子宮体がん(子宮内膜がん)

子宮体がんとは子宮体部に発生する子宮がんのことです。子宮体がん(広義)には子宮内膜がんと子宮肉腫の2種類があります。子宮内膜がん(狭義の子宮体がん、以後子宮内膜がんにつき説明)は子宮内膜に発生し、子宮筋に発生するものが子宮肉腫です。

子宮体がんは発がん要因や発生分子機構,生物学的悪性度などの観点からⅠ型とⅡ型に大別されます。Ⅰ型腫瘍は80%を占め、エストロゲン刺激により前癌病変である子宮内膜異型増殖症を経て、組織学的に高分化ないし中分化型の類内膜癌として発生します。閉経期周辺年齢に好発し、比較的予後良好な集団とされます。これに対しⅡ型腫瘍は20%程度で、前駆病変が特定されておらず、比較的高齢者の萎縮内膜に低分化型類内膜癌、明細胞癌、漿液性癌として発生する予後不良な集団とされます。

子宮体がんの原因

がん発生の原因は身体に生じたエラー細胞です。エラー細胞は毎日生まれ続けていますが、通常は免疫が排除しています。しかし、免疫が上手く働かずにエラー細胞が増え続けて集まったものががん細胞です。エラー細胞は喫煙や飲酒、加齢、肥満が原因で発生します。

Ⅰ型腫瘍は、前述のようにエストロゲン刺激により前癌病変である子宮内膜異型増殖症を経て、類内膜癌として発生します。発がんにはPTEN、K-Rasの遺伝子変異、ミスマッチ修復異常、マイクロサテライト不安定性が重要とされます。

Ⅱ型腫瘍の発がんには、がん抑制遺伝子であるp53の変異が関わるとされます。

本邦における新規患者数は20年間で3,800人(1993年)から13,000人(2013年)、死亡数は690人(1993年)から2,100人(2013年)と3倍増となっており、注意が必要です。

子宮体がんの症状

子宮体がんは不正出血や褐色帯下が初期症状です。過多月経や不規則月経と言った月経異常として現れることもあります。進行することで排尿障害や排尿時痛などが生じます。また、下腹部や腰に痛みが発生することもあります。これらの症状を感じたらすぐに検査をして貰いましょう。

子宮体がんの治療と予防

子宮体がんの診断・治療

診断は症状に加え、経腟超音波検査、子宮内膜細胞診(欧米では信頼性がやや劣るとされる)、子宮内膜組織診(近年は痛みを伴う部分掻爬より、低侵襲の吸引器具が使用される)、CT・MRI・PETCTなどの画像診断、腫瘍マーカー(CA125やCA19-9など)が用いられますが、子宮頸がんに比し、より遠隔操作になるので、細胞診組織診の偽陰性には留意が必要です。

治療法は、初期Ⅰ型腫瘍の妊孕性温存ホルモン治療と、進行がんの化学療法・放射線療法単独以外は、手術療法がまず選択されます。手術は、進行によって切除する範囲が異なります。

  • 子宮と卵管、卵巣を切除する手術(単純・拡大子宮全摘出術)
  • 子宮と子宮の周りの組織、卵管と卵巣を切除する手術(準広汎子宮全摘出術)
  • 卵管や卵巣、子宮、子宮の周りの細胞、膣を切除する手術(広汎子宮全摘出術)

術後には排便や排尿に違和感を覚えることがあります。

手術しにくい部分の治療には抗がん剤治療や放射線治療が用いられます。放射線治療は放射線をがん細胞に直接当てることで小さくする治療法ですが、子宮体がんの多くを占める「腺癌」にはあまり効きません。抗がん剤治療は薬物を用いてがん細胞を小さくすることのできる治療法です。手術後の再発防止を目的に使用されることもあります。

子宮体がんの予防

子宮体がんの予防にはがん全般に言われている予防方法が効果的です。食生活を整え、適度に運動を行います。喫煙や飲酒も極力控えるようにしましょう。これらの予防をしていてもがんにならないということではありません。完治にはできるだけ早期に発見することが重要です。そのため、身体に少しでも異変を感じたら検査にいくようにしましょう。これも予防策の一つと言えます。

この記事の監修

ひらた女性クリニック 院長平田 英司

みなさんこんにちは、ひらた女性クリニック院長の平田英司です。
長崎大学医学部を卒業し広島大学産科婦人科学教室に入局して以来、25年以上にわたり総合病院勤務医として婦人科腫瘍、産科、女性医学、不妊と産婦人科の四つの診療分野につき幅広く研鑽を積んで来ました。婦人科は広島県の代表的な婦人科腫瘍専門医として手術執刀を含め診療の中心的役割を担い、産科はNICU 設置病院に主に勤務し総合的周産期医療に従事してきました。
しかし、こと外来診療に関しては、仕方がないことですが、総合病院の外来はどこも効率優先から待ち時間が長く診療時間が短くなりがちで、病気や問題の本質にせまり難く、これがストレスになっていました。
患者さんも医師も納得する診療、とにかくていねいな診療、これを実現するべく自分のクリニックを開院させて頂く運びとなりました。一見軽微に思える症状でも、また症状がなくとも抱えた問題について気軽に相談でき、かつ専門的診療まで実施可能で、さらに広島市内県内のみならず全国の高次医療機関への紹介が可能な「究極のかかりつけ医」を目指します。
「どうせうまく治らない」「どうせわかってくれない」「女性医師でないからわからない」と思いつつでもいいから、気軽に受診して下さい。必ずや、あなたの問題を一緒に解決し、快方に向かわせられると思います。

【経歴・資格・所属学会】

【略歴】
広島県呉市出身、幼少期は福山市育ち
広島市立袋町小学校, 広島大学附属中・高等学校 出身
長崎大学医学部医学科 卒業
広島大学産科婦人科学教室 入局
以後、JA尾道総合病院、呉共済病院、公立御調病院、四国がんセンター、
広島大学病院(診療講師、統括医長、医局長)、東広島医療センター(医長)に着任

【資格】
医師免許
学位(甲、広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 外科系専攻)
日本産科婦人科学会専門医・指導医
婦人科腫瘍専門医
細胞診専門医
母体保護法指定医

【所属学会】
日本産科婦人科学会(専門医・指導医、役員(幹事)歴あり、代議員歴あり) 
日本婦人科腫瘍学会(婦人科腫瘍専門医、代議員歴あり)
日本臨床細胞学会(細胞診専門医)
日本周産期・新生児学会 
日本女性医学学会(旧更年期学会)
日本産科婦人科遺伝診療学会
日本エンドメトリオーシス学会(旧内膜症学会)
日本癌治療学会
日本癌学会

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