糖尿病

糖尿病とは、血糖の濃度を一定に保つ「インスリン」というホルモンが十分に作用せず、血糖値が高い状態が慢性的に続いてしまう疾患です。

現代の日本において、糖尿病は「国民病」とも言われ、重要疾患のひとつとされています。近年では、生活習慣や社会環境の変化などから急速に患者数が増加しており、私たちもそのリスクについて知っておかなければなりません。

初期症状はほとんどありませんが、重症化すれば網膜症や腎症、神経障害といった三大合併症を引き起こすリスクがあるほか、末期になると失明や足や手の切断、透析治療が必要になることもあります。一度発症すると完治することはないため、発症予防や重症化予防が重要となります。近年では、悪性腫瘍(肺癌、肝癌、膵癌など)、感染症、心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管障害で命を落とすことが糖尿病の三大死因として知られています。糖尿病では発がん率が約2割増加し、特に消化器系では、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、大腸癌の順にリスクが高いことが報告されています。糖尿病は、全身疾患でありすべての臓器や病気に影響を与えます。運動療法・食事療法・薬物療法を組み合わせて、トータルケアしましょう。

今回は、糖尿病の原因をはじめ、症状や治療方法などについて解説します。

糖尿病の原因

糖は、私たちの体が活動するために欠かせないエネルギー源です。この糖を細胞に取り込んでエネルギーとして使うには、膵臓から作り出される「インスリン」というホルモンが必要になります。通常、食事をしたときに血糖値が一時的に上昇しますが、インスリンが分泌されることで血糖が細胞に取り込まれ、血液中の糖の濃度を正常値に戻してくれます。

しかし、このインスリンの分泌量が低下している場合や、働きが弱くなっている場合には、血液に流れる糖をうまく体内に取り込めず、血糖値が高くなってしまいます。これが糖尿病の原因です。

なお、糖尿病の病型は大きく「1型糖尿病」「2型糖尿病」に分類されています。

1型糖尿病の原因

1型糖尿病では、膵臓からインスリンがほとんど分泌されなくなることによって糖尿病が発症します。糖尿病のなかでは発症率が少ない病型ですが、子どもや若い人に発症するケースが多く見られるのが特徴です。

この1型糖尿病は、原因不明の特発性や、感染症などによる免疫不全によってインスリンを作る膵臓の細胞が破壊されることが原因と考えられています。体内でインスリンを生成できないため、インスリンを補うための注射を打たなければなりません。

2型糖尿病の原因

2型糖尿病の場合は、膵臓の働きが弱まりインスリンの分泌量が低下する、または正常に働きにくくなることで、血糖値が上昇して糖尿病が発症します。糖尿病患者の90%以上がこの2型糖尿病となっており、40歳を過ぎた中高年に発症が多く見られるのが特徴です。

2型糖尿病が発症する原因はさまざまですが、食べ過ぎや飲みすぎ、運動不足、ストレスといった生活習慣と遺伝が大きく関係していると考えられています。とくに家族の中に糖尿病患者がいる場合には、日々の生活習慣に気を付けなければなりません。

糖尿病の症状

糖尿病の初期では、自覚症状はほとんどありません。しかし、糖尿病が進行するとさまざまな症状が現れ始めます。

「1型糖尿病」と「2型糖尿病」の主な症状は以下のとおりです。

1型糖尿病の症状

1型糖尿病で見られる主な症状には、のどの渇きや頻尿があります。発症までのスピードについては、3つのタイプがあります。

発症のスピード
  1. 3ヶ月以内に症状が悪化する「急性発症型」
  2. インスリン分泌が徐々に減少し、ゆるやかに症状が現れる「緩徐進行型」
  3. 1週間以内に急激に悪化する「激症型」

糖尿病がさらに悪化すると、体内に栄養を取り込めず体重が減少する、全身の倦怠感や嘔吐などの症状が現れることもあります。こうした症状は危険性が高いため、早急な治療が必要です。

2型糖尿病の症状

2型糖尿病についても初期症状はほとんどないため、高血糖の症状が急に現れて糖尿病が判明する人や、網膜症や腎症などの合併症の症状が現れて糖尿病と診断される人もいます。

ある程度進行すると、のどの渇きや頻尿、倦怠感、体重の減少などの症状が現れます。さらに悪化して高血糖が慢性化した場合、以下のような合併症を引き起こしたり、意識障害に至ったりするケースもあるため非常に危険です。

合併症のリスクと症状
  • 糖尿病網膜症:視力の低下、失明
  • 糖尿病腎症:腎機能の低下、腎不全、むくみ、人工透析
  • 糖尿病神経障害:両足のしびれや痛み、立ちくらみ、発汗異常
  • 心筋梗塞:心停止
  • 歯周病:歯の痛み、歯の抜け
  • 足えそ:足の皮膚の腫れ、足の腐り

