糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは糖尿病の合併症の一種で、急に尿が出なくなる等の症状が現れます。全透析患者のうち約45%は、糖尿病性腎症が原因です。
症状や尿タンパク質またはアルブミンの数値により第1期から第5期に分けられます。
糖尿病性腎症の原因
糖尿病性腎症は、糖尿病を患っている方において血糖値が高い状態が続くことが原因で発症します。糖尿病を患っている状態で血糖値が高い状態が続くと、全身で動脈硬化が見られるようになります。並行して毛細血管の塊である腎臓の糸球体でも細かな血管が壊れ、網目が破れたり詰まったりして老廃物を濾過できなくなります。これにより糖尿病性腎症を発症すると考えられていますが、明確な原因は現時点では判明していません。
糖尿病性腎症の症状
糖尿病性腎症は、前述の通り第1期から第5期に分けられ、それぞれで症状が異なります。
最も軽症である第1期は尿タンパク質あるいはアルブミンの数値は30未満と正常で、自覚症状はほとんどありません。数値が30〜299と微量のアルブミン量が確認されると第2期に分類されます。第2期も第1期同様、自覚症状が出ることはほとんどありません。第1期と第2期は自覚症状がないことから発症を疑わず、尿検査により発覚するケースが多くあります。
第3期になると数値は300以上になって顕性アルブミン尿になるか、0.5以上の持続性タンパク尿になります。第3期まで進行するとむくみ、息切れ、食欲不振、継続的な満腹感等の症状が現れます。
腎機能が30未満の状態になると第4期に、透析療養中の方は第5期にそれぞれ分類されます。第4期と第5期では顔色が悪い、吐き気や嘔吐、筋肉が硬直する、手の痺れや痛み、腹痛、発熱等の症状が見られます。
第3期まで進行すると完治はほぼ不可能です。そのため第2期以前に発見し、早期に治療を開始することが大切です。
糖尿病性腎症の治療法
比較的軽症である第1期では血糖コントロールが行われます。第2期と第3期では、より厳格な血糖コントロールが必要です。血糖コントロールでは低カロリー食や減塩食といった食事療法と、運動療法が中心に行われます。また、糖尿病性腎症は糖尿病の合併症のため、並行して糖尿病薬の服用およびインスリンの注射といった糖尿病の治療も行われます。
第4期まで進行すると、降圧治療、低タンパク食、透析療法導入等の治療が行われます。食事療法ではタンパク質の摂取制限が必須です。血液中のクレアチニンの量が増えている場合には透析療法の準備をしたり、高血圧を伴う場合には降圧薬の使用も検討されます。
第5期は透析治療中の患者を指すため、引き続き透析治療が行われます。透析治療による十分な効果が見られない場合には、腎移植が検討されます。
糖尿病性腎症の予防
糖尿病性腎症は糖尿病の合併症です。そのため、糖尿病を予防することが、糖尿病性腎症の予防に繋がります。
糖尿病を予防するためには規則正しい生活を送ることが大切です。栄養バランスの取れた食事、適度な運動、十分な休養を取るように心掛けましょう。また、ストレスにより発症することもあるため、ストレスを溜めすぎないことも予防に繋がるほか、喫煙やアルコールの過剰摂取も避けて下さい。
糖尿病性腎症を発症した場合には、早期に発見し治療をすることが重要です。第3期まで進行すると完治はほぼ不可能と言われています。しかし、第3期まで進行しないと自覚症状が出ないことが多く、発見が遅れることも少なくありません。糖尿病を患っている方は、定期的に尿検査をして早期発見できるようにすることが大切です。糖尿病性腎症が疑われる症状が少しでも見られた場合には、直ちに病院を受診し適切な治療を受けて下さい。
兵庫内科・肝臓糖尿病クリニック 院長兵庫 秀幸
【経歴・資格・所属学会】
・1986年 修道高校卒業
・1992年 広島大学医学部卒業
・1992年 静岡県立総合病院(内科・外科・麻酔科)
・1996年 広島大学医学部付属病院 第一内科(現消化器代謝内科)
・1997年 広島大学大学院
・2000年 アルバート・アインシュタイン医科大学 肝臓研究センター
・2002年 広島大学病院(消化器代謝内科診療講師、総合診療科助教)
・2015年 JA広島総合病院(肝臓内科主任部長、消化器内科部長)
【資格・学会】
・医学博士
・日本内科学会専門医・指導医
・日本消化器病学会専門医・指導医・評議員
・日本消化器内視鏡学会認定医
・日本肝臓学会専門医・西部肝評議員
・日本肥満学会
・日本糖尿病学会
・日本抗加齢医学会
・佐賀大学医学部臨床教授
・しまなみ奨学財団評議員→杜の都医学振興財団評議員
・AGE測定推進協会学術アドバイザー・認定講師
・J-SMARC(日本医療戦略研究センター)理事
・FeliMedix(株) 外部取締役
・広島市医師会看護専門学校講師