帯状疱疹
帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、針で刺されたような痛みとともに赤い発疹や小さな水ぶくれが帯状に現れる皮膚の病気です。
子どもの頃、「水ぼうそう(水痘)」にかかったことはありませんか?水ぼうそうになった経験のある人は、「帯状疱疹」を発症する能性があります。重症化すると髄膜炎、角膜炎や網膜炎等の合併症を引き起こすリスクもあるため、症状が現れた際は速やかに医師の診断を受けることが大切です。
今回は、帯状疱疹の原因を初め、症状や治療方法等について詳しく解説します。受診や予防の参考にしてください。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹とは、水ぼうそうと同じ「水痘帯状疱疹ウイルス」によって発症する皮膚の病気です。このウイルスは、初めて感染する時には「水ぼうそう」として発症しますが、症状が治まった後でもウイルス自体が消滅した訳ではありません。
このウイルスは脊髄の神経節に潜伏しており、普段は免疫力によってその活動が抑制されています。しかし、加齢や疲労、ストレス等によって免疫力が低下することにより、再びウイルスが皮膚に移動して帯状疱疹を発症します。
過去に水ぼうそうになったことがある人は、このウイルスを保持している状態のため、体内の免疫力が低下してしまった場合に帯状疱疹が発生すると考えられています。
帯状疱疹が発症しやすい年齢
帯状疱疹の原因は、免疫力の低下とされています。この免疫力の低下には「加齢」が深く関係しており、免疫力が低下する50代以上の年代で発症率が高くなっています。
実際に、20~40代の年齢での発症率は約2割となるのに対して、50〜70代では5割~8割まで増加します。80歳になるまでには、約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。
また、日本では成人の約9割が水痘(すいとう)・帯状疱疹のウイルスを持っていると言われています。日々の生活で疲労やストレスが溜まり、免疫力が低下することによって、若年層の人でも発症するリスクがあります。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹が発症すると、ピリピリとした刺すような痛みとともに、胸部・腹部・背中・顔等に最初は虫刺されのような浮腫性の紅斑(赤い斑点)が出現し、紅斑上に小さな水ぶくれが帯状に出現します。身体の左右どちらか一方の神経に沿って症状が現れるのが一般的で、特に上半身に出やすいとされています。
症状の経過に個人差はありますが、ピリピリ・チクチクといった針で刺すような痛みが現れ、1週間ほどで紅斑や水ぶくれが現れ始めます。症状が中等~重症の場合は、水ぶくれの数が増え、痛みも強くなるため、軽症段階での治療が必要です。症状が軽いうちに治療することで、皮膚に発疹や水ぶくれによる痕が残りにくくなります。
合併症・後遺症のリスク
帯状疱疹にかかると、様々な合併症にも注意が必要です。顔に帯状疱疹が現れていた場合、眼神経に広がると角膜炎や結膜炎といった合併症を引き起こすことがあります。
ウイルスが耳に繋がる神経に及ぶ「耳帯状疱疹(ハント症候群)」を発症した場合には、耳鳴りやめまい、顔面神経麻痺等の合併症を引き起こすケースもあります。
ウイルスが脳脊髄液に侵入し炎症を引き起こし、激しい頭痛、嘔吐、高熱が出現する髄膜炎を合併することもあります。
また、帯状疱疹の症状が治まったにもかかわらず、皮膚に痛みが継続することがあります。これを「帯状疱疹後神経痛(以下、PHN)」といい、神経に炎症が起こり損傷することで発生する後遺症です。
このPHNは、50代以上で帯状疱疹を発症した約2割の人に起こるリスクが高いとされています。免疫力が低くウイルスが活性化しやすい高齢者は、重症化する可能性があるため早期の治療が大切です。
人にうつる可能性は?
帯状疱疹は、人から感染することはありません。帯状疱疹が発症するのは、自分の身体に元々あった水痘帯状疱疹ウイルスの活動や増殖が活発化することが原因です。そのため、人から人へと移ることはないとされています。
ただし、これまで水ぼうそうにかかったことがなく、水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫を持っていない人に対しては、水ぼうそうとして感染する可能性があるため注意が必要です。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹の原因となる水痘帯状疱疹ウイルスは「ヘルペスウイルス」の一種のため、治療には「抗ヘルペスウイルス薬」と呼ばれる飲み薬が用いられることが一般的です。
抗ヘルペスウイルス薬には、水痘帯状疱疹ウイルスの繁殖を抑え、合併症の発症を抑える効果が期待できます。初期段階で服用するほど、治療効果も高くなると言われています。
また、皮膚への痛みが強い場合には「鎮痛薬」、PHNという後遺症を引き起こした場合には「鎮痛剤」や「抗うつ薬」を用いて、痛みを軽くするための治療を行います。
受診の目安
痛みを伴う紅斑が帯状に現れたら、「帯状疱疹」の可能性が高くなります。治療開始が早ければ早いほど治療効果が期待できるため、水ぶくれができる前にできるだけ早く皮膚科に受診しましょう。
帯状疱疹の対策
帯状疱疹の予防としてもっとも大切なのは、免疫力を低下させないことです。
バランスの取れた食事、十分な睡眠を取る等、規則正しい生活を心がけましょう。また、適度な運動をしたり、心身ともにリラックスできる時間を取ったり等、なるべく疲労やストレスを溜め込まないことも大切です。
また、帯状疱疹の発症リスクが高くなる50歳以上の人は、ワクチンで予防することも可能です。このワクチンにより、帯状疱疹の発症を予防できるほか、合併症やPHNといった後遺症につながりにくくなるといった効果が期待できます。
まとめ
帯状疱疹は、水ぼうそうになった経験がある人は誰でも発症する可能性がある病気です。ピリピリとした痛みを伴う、紅斑や小さな水ぶくれ等の症状が現れたら、なるべく早目に皮膚科を受診しましょう。
特に50歳以上の方は、重症化や合併症を引き起こすリスクもあるため、免疫力低下の予防を心がけるとともに、ワクチン接種も検討しましょう。また、若い人でも免疫力の低下によって発症する可能性があるため、規則正しい生活やバランスの良い食事を心がけることも大切です。

古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子
【経歴・資格・所属学会】
平成18年
北里大学医学部 卒業
平成18年
北里大学病院 初期研修医
平成20年
北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
北里大学病院 助教
令和2年
北里大学病院 診療講師
北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務
【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会
【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医