デング熱

デング熱は、蚊が媒介するデングウイルスに感染しておこる急性の熱性感染症です。
デングウイルスを媒介する蚊が生息する地域は、熱帯・亜熱帯を中心に100か国以上あり、全世界で毎年約1億人の患者が発生しているとの報告があります。日本では年間約300例の輸入例が報告されていますが、2014年に東京の代々木公園を中心に国内の流行が発生しました。海外からの輸入例をきっかけに、国内でアウトブレイクが起こる可能性には今後も注意が必要です。

原因

デングウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカなどに刺されることで感染します。ヒトからヒトに直接感染することはありません。
主たる媒介蚊であるネッタイシマカは日本に常在していませんが、媒介能力のあるヒトスジシマカが本州以南に生息しています。そのため流行地でウイルスに感染した日本人帰国者や外国人旅行者が日本国内で蚊にさされ、その蚊が他者を吸血した場合に、感染することが起こりえます。このように輸入例を発端として、2014年の東京での国内流行は起こったと考えられます。幸い、ヒトスジシマカの成虫は秋になって気温が下がると死んでしまい、冬を越した卵からデングウイルスが検出されたという事例は確認されていないため、日本においては限定された地域での一過性の流行に終わると考えられます。

症状

蚊に刺されてから3~7日(短くて2日、長くて15日)の潜伏期間の後、38~40℃の発熱が5~7日続くのが典型的な経過です。発熱以外には頭痛と関節痛の頻度が高く、筋肉痛、吐き気、嘔吐、下痢、発疹などの症状がみられることもあります。多くの場合は1週間程度で自然に回復しますが、一部の患者において出血傾向やショックといった症状を示す重症デングへと移行することがあります。

検査・診断

血液検査では、発症後数日で白血球や血小板の減少が多くの場合にみられます。
診断のための検査は、PCR法による病原体遺伝子の検出、ELISA法による病原体蛋白(NS1)抗原の検出、IgM抗体の検出などがあります。
なお、デング熱は感染症法で4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることが義務付けられています。

治療

デング熱に有効な薬剤はないため、治療は対症療法が中心となります。アスピリンなどのサリチル酸系薬剤の投与はデング熱による出血症状などを悪化させる可能性があるため、発熱や痛みに対してはアセトアミノフェンを使います。
重症デングの場合は、適切な輸液治療などの厳重な全身管理が必要になります。

予防

現時点において、デング熱に有効なワクチンは開発されていません。そのため、デング熱の流行地域に渡航する際は、蚊に刺されないように工夫をすることが大切です。肌の露出の少ない長袖・長ズボンの服装をすること、虫よけ剤を適切に使用すること、できるだけ網戸が完備された窓やエアコンのある宿泊施設を利用することなどを心がけてください。

この記事の監修

のだ内科ファミリークリニック 院長野田 昌昭

2018年3月に西区井口明神で「のだ内科ファミリークリニック」を開院させていただきました院長の野田昌昭と申します。
広島大学医学部を卒業後、内科・血液内科を中心に長年数多くの診療に携わってきた経験を生かし、お子さまからご年配の方までご家族で気軽に訪れて、何でも相談できる明るいクリニックを目指したいと考えております。地域のみなさまの健康をサポートする、頼れる「かかりつけ医」となれるよう努力研鑽してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
昭和58年 広島大学附属高校卒業
平成元年 広島大学医学部卒業
平成8年 広島大学原医研血液内科大学院修了
平成8年 国立大竹病院 内科医師
平成10年 広島大学原医研血液内科 助手
平成10年 米国ウィスコンシン州Blood Research Institute留学
平成12年 国立大竹病院 内科医師
平成15年 社会保険広島市民病院 健康管理センター副部長
平成17年 広島市立広島市民病院 内科部長
平成25年 広島市立広島市民病院 血液内科主任部長
平成29年 草津病院 内科医師
平成30年3月 のだ内科ファミリークリニック開院

【資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本血液学会専門医・指導医
日本感染症学会専門医
日本内科学会中国支部評議員
日本血液学会中国四国支部評議員
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法指定医「免疫機能障害」
広島県もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
広島県がんよろず相談医

【所属学会】
日本内科学会
日本血液学会
日本感染症学会

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