合併症が引き起こされると、失明や足の切断など重大なリスクにつながる可能性があるため、定期的な診断をはじめ、異変を感じた際にはすみやかに医師に相談することが重要です。

糖尿病の治療

糖尿病は、一度発症してしまうと完治することはありません。治療の基本となるのは、重症化を防ぎ、合併症を予防することです。具体的には、血糖値を下げるための飲み薬の服用やインスリン注射などの薬物療法が挙げられます。

インスリンの欠如によって引き起こされる「1型糖尿病」では、インスリン注射によって血糖値を正常値に保つための治療を行います。

一方、生活習慣や遺伝によって引き起こされる「2型糖尿病」では、まずは食事療法と運動療法によって生活習慣を改善することが主な治療です。

食事療法では、決められたエネルギーの範囲内で、三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)やビタミン、ミネラルを摂取し、栄養バランスのよい食事を取ります。運動療法では、ウォーキングやストレッチ、ジョギングなどの有酸素運動を中心に行います。スクワットや筋トレなどのレジスタンス運動も組み合わせて行っていただくとより良いとされています。

それでも糖尿病の改善がない場合は、薬物療法を追加します。糖尿病の治療薬には大きく分けて「飲み薬」と「注射」があり、病気の状態や血糖値の状況によって使う薬剤が異なります。飲み薬には、インスリンの分泌や効果を改善するものや、糖の分解・吸収を遅らせるものなどあり、血糖値をコントロールすることで悪化を防ぎます。

重大な合併症を防ぐためにも、薬物療法や生活習慣の改善を続けながら、糖尿病の治療と付き合っていくことが大切です。

糖尿病の予防

糖尿病は、初めのうちは自覚症状がほとんどないため、気付いたときにはすでに症状が悪化しているケースも少なくありません。

進行すると重大な病気や命にかかわる合併症を引き起こすリスクもあるため、定期的な検診や血糖検査を行うなど、日頃の自己管理が欠かせません。のどの渇きや頻尿などの症状が現れた場合には、すみやかに医師による診断を受けましょう。

また、中高年から発症しやすい2型糖尿病では、食事や運動などの生活習慣に気を配ることも大切です。栄養バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけて、糖尿病を予防しましょう。

この記事の監修

兵庫内科・肝臓糖尿病クリニック 院長兵庫 秀幸

はじめまして。このたび、エキシティ広島の横・カープロード沿いのカープロードクリニックビル3階に兵庫内科・肝臓糖尿病クリニック~Life Care Clinic Hiroshima~を開院させて頂くことになりました。
2021年は医師になって30年目になります。この間、肝臓における代謝(コレステロール脂質代謝・糖質代謝、脂肪肝・炎症・線維化・発癌など)研究を行い、脂肪肝から肝炎、肝硬変、肝がんへ至るNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)を中心に基礎・臨床研究を行ってきました。肥満・内臓肥満・筋肉低下などが引き起こす高血圧・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症・脂肪肝など生活習慣病を統括管理することが肝臓を守り全身を守り、心筋梗塞・脳卒中・がんなどの致死的病気の予防になると思います。
そこで当クリニックでは、学術的実証に基づいて1に運動2に食事3に薬の基本方針で各種疾患の統括管理を行いたいと思います。運動・栄養・アンチエイジング・抗ガン対策・健康長寿のため、最新の医療情報をお届けする勉強会・講習会を行い最低限の薬でピンピンコロリを目指します。また、地域の皆様のかかりつけ医として何でもお気軽にご相談ください。

【経歴・資格・所属学会】

【経歴】
・1986年 修道高校卒業
・1992年 広島大学医学部卒業
・1992年 静岡県立総合病院(内科・外科・麻酔科)
・1996年 広島大学医学部付属病院 第一内科(現消化器代謝内科)
・1997年 広島大学大学院
・2000年 アルバート・アインシュタイン医科大学 肝臓研究センター
・2002年 広島大学病院(消化器代謝内科診療講師、総合診療科助教)
・2015年 JA広島総合病院(肝臓内科主任部長、消化器内科部長)

【資格・学会】
・医学博士
・日本内科学会専門医・指導医
・日本消化器病学会専門医・指導医・評議員
・日本消化器内視鏡学会認定医
・日本肝臓学会専門医・西部肝評議員
・日本肥満学会
・日本糖尿病学会
・日本抗加齢医学会
・佐賀大学医学部臨床教授
・しまなみ奨学財団評議員→杜の都医学振興財団評議員
・AGE測定推進協会学術アドバイザー・認定講師
・J-SMARC(日本医療戦略研究センター)理事
・FeliMedix(株) 外部取締役
・広島市医師会看護専門学校講師

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