捻挫
捻挫とは、外力が掛かり靱帯や関節包等の軟部組織や軟骨が損傷することです。損傷とは、靱帯のゆるみや一部もしくは完全な断裂を指し、骨折や脱臼とは異なります。
捻挫の原因
関節に強い外力が掛かり、本来の運動とは異なった動きが生じることで発症します。
足関節を内側にひねる捻挫は「足関節内反捻挫」とも呼ばれます。足関節内反捻挫は、捻挫の原因として最も多く、スポーツ時や日常生活等、様々な場面で発症します。尚、足関節内反捻挫は、外側靱帯のうち前距腓靱帯が引き伸ばされたり、一部が切れたりすることで発症します。膝関節捻挫はスポーツ活動中に発症することが多く、ジャンプやターン、タックルを受けても発症することがあります。主な原因は内側側副靱帯損傷で、膝関節の外側から内側に向かって力が掛かることです。また、肩の捻挫である肩鎖関節の捻挫も、スポーツ中に発症しやすい他、転落や転倒、交通事故で肩の外側を強打し発症することもあります。交通事故による捻挫として多い原因が、首の捻挫である頚椎捻挫です。「むち打ち損傷」とも言われる外傷性頚部症候群の一つで、筋肉を緊張させて首の損傷を避けることが原因で発症します。
捻挫の症状
主な症状は患部の腫れと痛みです。靭帯の損傷が大きければ大きいほど、腫れと痛みも強くなります。ただし、膝関節の一つである前十字靱帯は、損傷しても痛みが出ることが少なく、保存療法では完治しにくいため必ず病院を受診して下さい。通常、痛みや腫れのほとんどは受傷してから数週間~数か月で和らぎます。しかし、運動時には痛みや不安定性を感じることが多いため、無理に運動をすると慢性的な痛みに発展したり、変形性関節症を発症したりすることがあります。また、関節の損傷箇所によっては、痛みが重症化したり内出血等の症状も見られます。
捻挫の治療と予防
捻挫の治療
捻挫の治療は、手術を行わない保存療法が主体です。ギプスや三角巾等で患部を固定し、痛みや腫れがおさまった時点から運動の訓練を開始します。一方で不安定性の残る足関節捻挫や、膝関節内の前十字靭帯を損傷している等重症の場合は、靱帯を再建する手術を行うことがあります。術後、アスリートの方等でスポーツ復帰を希望する場合は、アスレティックリハビリテーションという専門的なリハビリテーションを行います。尚、捻挫を疑う症状が見られる場合には、速やかに適切な応急処置を行うことが大切です。適切な応急処置とは「RICE処置」と呼ばれる処置です。Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったもので、具体的な処置は下記の通りです。
- Rest(安静)
運動を速やかに中止し、医療用テープや三角巾等を使って患部を固定する - Ice(冷却)
患部を、タオルやハンカチで包んだ氷のうや冷湿布で冷やす - Compression(圧迫)
包帯やスポンジで、皮膚・爪が変色しない程度の強さで患部を圧迫する - Elevation(挙上)
クッション等で、患部を心臓よりも高い位置に上げた状態を維持する
捻挫の予防
捻挫を予防するためには、関節に無理な力が掛からないようにする必要があります。例えばスポーツをする前には、ストレッチや準備運動をし、手首や足首をしっかり回しておきましょう。捻挫を予防するストレッチとして効果的なのが「動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)」です。全身を力強く動かしながら関節や筋肉を伸ばしていくストレッチで、ラジオ体操も動的ストレッチの一つです。ただし、反動を大きくしすぎると関節を痛めて逆効果となるため、関節を伸ばした時に気持ち良いと感じる程度で行って下さい。また、捻挫しやすい場所を予め保護することも予防になります。膝や足首にサポーターをする、指にテーピングを巻く等、捻挫しやすい部位を安定させて保護しましょう。日常生活においては、靴や姿勢に注意をすることが捻挫の予防に繋がります。靴は足のサイズに合ったものを選び、なるべくかかとの低い安定したものを履きましょう。また、姿勢が悪いと背骨が曲がり、体のバランスが不安定になり転倒しやすくなるため、捻挫のリスクが高くなります。尚、捻挫を発症し、腫れが酷い・内出血が見られる・痛みが治まらない場合には、重症化を防ぐために速やかに病院を受診して下さい。
山根クリニック 院長山根 基
【経歴・資格・所属学会】
医学博士
【認定医】
日本医師会認定
健康スポーツ医
日本医師会認定 産業医
【所属学会】
日本外科学会
日本乳癌学会
日本消化器外科学会
日本内視鏡学会
日本臨床内科学会
日本大腸肛門学会