クラミジア
正式名称を「性器クラミジア感染症」と言い、日本では最も報告件数の多い性感染症です。
自覚症状のないケースも多いですが、重症化すると男女ともに不妊症の原因となります。20代女性の感染者が多く(※)、将来的に不妊症を患わないため、また流・早産や産道感染による新生児への感染などを防ぐためにも病気をきちんと把握して早期治療をすることが大切です。
(※)引用:厚生労働省「性感染症報告数(2004年〜2020年)」
クラミジアの原因
クラミジアは「クラミジア・トラコマティス」という細菌が粘膜に感染する病気です。
主に性器や、咽頭、大腸、結膜に感染します。オーラルセックスやアナルセックスを含む性行為が感染原因です。保菌者との性行為で感染する確率は30〜50%と言われています。
咽頭粘膜に感染すると「咽頭クラミジア」と呼ばれます。咽頭クラミジアはオーラルセックスの際に、性器から喉へ、または喉から性器へと感染します。その一方で、キスなど唾液による感染の可能性は極めて低いとされています。咽頭クラミジアでは、多くの場合無症状です。しかし、喉の痛みや咳、発熱といった風邪に似たような症状が現れたりした場合は、咽頭クラミジアに起因して慢性扁桃炎・咽頭炎が発症している可能性があります。
また、妊婦が感染すると、早産のリスクが高まる上、分娩時に新生児に感染させてしまう可能性があります。分娩時に新生児が感染した場合、生後2週間から18週間で上気道炎や肺炎、結膜炎を発症します。通常は軽症で済み、重篤には至りませんが、感染の可能性がある場合は、出産前に検査を受けるようにしましょう。
クラミジアの症状
クラミジアの潜伏期間は1〜3週間ですが、男性ではおよそ5割、女性では8割近くの患者に自覚症状のないケースが多いとされています。 日本では毎年3万人近くの感染事例が報告されていますが、実際は報告数の20倍近く感染者がいるのではないかと推測もされています。推定では女性のうち、18〜19歳の10人に3人、20〜29歳の20人に3人が感染していると言われています。
初期症状では感染に気付きにくいことから、重症化してから気付くケースもあります。そのため、いつ感染したのか、感染経路がはっきりしないケースも多くあります。感染が発覚したタイミングで特定のパートナーがいる場合は、パートナーが無症状であっても必ず一緒に検査を受けるようにして下さい。
主な男性の症状
男性では、尿道にクラミジア細菌が感染し「クラミジア性尿道炎」を引き起こす場合が多い傾向です。感染後、1〜3週間の間に下記の症状が現れます。
- 尿道の痒み
- 排尿時の痛み
- 尿道からの比較的さらさらで透明な膿
- 陰のうの腫れ・発熱
淋病と類似した症状ですが、クラミジアでは軽症の場合が多くあります。しかし、治療を放置すると、症状が進行し「精巣上体炎」や「前立腺炎」を引き起こし、不妊の原因となります。さらに、HIVといった他の性感染症へ感染する可能性も高くなります。
主な女性の症状
女性の場合は子宮頸管にクラミジア細菌が感染し、「クラミジア性子宮頸管炎」を発症します。無症状の場合が多いですが、2〜3割の患者には、感染後1〜3週間で症状が現れます。
- おりものの増加
- 下腹部の痛み
- 不正出血
- 性交痛
多くの場合は軽症ですが、治療を放置すると炎症が進行し、卵管炎や卵巣炎、子宮内膜炎、骨盤腹膜炎といった重篤な合併症を引き起こす可能性があります。女性の場合は特に気が付きにくい傾向がありますが、進行すると命に関わるような合併症や不妊の起因となります。気になる症状がある方は、早めに専門の医療機関で受診して下さい。
クラミジアの治療と予防
クラミジアの治療
クラミジアは、自然治癒することがないとされている感染症です。気になる症状がある場合や、感染の可能性がある場合には検査を受けましょう。クラミジアの検査方法には、「抗原検査」と「抗体検査」の2種類があります。
抗原検査
抗原検査では、男性は初尿の採取、女性は子宮頚管の分泌物を採取して感染の有無を判定します。また、咽頭感染の場合は、うがいでの接種で簡単に検査できます。いくつかの検査方法がありますが、実施する医療機関や検査方法によっては比較的早く結果がわかり、また診断の精度も高いです。男性の場合、感染の可能性が高い場合や既に症状が現れている場合には、抗原検査を行うことが推奨されます。女性の場合は感染範囲が広く、抗原検査で陰性であっても何らかの異常がある場合は、次の抗体検査も併せて判断をする必要があります。
抗体検査
抗体検査は血液を採取し、抗体の有無を判定する検査方法です。精神的・身体的な負担の少ない検査方法ですが、感染の可能性があった時から1か月程度の期間を空ける必要があります。
また、検査の性質上、過去の感染であっても陽性と判定される点にも注意が必要です。そのため、過去にクラミジア感染がある場合は抗原検査を行うと良いでしょう。しかし、子宮頚管からの分泌物を採取する抗原検査を妊娠中の女性が受けると、胎児に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。妊娠の可能性のある場合は、抗体検査を選択して下さい。
クラミジアの基本的な治療は、抗生物質の経口投与です。服薬する薬の種類や病状によっては1回の服薬で済む場合もありますが、症状が進行していると数日間の点滴が必要となる場合もあります。
医師から指示された期間は抗生物質を欠かさず服薬し、服薬期間終了後、2〜3週間で再検査を受けて下さい。薬を服薬しても確実に陰性となる訳ではなく、抗生物質が効かないこともあるため、再検査を必ず受けるようにしましょう。
また、反復感染を避けるため、必ずパートナーも一緒に治療を受けて下さい。双方の治療が完了するまでは、性行為を控えることが大切です。
クラミジアの予防
クラミジアの主な感染経路は性行為です。リスクの高い性行為を避けることで予防ができます。クラミジアの主な予防方法は、以下の通りです。
- コンドームを使用する
- 不特定多数との性行為を避ける
- 体調が優れない時や、生理中には性行為を行わない
コンドームの使用はクラミジアだけではなく、性感染症の予防に大きな効果が期待できます。また、不特定多数との性行為は感染するリスクが高くなるだけでなく、感染経路が特定しにくくなるため、一度治療しても反復感染する可能性があります。
さらに、体調が優れないときは免疫力が低下して細菌感染が起こりやすくなります。生理中は出血部位から細菌感染のリスクが高まるため、性行為は避ける方が良いでしょう。
みんなの泌尿器科クリニック 院長藤井 慎介
【経歴・資格・所属学会】
2010年3月
広島大学医学部医学科卒業
【職歴】
2010年4月
広島西医療センター初期研修医
2012年4月
同専修医
2015年4月
広島大学病院泌尿器科医科診療医
2016年4月
広島大学大学院医歯薬保健科学博士課程
2020年3月
同博士課程終了
2021年3月
広島大学病院泌尿器科退職
2022年4月
みんなの泌尿器科クリニック開院予定
【学位・資格】
日本泌尿器科学会専門医
日本泌尿器科学会指導医
癌治療認定医
緩和ケア認定医
難病指定医
小児慢性特定疾病指定医
【所属学会】
日本泌尿器科学会
日本小児泌尿器科学会
日本排尿機能学会
日本性機能学会
日本性感染症学会
日本尿路結石症学会
日本生殖医学会
日本抗加齢学会