網膜色素変性症

網膜色素変性症は、目の中にある網膜といわれる部位の細胞に異常が生じ、暗いところで物が見えにくくなったり、視界が狭くなったりする病気です。厚生労働省の難病指定を受けている病気であり、日本国内における発症頻度は4,000〜8,000人に1人と言われています。遺伝する可能性がある病気であり、約半数の患者さんは親族に同じ病気の方がいます。

網膜色素変性症の原因

網膜色素変性症の原因は、遺伝子の異常によるものと考えられており、現在までに40種類以上の原因遺伝子が見つかっています 。それらの遺伝子の異常が網膜にある視細胞(物を見るために非常に重要な細胞)を障害することにより、網膜色素変性症が引き起こされます。

網膜色素変性症の症状

程度の差はありますが、ほとんどの場合、両方の目に症状が出てきます。初期の症状として、夜盲(暗い場所で物の見え方が悪くなる)を生じることが多く、夕方に見えにくくなったり、運転中にトンネルに入ると見えない等の症状が出てきます。病状が進行してくると、視界が狭くなり、見えない範囲が出てきたり、物とぶつかりやすくなります。さらに進行すると視力が低下してきます。また、霞んで見えるようになったり、まぶしさを強く感じるようになることもあります。これらの症状は急速に進行することはなく、数年から数十年かけてゆっくり進行していきます。また、症状の出方には個人差が大きいため、必ず失明する病気ではなく、80歳を超えても実用的な視力を保っている方もいます。

網膜色素変性症の治療と予防

網膜色素変性症の治療

網膜の機能を元に戻したり、病気の進行を止めるような治療法はまだありません。症状の進行を緩やかにするため、ベータカロテン、ビタミンA、循環改善薬といった内服治療がありますが、実際に効果がどれ程あるかどうかはまだ分かっていません。最近では、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜などの治療法の研究が進んできていますので、将来はこのような治療を受けられるようになることが期待されています。

網膜色素変性症は白内障や黄斑浮腫などの他の病気を合併することがあり、それにより見え方がさらに悪化する場合があります。そのような合併症は治療できる場合がありますので、定期的な検診を受けることが大切です。

網膜色素変性症の予防

現時点では網膜色素変性症を予防することはできません。確実な治療法もないため、自身の病状の進行速度を把握し、将来に向けて備えておくことが大切です。日常生活をサポートするために、まぶしさには遮光眼鏡、視力低下・視野狭窄には拡大読書器やルーペ、パソコンやタブレットの音読ソフトなどの機器を利用する方法があります。また、白杖の使い方を学び、周囲の安全の確保や歩行に必要な情報収集ができるようになる技術を習得することも有用です。制度面では、視覚障害の程度に応じて、各種の福祉制度がありますので、それらを利用することで社会的なサポートを受けることもできます。何か困るようなことがあれば、かかりつけの先生や役所でご相談ください。

この記事の監修

こばやし眼科 院長小林 賢

尾道市天満町にある「こばやし眼科」院長の小林賢と申します。
これまでに広島大学病院をはじめ、JA尾道総合病院、中電病院、堀病院に勤務し、結膜炎などの日常的な目の病気から、白内障手術、網膜硝子体手術、緑内障手術などの高度な治療にも携わりながら、自己研鑽に努めてまいりました。JA尾道総合病院では眼科部長として長年勤務し、尾三地域の眼科診療に深く関わり、地域医療の重要性を深く考えてきました。今までの経験をもとに、個人のクリニックでも総合病院と同等の治療を行うことを目標とし、地域の皆様に信頼される温かい診療を目指していきたいと思います。

【経歴・資格・所属学会】

【資格】
日本眼科学会専門医・PDT認定医・ボツリヌス治療認定医

【所属学会】
日本眼科学会・日本眼科手術学会・日本網膜硝子体学会・日本緑内障学会

【経歴】
2003年広島大学医学部医学科卒業 広島大学病院眼科
2004年福山医療センター眼科
2005年広島大学病院眼科
2006年中電病院眼科
2009年JA尾道総合病院眼科 部長
2013年広島大学病院眼科
2015年堀病院眼科 副院長

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