月経前症候群(PMS)
月経前症候群(premenstrual syndrome; PMS)とは、月経前の3~10日の黄体期の間に続く、精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに症状が軽快または消失することです。
米国においての月経前不快気分障害(premenstrual dyspholic disorder; PMDD)は,米国精神医学会のDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)で「抑うつ障害群」に分類されます。臨床上,PMDDは抑うつなどの精神症状を伴うPMSの最重症型に位置づけられ、日本では生殖年齢女性の70~80%が月経前に何らかの心身の変調を自覚し、生殖年齢女性の6.5%が医学的介入の必要な中等症以上のPMSまたはPMDDと推定されています。
月経前症候群の原因
月経前症候群を発症する明確な原因は分かっていませんが、女性ホルモンの変動が関わっていることは間違いないと考えられています。
排卵から月経までの期間である黄体期には、エストロゲンという卵胞ホルモンに加えてプロゲステロンという黄体ホルモンが多く分泌されます。この黄体期の後半に、何らかの原因で卵胞ホルモンと黄体ホルモンが不安定に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こして月経前症候群を発症するのでは、と考えられています。脳内のホルモンや神経伝達物質はストレス等の影響を受け易いため、様々な要因が関係していると考えられていますが、まだ詳しく因果関係は解明されていません。
月経前症候群の症状と診断
PMSの診断には米国産科婦人科学会の診断が用いられます。一般に月経前5日間に、精神的症状または肉体的症状が起きます。
精神的症状は、抑うつ、怒り、いらだち、不安、混乱、社会的引きこもり、集中力の低下、睡眠障害、過食、目眩、倦怠感等です。肉体的症状は、乳房の張り、腹部の張り、頭痛、関節痛、筋肉痛、体重増加、むくみ、腰痛等です。
PMDDの診断には米国精神医学会の診断基準が用いられますが、かなり複雑なので、産婦人科専門医などに委ねるのが良いでしょう。
月経前症候群の治療と予防
月経前症候群の治療
診断がついたら,まずカウンセリングや生活指導,運動療法を行います。症状日記はそのまま継続させることで,治療への積極的な関与を引き出えます。また症状に応じて利尿剤(スピロノラクトン)や鎮痛剤が使用されますが,日本では体質や症状に適した漢方薬を使用します。当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、桃核承気湯等が使われることが多くあります。
経口避妊剤(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は,身体症状が主体のPMSに用いられるが、精神症状には有効ではありません(ドロスピレノン・エチニルエストラジオール錠はPMDDに有効性が認められていますが日本では保険適用外です)。
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)は,欧米では治療の第一選択薬です(日本では保険適用外です)が、精神症状が主体の場合に使用され、黄体期のみの間歇投与法でも治療効果があります。さらに、うつ病薬と比較しても即効性があり、低用量で治療効果を認めます。
月経前症候群の予防
月経前症候群は、原因がわかっていないため確実な予防法はありません。しかし、女性ホルモンが関係していることは間違いないため、規則正しい生活を送りホルモンが乱れないようにすることが予防にある程度有効と考えられます。
ひらた女性クリニック 院長平田 英司
【経歴・資格・所属学会】
広島県呉市出身、幼少期は福山市育ち
広島市立袋町小学校, 広島大学附属中・高等学校 出身
長崎大学医学部医学科 卒業
広島大学産科婦人科学教室 入局
以後、JA尾道総合病院、呉共済病院、公立御調病院、四国がんセンター、
広島大学病院(診療講師、統括医長、医局長)、東広島医療センター(医長)に着任
【資格】
医師免許
学位(甲、広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 外科系専攻)
日本産科婦人科学会専門医・指導医
婦人科腫瘍専門医
細胞診専門医
母体保護法指定医
【所属学会】
日本産科婦人科学会(専門医・指導医、役員(幹事)歴あり、代議員歴あり)
日本婦人科腫瘍学会(婦人科腫瘍専門医、代議員歴あり)
日本臨床細胞学会(細胞診専門医)
日本周産期・新生児学会
日本女性医学学会(旧更年期学会)
日本産科婦人科遺伝診療学会
日本エンドメトリオーシス学会(旧内膜症学会)
日本癌治療学会
日本癌学会