関節リウマチ

関節リウマチは、免疫の異常によって関節の腫れや激しい痛みが起こり、後に関節に変形を来たす病気です。自分自身の免疫反応が起こることで発症する為、自己免疫疾患に該当します。

自己免疫疾患とは、本来病原体から身を守るべき免疫が、何かしらの原因で異常を来たし、自分自身の体を攻撃してしまう状態のことです。関節リウマチは日本の人口の0.5〜1%と患者数が多い自己免疫疾患で、特に30~50代の女性に発症することが多い病気です。

関節リウマチの原因

本来身体を守るべき免疫に異常が生じ、自身の細胞や体を攻撃することで、関節内の炎症を引き起こし発症します。なぜ免疫が自分自身を攻撃してしまうか、根本的な原因は解明されていませんが、関節リウマチの場合は遺伝的要因と環境的要因の両方が組み合わさることにより発症すると考えられています。

近年の研究により、リウマチになりやすい遺伝子は100種類程あると言われています。代表的な遺伝子は「HLA-DRB1」という白血球の遺伝子です。このようにリウマチに関する遺伝子が「遺伝的要因」とされており、関節リウマチの発症に10〜15%関係していると考えられています。

一方で、最も関係が深いと考えられている環境的要因は喫煙です。喫煙の他にも、歯周病、腸内細菌の乱れ、慢性の呼吸器感染症等免疫系の活性化も原因と考えられています。

関節リウマチの症状

関節リウマチの初期症状は、手や足の指の関節が左右対称に腫れ、朝方にこわばるようになります。このように起床時の手のこわばりは更年期等の女性ホルモンの低下に伴う関節痛やヘバーデン結節などの変形性関節症でも見られますが、関節リウマチの場合は1時間以上手のこわばり続くという特徴があります。

痛みは手首や手指の関節に生じることが多いですが、足の指も痛くなることが多く人によっては膝関節や股関節にもリウマチが進み、歩行が困難になり日常生活動作に影響を及ぼすこともあります。手のリウマチだけでなく足のリウマチもあるということです。

関節にある滑膜という場所に炎症が続くと軟骨や骨が破壊されていきます。軟骨や骨が破壊されると、関節の変形や脱臼、関節の曲げ伸ばしが難しくなる拘縮(こうしゅく)等を引き起こします。

また、炎症の強さによっては、関節症状だけでなく発熱や倦怠感、食欲不振などの全身症状が表れます。特にリウマチによる肺の病気も気をつけなければいけませんのでリウマチとなった場合には胸のレントゲン検査を受けることが大切です。また骨粗鬆症になりやすく、貧血やリンパ節が腫れたり、血管炎などを併発することもありますので専門医に全身のチェックを受けられることをおすすめいたします。

関節リウマチの治療と予防

関節リウマチの治療

関節リウマチは、発熱や倦怠感、貧血等を伴うこともある全身病です。関節リウマチの治療では、免疫抑制剤であるメトトレキサートが中心でその他の抗リウマチ薬、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬等を病気の状況に合わせて薬物療法をすることが大切です。

薬物療法は、関節症状の改善、関節の炎症や関節破壊の抑制、日常生活動作の改善を目的としています。標準的な治療で十分な効果が見られない場合には、生物学的製剤やJAK阻害薬を使用することもあります。尚、生物学的製剤とは、生物が産生するたんぱく質等の物質を改良して作られた薬です。リウマチに効果的な生物学的製剤は現在8種類あります。さらに医療費を抑えたバイオシミラーもあり治療の選択肢が増えています。

関節の機能を保ち不自由なく日常生活を送る為に適切な運動療法や必要に応じてリハビリテーションも行います。足底版等の装具を使用し、関節の変形の保護や日常生活の補助をします。

ただし、長期間に渡る関節の炎症で関節が変形し、関節の機能が失われてしまった場合には、人工関節に置き換える手術が必要です。症状により手術内容は異なりますが、関節固定術・人工関節置換術・滑膜切除術・頸椎の固定術等です。

関節リウマチの予防

関節リウマチの原因は現在解明されていない為、完全な予防法はありません。しかし、歯周病や喫煙が関節リウマチを引き起こす原因として考えられています。そのため、歯周病の予防や禁煙が予防に繋がる可能性があります。

歯周病は歯垢や細菌が歯と歯の間に詰まることで発症します。つまり、歯周病を予防する為には歯垢が付着しないようにすることが大切です。
普段から丁寧に歯磨きを行い、定期的な歯石除去を行いましょう。特に関節に痛みを感じると歯磨きが疎かになることがあります。歯磨きしづらいと感じた場合には、電動歯ブラシの使用等を検討し、歯垢が溜まらないようにしましょう。

また、関節リウマチは早期発見出来れば寛解を目指すことができ重症化を防げます。関節リウマチの進行は個人差がありますが、早い人だと発症から6ヶ月で関節破壊がはじまり、2年以内に急速に関節が破壊されることがあります。そのため、少しでも早く発見し治療を受けることが大切です。関節リウマチの治療は腫れや痛みを抑えるだけではなく、良い関節の状態を保つことを目的としています。

関節のこわばりや痛み等、関節リウマチの症状が現れたら、早めに受診し、医師の指導の下適切な治療を受けてください。また、関節リウマチは変形関節症等、他の関節症と似た症状も見られます。他の関節症も早期発見により、重症化を防ぐことが出来ます。少しでも関節に違和感があれば、一度病院を受診することをおすすめします。

さらに、関節リウマチを発症すると感染症に罹り易くなります。感染症の併発を防ぐ為に、手洗いや規則正しい生活を心掛け、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン接種も積極的に行いましょう。尚、ワクチンの接種については、必ずかかりつけの医師と相談してください。

この記事の監修

安佐南内科リウマチ科クリニック 院長舟木 将雅

私は安佐南区出身で、これまで広島県下の主要病院で呼吸器疾患とリウマチ・膠原病などの免疫、運動器疾患を中心に内科医として診療してまいりました。
当クリニックは、「心をつなぎ自分らしく生きることを支える」を理念とし、令和元年にリウマチ膠原病科と呼吸器内科専門として開院いたしました。
ロゴの5色のもみじのマークは、当院が力を入れる5つの診療科「内科」「リウマチ膠原病科」「呼吸器内科」「アレルギー科」「疼痛緩和内科」を表現しています。対話を重視し聴診器で皆様とつながり地域医療としてゆき届く医療を実現します。

私たちのミッションは、
・個人の尊厳を守り一歩踏み込んだ医療を提供します。
・リウマチと呼吸器疾患の専門的医療を行ないます。
・多職種と連携し社会的処方を行ないます。
・地域コミュニティに積極的に関わります。

リウマチでお悩みの方はもちろん、身近な日常疾患にも対応できる地域のかかりつけ医としてお力になれれば幸いです。

【経歴・資格・所属学会】

※主な経歴
○安佐南内科リウマチ科クリニック 院長

※資格など
○日本リウマチ学会リウマチ専門医・指導医
○日本呼吸器学会呼吸器専門医•呼吸器内視鏡専門医
○日本内科学会認定医

※所属学会
○日本リウマチ学会
○日本呼吸器学会
○日本内科学会

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