扁平苔癬
扁平苔癬(へんぺいたいせん)とは、皮膚や粘膜に慢性的に炎症が起こることで発症する病気のことです。40〜50歳代に多く見られます。
扁平苔癬の原因
扁平苔癬を発症する原因は解明されていません。しかし、これまでの発症データや研究から、体内の免疫細胞が異常を起こしてしまい、自分自身の皮膚や粘膜を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。
免疫細胞が自分自身を攻撃してしまう原因は不明ですが、C型肝炎ウイルスへの感染、薬剤(降圧剤・経口糖尿病薬・脳循環改善薬など)の副作用、歯科金属アレルギー等によって生じることがあります。なお、薬剤が原因で発症する扁平苔癬のことを「扁平苔癬型薬疹」と呼ぶこともあります。
ただし、前述の通り明確な原因が分かっていないため、誘因が特定出来ないケースも少なくありません。
扁平苔癬の症状
皮膚の色が赤色または紫色に変色し、皮膚の一部が盛り上がる等の症状が多く見られます。痒みを伴うこともあります。
皮膚の変色は前腕、手首や足首等に見られることが多くあります。また、人によっては頭や爪に皮膚症状が生じることもあり、頭に発症すると髪の毛が抜けやすくなります。爪に発症すると爪が変形したり、脱落することで強い痛みが生じたりすることもあります。
さらに、唇、口の中や性器周辺の粘膜にも症状が見られることがあります。粘膜に症状が生じると、多くの場合は粘膜が白く変色したり、潰瘍や口内炎ができたりします。特に性器に症状が現れると、他の部位に比べて痛みが強いことが多くあります。
扁平苔癬の治療と予防
扁平苔癬の治療
明確な原因が分かっていないことから、根治的な治療法はありませんが、誘因がある場合はまず中止、除去をします。例えば、C型肝炎ウイルスが原因と考えられる場合には抗ウイルス薬を使用し、金属アレルギーが誘因と考えられる場合には、その金属を除去します。さらに、薬剤の副作用が誘因と考えられる場合には、その薬剤の中止や変更の検討が必要です。しかし中止・除去後も症状が遷延することが多いため、ステロイドや免疫抑制剤を使用して症状の緩和を図ります。ステロイドや免疫抑制剤は、局所治療を目的に外用薬として使用されますが、十分な効果が見られない場合は内服することも検討されます。症状に伴って痒みが生じている場合には、抗ヒスタミン薬が使用されることもあります。
このように、誘因となっている状況に対する治療が必要となるため、まずは検査で誘因の解明を行なった上で、慎重に治療方針を決定していく必要があります。
扁平苔癬はがんが発生することもあります。そのため放置せず、定期的な診察を受ける必要があります。
扁平苔癬の予防
扁平苔癬は明確な原因が分かっていないことから、確実な予防法はありません。しかし、C型肝炎ウイルスへの感染、薬物の副作用、金属アレルギー等が原因と考えられるため、ウイルスへの感染を防ぐ、皮膚に異常が見られる場合は金属の使用は避ける等が予防に繋がると考えられます。
C型肝炎ウイルスは血液を介して感染するため、他人の血液が傷口や粘膜に付着しないように注意しましょう。
古江駅前すみれ皮ふ科 院長東儀 那津子
【経歴・資格・所属学会】
平成18年
北里大学医学部 卒業
平成18年
北里大学病院 初期研修医
平成20年
北里大学病院 皮膚科入局
平成23年
北里大学病院 助教
令和2年
北里大学病院 診療講師
北里大学病院のほか、大和市立病院、昭和大学病院藤が丘病院形成外科、
座間総合病院、武蔵村山病院、神奈川県内の皮膚科・美容皮膚科で勤務
【所属学会】
日本皮膚科学会
皮膚悪性腫瘍学会
日本美容皮膚科学会
日本アレルギー学会
【資格】
医学博士
日本皮膚科学会専門医・指導医
厚生労働省臨床研修指導医
ボトックスビスタ®︎認定医