脳卒中後遺症
脳卒中後遺症とは、脳卒中を発症したことで生じた後遺症の総称です。脳卒中は「脳梗塞」「くも膜下出血」「脳出血」の3種類があります。
脳梗塞は、脳の血管が詰まる或いは狭くなることで血流が悪くなったり、不整脈が原因で発症します。くも膜下出血は、脳の太い血管にできた動脈瘤が破裂し、脳の表面(くも膜下)に出血して発症します。脳出血は、脳の細い血管が破裂して脳の組織の中に血腫ができることで発症します。
脳卒中に気付かず放置し処置が遅れると、後遺症が残るリスクが高くなります。特に症状が出てから3〜6時間以上経過した場合は後遺症が残る確率が高まります。尚、脳卒中で残る後遺症は、脳の損傷部位により異なります。
脳卒中後遺症の原因
脳卒中で後遺症が残る原因は、出血や梗塞により運動や感覚、言語を司る器官が損傷されるためです。脳卒中は前述の通り、「脳梗塞」「くも膜下出血」「脳出血」の3種類に分けられますが、この内脳梗塞は再発を繰り返すことが多く、再発のたびに後遺症が重くなっていくことがあります。
脳卒中後遺症の症状
脳卒中により後遺症が残る確率や引き起こされる障害は、重症度や損傷した箇所により異なります。脳卒中は最悪の場合死に至る危険な病気で、一命を取り留めたとしても、処置が遅れると後遺症が残る確率は高くなり、障害も重くなります。
運動麻痺による症状は、損傷した脳と反対側の体が動かしにくくなります。運動麻痺になると脳から筋肉を制御することが難しくなります。そうなると脊髄レベルでの制御が過剰となるため、手足のつっぱり「痙縮」が出現します。手足のつっぱり以外に、手足がこわばる、手足が固くなる、手足がうまく動かせないといった表現をされることがあります。
感覚障害では、麻痺により動かしたり触れているなどの感覚がわからなくなったり、熱さ・冷たさなどの感覚や痛みの感覚が低下したりします。
言語障害では、他人の言葉が理解できなくなったり、思っていることが上手くしゃべれなくなったり、意思の疎通が困難になったりします。
その他、物が二重に見えたり(複視)、両眼の半分が見えなくなる視野障害(同名半盲)や、飲み込みが難しくなる嚥下障害、トイレが間に合わなくなる排尿障害、ふらついてまっすぐ歩けなくなる失調症状などの後遺症が出現します。
また、怒りっぽくなったり、何かにこだわりすぎるようになったり、物覚えが悪くなったりと、今までに見られなかった症状が出現することがあります。これは高次脳機能障害といわれるもので、注意障害・記憶障害・感情障害・遂行機能障害・病識の欠如などの症状があります。
脳卒中後遺症の治療法
後遺症が残った場合には、リハビリテーションを行います。軽症であればリハビリテーションにより完治することもあります。しかし、症状が重ければ完治は難しく、他の残った機能を使って日常生活を送れることを目的としたリハビリテーションを行います。
脳卒中後遺症の予防
脳卒中は最悪の場合、命を落とすこともある危険な病気です。命は助かったとしても、処置・発見が遅ければ重篤な後遺症が残ってしまいます。そのため、脳卒中の後遺症を予防するためには、脳卒中自体を予防する或いは早期に発見することが有効です。
脳卒中を予防するためには、高血圧症、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病に注意が必要です。塩分控えめの食生活を心掛け、コレステロールを減らす、喫煙を止める、適度な運動をする、十分な休養をとりストレスを溜めない等、普段の生活習慣を見直しましょう。
また、脳卒中は40歳以降になると発症率が高くなります。そのため、40歳を超えたら定期的に脳ドックを受け、脳の健康状態を確認するように心がけましょう。
ながお脳神経外科クリニック 院長長尾 光史
【経歴・資格・所属学会】
平成7年5月 大阪医科大学附属病院 脳神経外科教室 入局
[主な勤務病院]
畷生会脳神経外科病院
翠清会梶川病院
弘田脳神経外科病院
大阪府三島救命救急センター
児玉病院
大阪医科大学附属病院 麻酔科
みどりヶ丘病院
新生病院 部長
荒木脳神経外科病院 副院長
平成22年12月 ながお脳神経外科クリニック 開院
免許・資格
平成7年5月 医師免許取得 平成13年7月 医学博士号取得 平成13年8月 日本脳神経外科学会専門医取得