毛ジラミ炎
毛ジラミ炎とは「ケジラミ」と呼ばれるシラミの一種がヒトに吸血することでアレルギー反応を生じ、痒みをきたす疾患です。
ケジラミは吸血性節足動物で、直接的な接触によって陰毛に感染します。性行為時の接触感染が殆どですが、接触の多い母子間や、毛布やタオル等を媒体として間接的に感染し、眉毛やまつげに寄生することもあります。
ケジラミは他のシラミ類と共に激減していました。しかし、1990年代中頃から感染者数が増加しています。
毛ジラミ炎の原因
毛ジラミ炎の多くは、性行為時の接触感染によって発症します。感染した人と陰毛同士が接触することにより発症する事例が殆どですが、毛ジラミは肛門周辺の毛や胸毛、わき毛、太ももの毛等に寄生することもあり、これらに接触することで感染することもあります。寄生したケジラミは1週間でふ化し、約3週間で成虫になり1日に3~5個卵を産みます。
また、感染した人の使用した毛布やタオルから感染することもある為、感染が判明している場合には使い捨てのものを使用したり、定期的に洗濯したりすることが大切です。
毛ジラミ炎の症状
ケジラミに接触して1~2か月後に発症します。毛ジラミ炎の主な症状は、毛幹の根元に灰白色の点状物として見られ、痒みは比較的少ないです。また、下着に黒色の点状のシミが付着することもあります。このシミは、毛ジラミの血糞で、これも診断の参考になります。
これらの症状は男女共通です。
毛ジラミ炎の治療
毛ジラミ炎の症状が見られた場合には、放置せず受診することが大切です。病院では、患部を視診してケジラミや卵の有無を確認します。感染が確認されたら、ケジラミの寄生箇所を専用のフェノトリンシャンプー、もしくはパウダーで洗浄し、殺虫します。
シャンプーを使用する時は、約3〜5mlを陰毛に塗布し、約5分後に洗浄します。パウダーを使用する時は、ケジラミの寄生箇所へ適量を散布し、約1〜2時間後に洗い落とします。
卵にはあまり効果はありません。その為、卵がかえる期間を見込んで、3〜4日毎に3〜5回繰り返します。卵や虫体を除去するために毛を剃ることも行います。
毛ジラミ炎の予防
毛ジラミ炎は主に性行為で感染しますが、コンドームを使用しても予防はできません。その為、ケジラミに寄生されている人とのスキンシップや性行為等を控えることが大切です。
感染してから1~2月後に痒み等の症状が現れる為、毛ジラミ炎と診断された場合には、1~2月前に性的交渉があった相手のケジラミの寄生の有無を調べることをおすすめします。
また、家族内で感染している可能性もある為、可能な限り家族全員の感染状況も調べて下さい。

古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子
【経歴・資格・所属学会】
平成18年
北里大学医学部 卒業
平成18年
北里大学病院 初期研修医
平成20年
北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
北里大学病院 助教
令和2年
北里大学病院 診療講師
北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務
【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会
【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医