膣トリコモナス症
腟トリコモナス原虫は膣や膣内以外の尿道やバルトリン腺、スキーン腺などにも定着することがあり、膣トリコモナス症といわれます。膣に限局した感染の場合には「トリコモナス膣炎」とも呼ばれています。
男女ともに感染し、女性の場合は陰部の痒みや排尿痛等の症状が、男性の場合は尿道の痒みといった症状が表れます。
性感染症の多くは若者に見られますが、膣トリコモナス症は中年世代が発症することも多く、感染者の年齢層が幅広いという特徴があります。性行為以外から感染することもある為、小児が発症することもあります。
膣トリコモナス症の原因
腟トリコモナス原虫の感染経路は、性行為のこともありますが、性行為以外の感染経路(浴槽や便器等)を介して性交経験のない人でも発症する可能性があります。
膣トリコモナス症は、パートナー間で感染を繰り返す、ピンポン感染を起こしやすい感染症です。1人だけが治療をして完治しても、トリコモナスが完治していないパートナーと性行為を行うと、再び感染する恐れがあります。どちらも完治するまでは性行為を避けることが必要です。
また、垂直感染も稀に見られます。垂直感染とは、トリコモナスに感染している母体から、胎児や新生児へと感染することです。
膣トリコモナス症の症状
膣トリコモナス原虫の感染から発症までは約10日間の潜伏期間があります。潜伏期間経過後、おりものの異常、膣壁発赤、子宮腟部の溢血性点状出血等の症状が表れます。
おりものは、黄白色で泡立ったものが見られることが特徴です。
また、腟壁発赤とは、腟壁の粘膜の赤みが通常よりも増す症状です。子宮腟部の溢血性点状出血とは、腟に点状や斑状の出血が見られる状態のことです。
膣トリコモナス症は、感染しても約10〜20%の方は症状が表れません。そのため感染に気付かず、パートナーや家族に移してしまうことがある為、注意が必要です。
膣トリコモナス症の治療
主な治療は経口薬による薬物療法です。
5-ニトロイミダゾール系の薬剤が使用されることが多く、メトロニダゾールの使用が基本です。メトロニダゾールの投与は10日程度で、メトロニダゾールの経口薬250mgを1日2錠服用し続けます。
効果が十分でない場合には、1週間程度の追加投与が検討されます。
性行為により感染していた場合は、パートナーも原則として同様の治療を受けなければなりません。
膣トリコモナス症の予防
膣トリコモナス症を予防する為には、発症時の性行為を避けることが有効です。膣トリコモナス症は、発症中に性行為をするとお互いに再発し続ける危険があります。
また、発症中は感染を広めないことも大切です。性行為を避けることはもちろん、タオルや食器の共用も避けることが予防に繋がります。
かいたいちウィメンズクリニック 院長児玉 一郎
【経歴・資格・所属学会】
広島市立青崎小学校卒業
広島学院中学校卒業
広島学院高等学校卒業
広島大学医学部卒業
【職歴】
1994〜1995
JR西日本広島鉄道病院産婦人科
1995〜1995
広島大学病院産科婦人科
1995〜1996
JA吉田総合病院産婦人科
1996〜2006
広島大学病院産科婦人科
2006〜2007
医療法人あかね会土谷総合病院産婦人科
2007〜2022
医療法人慈徳会真田病院産婦人科
【資格】
医学博士
日本産科婦人科学会認定医
母体保護法指定医
日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医師
【所属学会】
日本産科婦人科学会
日本女性医学学会
日本産婦人科乳腺医学会
日本乳癌検診学会