解離性障害(ヒステリー)
ヒステリーは、幼少期のトラウマや日常生活のストレス等によって引き起こされる多種多様な症状を言います。ヒステリーとは古代ギリシャ語で子宮を意味する病名ですが、最近は医学の中ではこの用語は病名として使用されなくなっています。
現在は、解離性障害や身体表現障害といった病名がヒステリーに該当します。下に書いたような多種多様な症状が出現し、慢性化してしまうことがあります。
解離性障害の原因
幼少期の虐待や事故等の衝撃的な体験、日常生活でのストレス等、心に大きなダメージを受けることにより、自分の意志とは関係なく無意識的に発症すると言われています。今の状況や感情を受け入れられない等、自分の中で精神的な葛藤が起こった結果、自己を防衛する為に発症するとされていることから、精神障害に分類されています。
統計的には10〜35歳くらいまでの女性に多いとされていますが、幼少期に突如として発症することもあります。突発性のものから慢性化するものまで、症状の現れ方は多岐にわたります。
解離性障害の症状
解離性障害の主な症状は、以下の通りです。
- 一時的に記憶がなくなる「解離性健忘」
- 自分を見失い突然放浪する「解離性遁走」
- 体が動かなくなったり言葉が出なくなったりする「解離性混迷」
- 自分が自分であるという実感が薄くなり、外から眺めているように感じる「離人症性障害」
- 自分の中に複数の人格が混在する、多重人格と呼ばれる「解離性同一性障害」
- 他者に憑りつかれたように人格が変わる「憑依障害」
- 受け答えが曖昧になり、的外れな話をする「ガンザー症候群」
- その他、筋力低下が無いのに体が動かなくなる(失立失歩)、発声機能が正常なのに声が出なくなる(失声)、視覚や聴覚や皮膚の感覚がなくなる、手足が震えたりするてんかん様の発作症状等が見られます。
- 解離性障害の中でも運動機能の障害を「転換性障害」と呼ぶこともあります。
いずれの症状にしても、一過性で治まるケースもあれば、再発したり慢性化したりするケースもあります。
解離性障害の予防と治療
解離性障害は、精神的ストレスが大きく関係しているため、精神科での治療を中心に行います。精神科医や心理士(臨床心理士、公認心理師)によるカウンセリングの中で、具体的な症状を観察することから開始し、認知行動療法や力動的精神療法や睡眠療法といった個々のケースに適した治療を行います。同時に、MRI検査や脳波検査や血液検査等を行うことで身体的原因の有無を確認し、身体疾患を除外することも重要です。
解離性障害は、あくまで精神的ストレスが大きな原因となる為、直接的に有効な薬はありません。しかし、補助的治療として抗うつ薬等の薬物治療が用いられることもあります。いずれにしても、解離性障害の重症化を防ぐには早期発見、早期治療が大切です。早めに医師や心理士のカウンセリングを受けることや、周囲がいち早く変化に気付くことも解離性障害の症状悪化の予防に繋がります。
よこがわ駅前クリニック 医院長加賀谷 有行
【経歴・資格・所属学会】
平成4年3月:広島大学大学院医学系研究科を修了
平成7年6月:広島大学医学部神経精神医科学講座助手・講師
平成14年4月:広島国際大学教授、学生相談室長、保健室長、学生部長。
平成28年9月:初代研究所所長 小沼杏坪先生の後任として、医療法人せのがわKONUMA記念依存とこころの研究所において、研究や啓発に従事している。
博士(医学) 精神科専門医 精神保健指定医 産業医