腱鞘炎

腱鞘炎は手のひら側や手首の親指側に起こりやすく、手の使いすぎで痛みが出ます。代表的には手指屈筋腱腱鞘炎とドケルバン病があります。
手を動かした時のほんの違和感から始まり、症状が進むと使い痛みや引っかかりを感じるようになります。スマートフォンやパソコンの操作、楽器の演奏、手首を使うスポーツなど身近な習慣の中にそのリスクは潜んでいます。最近ではスマートフォンやゲームの使用により発症する人が増えています。

手以外では、肩や前腕、足首にも起こることがあります。

腱鞘炎になる原因

注意したい動作

腱鞘炎の多くは手の使いすぎが原因です。

仕事などの場面では、パソコンのタイピングやマウスの操作などです。趣味などでいうと、ピアノや管楽器など、指を継続的に動かす楽器の演奏や、ゲーム中のパソコンやコントローラー操作、テニスや野球、ゴルフなど道具を握ったりするスポーツなどが原因になります。日常生活においては、スマートフォンのスワイプやタップなどの動作、育児にまつわる長時間の授乳や抱っこなど避けることができない動作も原因になります。

また、女性により多く、妊娠や出産後、更年期の方に多くみられるため女性ホルモンが関係していると考えられています。
他には関節リウマチが原因となることがあります。また、細菌感染が原因で発症する化膿性腱鞘炎は緊急で抗生剤点滴や手術などの治療が必要であり、強い腫れや痛み、発赤、熱がある場合は速やかに医療機関を受診して下さい。

腱と腱鞘

筋肉は腱を経て骨に付着します。腱は腱鞘と呼ばれる鞘に包まれていて、腱鞘は腱が骨から浮かないように固定し、滑車としても作用します。

指を曲げる屈筋腱は腱鞘炎の好発部位で、肘の内側から始まり、指先の骨に付きます。普段は腱鞘の中を腱が滑らかに移動しますが、長年手を酷使することで腱や腱鞘が炎症を起こし、腫れたり、分厚くなります。その結果、腱と腱鞘の間で滑走障害が起こり、指の曲げ伸ばしで引っかかりを感じたり、ひどくなると指が曲がったまま伸びなくなる「ロッキング」を生じます。

代表的な腱鞘炎の症状

代表的な腱鞘炎は、①手指屈筋腱腱鞘炎と②ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)の2つです。

手指屈筋腱腱鞘炎

右手に多く、母指、中指、環指の順で起こりやすいです。

初期段階では、指の動きの違和感程度しか感じません。しかし、次第に指の付け根の手のひら側に腫れや痛みを生じ、さらに進行すると、曲げた指が伸びなくなり、伸ばそうとすると急にバネのように伸びる「ばね指」が起こります。

ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)

手首の親指側にやや出っ張った部位があり、そこで親指を動かす2種類の腱(長母指外転筋腱・短母指伸筋腱)が狭い腱鞘内を通っており、腱が擦れて炎症を起こし、痛みや腫れが出現します。

親指を他の4本の指で握るようにげんこつをつくり、手首を小指側に倒してみて下さい。強い痛みを感じたならば「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」の可能性があります。
中には、生まれつき腱の数が3本以上ある場合や腱鞘の中に隔壁がある場合があり、元々腱鞘が狭い人がいます。

腱鞘炎の治療

セルフケア

まずは手の使いすぎを控えましょう。
クーリングも良い方法です。タオルなどでくるんだ保冷剤や冷却シートで炎症部分を冷やしましょう。

ドケルバン病では手首や親指の固定が効果的です。固定法にはテーピングやサポーター、包帯固定、装具などがあります。装具はいくつかあり、市販のものもありますが、健康保険が使えますし、医療機関で相談し、より適切なものを使用することを勧めます。

医療機関を受診する

症状が改善しない時や、痛みが増して不安を感じる時は早めに受診しましょう。
消炎鎮痛薬や湿布で痛みを軽減し、装具などによる固定で安静を図ります。

リハビリテーションでは、肘のストレッチや姿勢指導、筋緊張緩和、ブロックエクササイズなどの運動理学療法や、衝撃波などによる物理療法を行います。

痛みがとても強い場合は、腱鞘内に直接炎症を抑えるステロイド剤を注射したり、それでも回復しない場合には手術で分厚くなった腱鞘を切開します。

特に屈筋腱腱鞘炎では、痛みやばね指のために長い間あまり動かせないでいると、指先の関節が固くなってしまい、手術をして指の付け根の痛みや指の引っかかりがなくなっても、指先の関節が元通りに動かしにくくなる場合があるため、受診のタイミングの見極めが重要です。

腱鞘炎の対策

最も重要なのは、手や指を酷使しないことですが、どうしても作業を続けなくてはならない場合は、休憩をはさむ、装具を着けるなど工夫します。また、スポーツでは、正しくないフォームや体の使い方のせいで過剰な負担がかかっている場合もあり、正すことで改善することもあります。

強い痛みが和らいだら、手指や手首、肘などのストレッチを行いましょう。普段から筋肉をほぐし、血行促進をこころがけることも腱鞘炎の予防には有効です。
おすすめのストレッチを紹介します。ストレッチは片手ずつ行います。

  1. まず片方の手のひらを上に向けて前方に伸ばしましょう。
  2. もう片方の手で下から指先をつかみ、手前に引っ張ります。
  3. 手の内側(ひじの内側)が伸びているのを感じたらしばらくキープします。
  4. 反対の手も同様の手順で行ってください。
  5. 次は手の甲を上に向けて前方に伸ばします。
  6. もう片方の手で下から指先をつかみ、手前に引っ張ります。
  7. 手の外側が伸びているのを感じたらしばらくキープしましょう。

無理に伸ばす必要はなく、心地の良い程度と回数で十分です。
他に、手のひらや肘の内側や外側の筋肉をもみほぐすことでも予防効果が期待できます。

この記事の監修

やまぐち整形外科リハビリクリニック 院長山口 一敏

昭和47年に前院長が当地に山口整形外科病院を開業させていただき、私もこの祇園で育ちました。高校卒業後は県外で過ごしましたが、平成15年に広島に戻り、平成26年より山口整形外科病院・副院長として祇園に戻ってまいりました。子供の頃はまだ近所に田んぼや畑がたくさんあり、近くの野山で虫捕りや魚釣りなどをして遊んでおりましたが、今では大型商業施設もある現代的な街に変化し、時の流れと年齢を感じざるを得ません。患者様に対して専門的な言葉や用語はできるだけ使わず、わかりやすい言葉でご説明するように心がけております。説明がわかりいくい時や疑問に思われることがあれば、遠慮なくおききください。前院長が築いてきた地域に根差した医療を継承し、適切な診断・治療とともに、患者様の思いに寄り添う医療をこれからも続けてまいります。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
1986年 修道高校卒業
1996年 同志社大学卒業
2003年
 関西医科大学卒業、広島大学整形外科学教室入局
 広島大学病院(研修医)(~9月)
 マツダ病院(研修医)(~2005年3月)
2005年 松山市民病院
2007年 広島共立病院
2009年 安芸太田病院
2014年 山口整形外科病院
2021年 やまぐち整形外科リハビリクリニック開業

【資格】
日本整形外科学会認定整形外科専門医

【所属学会】
日本整形外科学会

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