掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手の平(手掌)や足の裏(足蹠)に膿が溜まった膿疱と呼ばれる皮疹が数多くみられる病気で、周期的に良くなったり、悪くなったりを繰り返します。足の裏にできているものは、歩く度に痛むこともあります。

掌蹠膿疱症は人から人へ感染することはありません。しかし、治療が長引いたり合併症を引き起こすこともある病気です。そのため、皮膚科で適切な治療を受ける必要があります。

掌蹠膿疱症は痒みのある水ぶくれや、場合によっては痛みも伴う辛い病気です。また、合併症により関節炎を引き起こせば、日常生活にも更に大きな影響が出ます。

しかし、適切な治療を続ければ治る病気です。気になる症状があれば医師に相談し、自分の症状にあった治療を続けることが大事です。

掌蹠膿疱症の原因

掌蹠膿疱症は原因が解らないことも多くありますが、喫煙・金属アレルギー・慢性的な感染症が関係していると言われています。ただし、禁煙や金属を取りのぞけば治るという訳ではありません。
また、虫歯や扁桃炎、歯周病や副鼻腔炎等の慢性的な感染症を引き金に他の病気を発症することを「病巣感染」と言います。必ずしも、病巣感染による発症ではありませんが、掌蹠膿疱症は病巣感染の代表的な病気です。

掌蹠膿疱症の症状

手の平や足の裏に痒みを伴った多数の小さな水疱(水ぶくれ)が出来ます。水ぶくれは、膿が溜まっていき膿疱に変化します。

掌蹠膿疱症の膿は、細菌感染によるものではないため他人に感染することはありません。膿疱は乾燥するとかさぶたを形成し、やがて剥がれ落ちます。かさぶたが剥がれ落ちることで自然に治ることもありますが、多くの場合で症状を繰り返します。

また、重症化すると、手の平や足の裏が赤みを帯びて厚みが増していきます。皮が剥けることでひび割れ、痛みも生じます。皮が自然とめくれるのではなく、無理に剥いてしまうと悪化するためやめましょう。手のひらや足の裏以外にも、すね・膝・肘・頭部にもカサカサした紅斑が出ることもあり、これを「掌蹠外病変」と言います。他にも、爪が変形したり、骨や関節に痛みが生じる場合もあります。

症状の似ている病気

手の平や足の裏に水ぶくれができただけでは、掌蹠膿疱症かどうか解りません。実際、似ている症状を来たす病気があるので紹介します。それぞれの病気で、適した治療は異なる為、疑わしい症状がある場合は皮膚科を受診しましょう。

異汗性湿疹(汗疱)

春から夏にかけての温暖な季節に、痒みを伴う水ぶくれが手の平や足の裏に出来る湿疹です。掌蹠膿疱症の症状と非常に似ています。掌蹠膿疱症と同じく感染の心配はありません。原因ははっきりしていませんが、自律神経の乱れ、多汗症、アトピー性皮膚炎や金属アレルギーが関連していると言われています。

白癬

いわゆる、水虫・たむしと呼ばれる病気です。痒みや皮膚の落屑などの症状が現れます。白癬はカビが原因となる感染症である為、同じスリッパやバスマットなどを介して感染することがあります。

掌蹠の尋常性乾癬

乾癬とは、皮膚の慢性的な炎症を伴う病気のことです。赤い発疹や浸潤、肥厚が見られ、皮膚がポロポロと剥がれ落ちます。尋常性乾癬は乾癬の一つで、掌蹠膿疱症とは違い、水ぶくれを形成しません。

膿疱性乾癬

膿疱性乾癬では高熱が出て全身に紅斑、膿疱が多数出来ます。掌蹠膿疱症、膿疱性乾癬ともに無菌性の膿疱です。

接触皮膚炎

いわゆる「かぶれ」です。接触による皮膚への刺激やアレルギー反応で起こります。

稽留性肢端皮膚炎

手足の指先や爪を中心に膿疱が出来る皮膚炎です。細菌やウイルス感染によるものでは無いため感染の心配はありません。手の平や足の裏に症状が出る場合もあるため、掌蹠膿疱症と間違えやすい症状です。

好酸球性膿疱性毛包炎

顔の毛包(毛穴)を中心に、激しい痒みを伴い好酸球が膿疱を形成します。掌蹠膿疱症と区別するため皮膚生検により診断されます。

合併症

掌蹠膿疱症を発症した人の約10〜35%が「骨関節炎」という合併症を引き起こすと言われています。掌蹠膿疱症の合併症による骨関節炎は「掌蹠膿疱症性骨関節炎」と呼ばれ、首の付け根や鎖骨、脊椎や腰、手足などで関節痛を引き起こします。関節の腫れや強い痛みにより寝返りがうてない、咳やくしゃみをすると痛む等、日常生活にも影響がでる合併症です。中には、掌蹠膿疱症性の皮膚症状が出る前に先に関節痛が出る人や、皮膚症状が無くなっても関節痛が治らない人もいます。

骨関節炎以外に、下痢・便秘・高脂血症・糖尿病・高血圧・バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患を合併することがあります。皮膚の状態だけでなく、喉の渇きや疲れやすさなども医師に相談するようにしましょう。

掌蹠膿疱症の治療

絶対的な治療法は確立されていませんが、掌蹠膿疱症の原因になりうる悪化因子がある場合は悪化因子の除去を行います。

悪化因子の除去は、例えば、掌蹠膿疱症を発症させる原因になる扁桃炎や虫歯、副鼻腔炎の治療です。また、喫煙している人は禁煙、金属アレルギーがある人は金属を除去します。金属はアクセサリーだけでなく、虫歯治療のための銀歯等の詰め物も除去の対象です。しかし、金属の除去だけで良くならない場合が多く、塗り薬や飲み薬、注射等の薬物療法や光線療法も行うことがあります。

原因が解らない場合、対症療法を続けていくこともあるため治療が長期戦になる場合もあります。治らない病気ではない為、根気よく治療を続けることが大切です。

掌蹠膿疱症の予防

治療と平行して日常生活で出来ることがあります。まずは、禁煙です。掌蹠膿疱症の方は喫煙されている方が多いというデータがあります。

次に、口腔内を清潔に保つことです。虫歯や歯周病、歯肉炎などにならないよう歯磨きや歯の定期検診を行いましょう。禁煙が歯周病や歯肉炎の予防にもなります。他にも、ストレスを溜め込まないようにすることや、規則正しい食生活を心がけることも大切です。

また、合併症のような症状が出ればすぐに医師に相談しましょう。いつもより喉が乾きやすくなった・疲れやすいなど、合併症に気づけるように自分の健康状態を把握しておく必要もあります。

この記事の監修

古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子

はじめまして。
私は広島市西区高須で生まれ育ち、ちどり幼稚園、古田小学校に通い、馴染み深い街で2022年3月に開院を予定しています。多くの経験を積むために、神奈川県で大学病院を中心に勤務し、アトピー性皮膚炎、じんましんなどのアレルギー疾患、小児皮膚疾患、悪性黒色腫などの皮膚癌の治療、手術、美容皮膚医療に携わってきました。
今まで培った経験を活かし、みなさまの皮膚の悩み・症状が改善され、すこしでも幸せを感じてもらえるお手伝いをさせていただきたいと思っています。この街の小さなお子様からご年配の方までが気軽に相談にきていただけるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【経歴・資格・所属学会】

【学歴・職歴】
平成18年
 北里大学医学部 卒業
平成18年
 北里大学病院 初期研修医
平成20年
 北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
 北里大学病院 助教
令和2年
 北里大学病院 診療講師

北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務

【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会

【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医

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