脂漏性皮膚炎
顔や頭・耳の裏・首周りや脇の下・足の付け根といった皮脂分泌が盛んに行われる箇所に、湿疹や皮膚が剥がれてこびりつく皮膚の病気です。乾燥肌と思い込み、放置する人も多くいます。
年齢を問わず、小さいお子様から大人の方まで起きる可能性があり、生後数ヶ月の乳児が罹る乳児脂漏性皮膚炎も似た症状が見られますが、こちらは自然治癒する場合が多いです。
ストレスをきっかけに発症する傾向が高く、一度発症すると慢性的になりやすいため、再発を繰り返すことも多く自然治癒が困難となります。症状が見られる場合は皮膚科を受診してください。
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因について、明確化されていない面が多々あります。
皮膚には通常たくさんの菌やカビが常在しています。脂漏性皮膚炎の皮膚には、カビの一種であるマラセチア(真菌)が皮脂を栄養源として異常に増殖していることが明らかになっており、他に遺伝的な要因や生活環境も関わっているとする報告があります。
通常は分泌された皮脂は、皮膚表面をコーティングして膜を作り殺菌効果や有害物質の侵入を防止してくれる働きがあります。しかし、増殖したマラセチアによって皮脂が遊離脂肪酸に分解される時に皮膚に多くの刺激を与えることや、マラセチアの存在自体も皮膚へ炎症を起こす原因ではないかとみられています。
思春期を過ぎた男性が発症するケースが多く、皮脂の分泌促進に関係する男性ホルモンの影響も原因であると考えられています。
脂漏性皮膚炎の症状
皮脂腺が発達している箇所に、赤みや痒みの他に皮がむける症状が現れます。頭皮に症状が出るとフケのように皮膚の剥がれがみられます。ひどくなると剥がれた皮膚に浸出液が固まり、かさぶたのような状態になることがあります。また、フケの原因は他にもアトピー性皮膚炎やかぶれなどの場合もあるため、判断は専門医に委ねましょう。
顔の場合、眉毛や小鼻にこめかみといった皮脂や汚れがたまりやすい箇所が赤くなり油っぽい皮膚が剥がれてこびりつきます。いずれも共通して赤くなる・剥がれた皮膚が付着します。痒みは個人差があり、全くない人もいれば、強く痒みが表れる人などそれぞれです。痒みが我慢できない場合は、保湿を行い保冷剤などで冷やすことで緩和しましょう。
脂漏性皮膚炎の治療と予防
脂漏性皮膚炎の治療
皮膚に常在するカビ(真菌)が関係していると考えられるため、抗真菌薬やステロイド剤の塗り薬を中心に治療します。皮膚の薄い顔周りや首には、弱いステロイドを使用するなど配慮が必要となります。ステロイドは、適切な使用をすれば効果を期待できますが長期間の使用を避けるべく、症状が落ち着いてきたところで使用を中止します。中止の判断は決して個人で行わず、医師の判断を仰いでください。
抗真菌薬は、症状が軽度の場合や再発防止にも使用されています。また皮脂の分泌量を抑えるビタミンB2やビタミンB6の内服薬を処方することもあります。我慢できないほどのかゆみには、抗ヒスタミン剤の内服を行います。
脂漏性皮膚炎の予防
要因のひとつとして考えられる皮脂を抑えるため、食生活を見直して脂分の多い食事を減らしてください。毎日の生活で感じるストレスや睡眠不足も症状を悪化させてしまいます。生活習慣を見直しや、規則正しい毎日を送るよう心がけることが大切です。
栄養価として積極的に摂取したいビタミンB群には、脂質の代謝を促し健康な肌を作る働きがあります。ビタミンB群を多く含む牛乳や卵・しじみやほうれん草にトマトなどをしっかり摂りましょう。皮膚に刺激となる香辛料やアルコール・コーヒーといった刺激物やカフェインは出来るだけ控えて、ビタミンの吸収をしっかり行えるように胃腸を整えます。暴飲暴食や偏った食事は体にも皮膚にも悪い影響を与えます。
毎日入浴して洗顔やシャンプーを適切に行い、頭皮や肌に合う製品を選んでください。シャンプーや石鹸が原因となっている場合も考えられます。症状の出ている箇所は特に清潔に、皮脂汚れが溜まらないように対策が必要です。基本的に、洗顔は朝晩の2回・シャンプーは毎日行います。マラセチアのカビ類に効果が期待できる抗真菌剤が含まれているシャンプーも販売されていますので、上手に活用すると良いでしょう。すすぎ残しがないように優しく洗った後は、保湿をして乾燥させないように心掛けてください。肌の状態によっては、カラーリング・パーマ・ファンデーション・整髪料といった皮膚に刺激となる製品の使用を控えましょう。
古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子
【経歴・資格・所属学会】
平成18年
北里大学医学部 卒業
平成18年
北里大学病院 初期研修医
平成20年
北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
北里大学病院 助教
令和2年
北里大学病院 診療講師
北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務
【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会
【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医