池は粘膜に損傷を受けやすくあります。そのため、鼻の中の壁が破れて激しい痛みが生じたり、量の多い鼻出血が生じることもあります。
ただし、まれに無症状のこともあります。無症状のまま鼻腔異物を長期間放置した場合、鼻石を引き起こすことがあります。これは、異物を中心核として炭酸カルシウム等が沈着して結石が形成されるためです。
例え無症状であったとしても、早期に取り除くことが大切です。
鼻腔異物の治療法
鼻腔異物の治療法は異物の除去です。鼻腔に局所麻酔を十分に行った上で、鼻鏡を使用して異物を確認しながら慎重に除去します。ただし、誤って異物が奥に入り込み後鼻孔から気道に落下する危険もあるため、慎重に行わなければなりません。
また、小さな子供は苦痛や恐怖心から、暴れて鼻腔の粘膜をさらに傷つける危険があります。安全に処置が行えない場合には、全身麻酔の上で摘出術を行うこともあります。
なお、ボタン電池が鼻腔異物の原因となっている場合には、摘出後にしっかりと鼻腔内を生理食塩水で洗浄する必要があります。摘出後、数日経過してから鼻中隔に穿孔が生じることもあるため、慎重な経過観察が必要です。
鼻腔異物の予防
鼻腔異物を予防するためには、鼻腔に入る程度の小さなサイズのものを子どもが手にする際は、目を離さないようにすることが重要です。子供は初めて見るもの、触れるものに大きな関心を持ち、興味本位から鼻腔に入れてしまう危険があります。家事等でお子様から目を離す際は、鼻腔に入るサイズのものはお子様の手の届かないところに置く等を徹底し、鼻腔異物を予防しましょう。
万が一鼻腔異物が生じた場合には、必ず病院を受診し除去して下さい。コットンや綿棒を使って自分で除去しようとすると、異物がさらに奥に入り込んでしまう危険があります。異物が鼻腔よりも奥に入り込むと、大掛かりな治療が必要になることもあるため、自分で取り除こうとする行為は避けましょう。
鼻腔異物が疑われる場合は、放置せずただちに病院を受診して下さい。特にボタン電池は粘膜組織を損傷することがあり、重症になる危険があります。無症状であっても早期に病院を受診し、取り除けばほとんどの場合は問題ありません。
うした耳鼻咽喉科クリニック 院長片桐 佳明
【経歴・資格・所属学会】
平成18年3月
東京医科大学医学部医学科卒業
平成18年4月
県立広島病院
平成25年7月
広島大学医学部附属病院
平成27年6月
JA尾道総合病院
平成30年4月
堀病院
平成30年10月
うした耳鼻咽喉科クリニック開院
※資格
医学博士
日本耳鼻咽喉科学会 専門医
身体障害者福祉法指定医師
日本めまい平衡医学会 めまい相談医
※所属学会
日本耳鼻咽喉科学会
日本めまい平衡医学会