再生不良性貧血
再生不良性貧血は、血液中に含まれる赤血球、白血球、血小板の全てが減少する病気で、国が定める指定難病の1つです。血液を産生している場所である骨髄組織の多くが脂肪に置き換わり、血球の生成がうまくいかず、貧血症状、感染による発熱、出血などが起こります。
原因
骨髄中の造血幹細胞が持続的に減少することによって起こります。造血幹細胞とは骨髄中にあって、赤血球、白血球、血小板などの血球細胞の基になる未熟な細胞です。造血幹細胞の減少を来たす病態については、一部は先天性あるいは薬剤などによる二次性のものですが、大部分が原因不明のもの(特発性)です。特発性再生不良性貧血の大多数は、自己免疫的な(免疫を司る細胞が自分の細胞を攻撃する)機序によって造血幹細胞が傷害される結果で発症すると考えられています。
症状
赤血球、白血球、血小板の減少によって、それぞれの血球減少に応じた様々な症状が起こります。酸素を運搬している赤血球の減少によって、倦怠感、動悸、息切れ、めまい、頭痛、顔色不良などが起こります。感染防御に重要な役割を担っている白血球の減少によって、肺炎や敗血症のような重症の細菌感染症にかかりやすくなります。止血に働く血小板の減少によって、出血しやすい傾向となり、皮下出血、歯肉出血、脳出血、下血などが起こります。
検査・診断
血液検査で赤血球、白血球、血小板がいずれも減少している場合は、再生不良性貧血を疑い、骨髄検査やMRI検査などを行います。骨髄検査では骨髄の状態を調べ、他の病気ではないことを確認します。MRI検査では胸椎や腰椎などの画像を撮影し、全身的な造血状態を調べます。
治療
治療法としては、造血の回復を目指した治療と症状の改善を目指した治療があります。
造血の回復を目指した治療は、以下の4つに分けることができます。
免疫抑制療法
造血幹細胞を傷害しているリンパ球を抑えて造血を回復させる治療法です。抗胸腺細胞グロブリン(ATG)やシクロスポリンという薬が使われます。
造血幹細胞移植
強力な治療でリンパ球や血液細胞を壊した後、正常な造血幹細胞を移植して造血を回復させる治療です。患者さんの体への負担が大きいことや造血幹細胞のドナーが必要なことなどから、誰にでも行えるわけではありませんが、最も高い治療効果が期待できる治療法です。適合ドナーが存在する重症度の高い40歳以下の方には、この方法が推奨されます。
蛋白同化ステロイド
造血の回復を促す薬です。
トロンボポエチン受容体作動薬
造血幹細胞に発現しているトロンボポエチン受容体を刺激して、造血幹細胞からできる血液細胞を増やす薬です。
症状の改善を目指した治療は、支持療法と呼びます。
支持療法は、病気の根本的な治療ではなく、その症状を改善し生命を維持するための治療のことです。貧血に対する赤血球輸血、血小板減少に対する血小板輸血、白血球減少に対する白血球を増やすホルモン(顆粒球コロニー刺激因子:G-CSF)の投与などがあります。
再生不良性貧血は、血球減少の程度によって、ステージ1~5(軽症、中等症、やや重症、重症、最重症)の5段階に重症度が分けられます。この重症度が治療法を選択する際の大きなポイントになります。重症度に加え、患者さんの年齢や全身状態なども考慮した上で治療方針が決定されます。
生活上の注意点
手洗いやうがい、人混みをできるだけ避けマスクを着用するなど、感染対策はしっかり行いましょう。規則正しい生活を心がけ、貧血症状がある場合は無理をせず十分に体を休めるなど、体調管理には気をつけましょう。もし体調がおかしいと感じたら、すぐに主治医に相談してください。
のだ内科ファミリークリニック 院長野田 昌昭
【経歴・資格・所属学会】
昭和58年 広島大学附属高校卒業
平成元年 広島大学医学部卒業
平成8年 広島大学原医研血液内科大学院修了
平成8年 国立大竹病院 内科医師
平成10年 広島大学原医研血液内科 助手
平成10年 米国ウィスコンシン州Blood Research Institute留学
平成12年 国立大竹病院 内科医師
平成15年 社会保険広島市民病院 健康管理センター副部長
平成17年 広島市立広島市民病院 内科部長
平成25年 広島市立広島市民病院 血液内科主任部長
平成29年 草津病院 内科医師
平成30年3月 のだ内科ファミリークリニック開院
【資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本血液学会専門医・指導医
日本感染症学会専門医
日本内科学会中国支部評議員
日本血液学会中国四国支部評議員
日本医師会認定産業医
身体障害者福祉法指定医「免疫機能障害」
広島県もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
広島県がんよろず相談医
【所属学会】
日本内科学会
日本血液学会
日本感染症学会