急性腰痛症(ぎっくり腰)
急性腰痛症とは、腰痛が発症してから4週間以内のものを指します。一般的には「ぎっくり腰」という名称で知られています。
急性腰痛症の多くは、重いものを持ち上げたり、腰を強くひねったり等、腰に負担をかけることで発症しますが、洗顔などで腰を少し屈めただけでも起こることがあります。他には骨折や感染症、腫瘍等の病気から発症することもあります。
平成28年度に行われた厚生労働省による自覚症状の調査によると、腰痛を感じたことのある男性は1位、女性は2位と、日本人には馴染みの深い症状です。しかし、上記のように他の病気が原因となっていることもあるため、放置せず一度病院を受診して検査を受けることをお勧めします。
急性腰痛症の原因
急性腰痛症の原因はさまざまです。原因として多いのは、腰椎椎間関節のずれ、椎間板や腰を支える筋肉の損傷です。また、椎間板ヘルニア、脊椎分離症、すべり症、圧迫骨折、がん、感染症等、他の病気が原因で発症することもあります。
急性腰痛症の症状
急性腰痛症の症状の殆どは、腰に強い痛みが生じ、腰を前後に曲げることが困難になることです。痛みが強過ぎると動けなくなったり、臀部や下肢まで痛みが広がることもあります。
急性腰痛症を発症し腰に痛みが生じても、安静にしていれば多くの場合治ります。しかし、過度な安静は筋力低下を引き起こしたり、慢性化する原因となるため、無理のない範囲で体を動かした方が良いでしょう。
急性腰痛症は感染症が原因で発症することもあります。感染症が原因となっている場合には発熱等の感染症に伴う症状もみられます。
急性腰痛症の治療法
急性腰痛症の多くは数日から数週間程度安静にしていると治ります。治療が必要な場合には、症状によって薬物療法、トリガーポイント注射や筋膜リリース(ハイドロリリース)、神経ブロック療法、装具療法等を行うことがあります。
薬物療法では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)という腰の痛みを抑える薬が処方されます。痛みにより筋肉が緊張している場合には、筋弛緩薬や抗不安薬を使用して緊張を和らげることもあります。また、下肢痛などの神経症状がみられる場合には神経障害性疼痛薬を処方することもあります。
神経ブロック療法は、安静にしていても痛みが治らない場合や、下肢痛を伴う場合に行われます。ブロック方法としては、仙骨硬膜外ブロックや選択的神経根ブロックなどがあります。前者は、簡便なためよく行われる方法で、広範囲の腰痛でも行われます。後者は、痛みの原因となっている神経だけをブロックする方法で、レントゲン透視下に行うため設備が必要ですが、片方だけの下肢痛ではより効果的です。
急性腰痛症は安静にすることで症状が改善することが多くありますが、過度な運動制限は筋力の低下等を引き起こします。そこでコルセットを用いて痛みの出ている部分を安静に保ちつつ、無理のない範囲で体を動かすことで早期の回復を図ります。
骨折やがん等の他の病気が原因となっている場合には、症状に対する治療と共にその病気の治療も行われます。
急性腰痛症の予防
急性腰痛症を予防するためには、腰に負担をかけ過ぎないようにすることが大切です。常に正しい姿勢を心掛けたり、重い荷物を持たないようにする等、腰に負担をかけないようにしましょう。仕事等で重い荷物を持たざるを得ない方は、腰回りの筋肉を鍛え、下肢のストレッチをしましょう。腹筋や殿筋を鍛えて、腰の筋肉のバランスを整え、太ももの裏側をストレッチすることで腰への負担を減らすことができ、腰痛予防につながります。
また、急性腰痛症を発症し、症状で生活や仕事が辛く、無理をして頑張っていると、頭が痛みを覚えてしまったり、気分が落ちこんでしまい、ストレスが溜った状態になり、治りが悪くなり、慢性化することもあります。そのため、ストレスを溜め過ぎないように適度な休養を心掛けることも大切です。中々治らない場合や、痛みに大きな不安を感じる場合は、早めに受診して慢性化を防ぎましょう。
やまぐち整形外科リハビリクリニック 院長山口 一敏
【経歴・資格・所属学会】
1986年 修道高校卒業
1996年 同志社大学卒業
2003年
関西医科大学卒業、広島大学整形外科学教室入局
広島大学病院(研修医)(~9月)
マツダ病院(研修医)(~2005年3月)
2005年 松山市民病院
2007年 広島共立病院
2009年 安芸太田病院
2014年 山口整形外科病院
2021年 やまぐち整形外科リハビリクリニック開業
【資格】
日本整形外科学会認定整形外科専門医
【所属学会】
日本整形外科学会