こむらがえり
こむらがえりとは、ふくらはぎの筋肉が痙攣を起こしている状態を指し、よく「足がつる」などと表現されます。医学的には「有痛性筋痙攣」という名称で知られています。「こむら(腓)」とはふくらはぎを指します。多くはふくらはぎに起こりますが、足裏や太ももなどにも起こります。
電解質異常または電解質が不足することで発症する場合が多いですが、稀に原因がわからないこともあります。
誰にでも起こり得る可能性はあり、ほとんどの場合は自然に回復しますが、何らかの病気の症状として現れることもあるため、なかなか治らない場合には早めに病院を受診してください。
こむらがえりの原因
こむらがえりの多くは、血液中のミネラルイオンの異常または不足が原因で発症します。ミネラルイオンはカリウムやカルシウム、マグネシウムなどに含まれる物質です。特にマグネシウムが原因となることが多く、食事から十分な量のマグネシウムが摂取できていなかったり、下痢や嘔吐、発熱によるマグネシウムの消費により発症するケースが多く見られます。脱水や局所の冷えは末梢循環不全を起こし、マグネシウムの不足を促進させますが、末梢循環不全がこむらがえりの発症に直接影響することはなく、こむらがえりの症状の悪化に影響します。
本来、マグネシウムは収縮した筋肉をゆるめる働きをします。そのため十分な量のマグネシウムが無いと、筋肉が常に硬直した状態になり痙攣するのです。
こむらがえりは病気の症状として現れることもあります。例えば透析中の腎不全、糖尿病、肝硬変、熱中症、メタボリックシンドロームなどです。どの病気も重症化を防ぐ必要があります。慢性的に続く場合は早めに病院を受診し、適切な治療を受けましょう。また妊娠期間中にこむら返りを発症する方もいらっしゃいます。
こむらがえりの原因として下肢静脈瘤も考えられます。「下肢静脈瘤」とは、足から心臓に血液を送る静脈の血流が滞ることで血管に負担がかかり、静脈の逆流防止弁が壊れてしまう疾患です。下肢静脈瘤の初期症状として現れることが多く、重症化するとこむらがえりは発症しなくなります。
また、原因が特定できないこともあります。この場合、局所の筋肉の使いすぎにより過収縮を起こしている状態で、こむらがえりと似た症状の別の病気ということも考えられます。
こむらがえりの症状
こむらがえりの症状のほとんどは、筋肉の収縮に伴う激しい痛みです。こむらがえりは自分の意思とは関係なく、筋肉が収縮されるため激しい痛みが生じます。ふくらはぎに症状が見られることが多いですが、全身に生じることもあり、全身に症状が出ることを「全身のこむらがえり」ということもあります。
激しい運動によりマグネシウムが体内に排出されることで発症するこむらがえりは、運動中または運動直後に生じることがあります。病気に関連して発症している場合は、夜間の就寝中に繰り返し生じることも多いため、この時間によく発症する方は特に注意が必要です。ただし、就寝中はつま先が伸びるためふくらはぎの筋肉が縮んだ状態になり、運動神経が刺激を受けると筋肉を収縮させやすくなります。これによりこむらがえりを発症することもあるため、夜間に症状が出たからといって、必ずしも病気を発症しているというわけではありません。
こむらがえりの治療と予防
こむらがえりの治療
こむらがえりの症状が生じた場合には、まず収縮した筋肉をゆっくり伸ばします。収縮した筋肉が冷えたり脱水すると症状が悪化する危険があるため、適度に水分補給をしながら、局所を暖めて血流をよくするマッサージなどで筋肉を和らげます。こむらがえりの多くは、この処置で回復します。
しかしマッサージなどで筋肉を伸ばしても回復が見られない場合には、薬物療法を行うことがあります。薬物療法では、末梢性筋弛緩剤や芍薬甘草湯という漢方が処方されることが多いです。しかし薬物療法は高血圧や低カリウム血症などの偽アルドステロン症のリスクがあるため、高血圧患者や心疾患がある場合は行えません。
何らかの病気が原因で発症している場合には、症状を抑えるマッサージなどを行いながら、原因となっている病気の治療をします。
こむらがえりの予防
こむらがえりは運動時に見られることが多いです。そのため運動をする前には、ストレッチをして筋肉を緩めてから始めましょう。また運動中などの発汗時には水分と電解質が不足しがちです。適度に休憩をしながら、水分と電解質の補給をこまめにしてください。こむらがえりを防ぐために電解質を補給する際には、特にマグネシウム、カリウム、ナトリウムなどを積極的に補給することが大切です。
運動時以外の日常生活においても、マグネシウムの摂取を心掛けることが予防につながります。日常の食事ではマグネシウムの多い食材を意識して取ったり、栄養機能食品やサプリメントなどを活用し、マグネシウムが不足しないよう注意しましょう。特に食事の際には、ビタミンB1が多く含まれている肉や豆類、緑黄色野菜、牛乳などを積極的に食べることで発症のリスクが低くなります。
また、過度なダイエットも電解質のバランスが崩れてこむらがえりの原因となります。ダイエットの程度には十分に注意し、栄養が偏らないように意識してください。
山根クリニック 院長山根 基
【経歴・資格・所属学会】
医学博士
【認定医】
日本医師会認定
健康スポーツ医
日本医師会認定 産業医
【所属学会】
日本外科学会
日本乳癌学会
日本消化器外科学会
日本内視鏡学会
日本臨床内科学会
日本大腸肛門学会