子宮頸がん

子宮頸がんとは、腟管の奥、外子宮口のある子宮頸部に悪性腫瘍ができている状態の総称で、子宮がんの一種です。婦人科検診で見つかることが多く、早期に発見できれば予後の良いがんです。しかし、発見が遅れると治療が困難になり完治は難しくなります。

子宮頸がんによる死亡数は2016年では2,710人となっており、10万人当たり4.2人の死亡率となっています。罹患率、死亡率ともに30歳代前半から上昇していて、近年は若年層(20歳代)での罹患率が増加傾向にあります。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんのリスクファクターとして,HPV(human papilloma virus)感染はとくに重要で、HPV感染が子宮頸癌発生と関係していることは疑いようがありません。全女性の約75%は性行為によって一時的にHPVに曝露されているといわれます。日本女性の正確な感染の実態を把握することは難しいですが、健常女性の子宮頸部におけるHPV検査の陽性率は、概ね10代が30~40%、20代20~30%、30代10~20%、40代5~10%、となっており、年齢とともに減少します。HPVは約8,000塩基対の2本鎖のDNAウイルスであり、HPVには200種類以上の型が分離され,とくに子宮頸がんに検出されるものはハイリスク型(13-16種類)と呼ばれ、16、18、31、33、35、52、58型などが本邦の浸潤がんで検出率が高いものです。なかでも16型は、子宮頸部扁平上皮癌の発症と関係が深く、子宮頸がんのうち約50%で検出され、他の型より潜伏期間が短いことが知られています。HPVは性行為等で生じた粘膜の微小な傷から侵入し基底細胞に感染していきます。感染細胞が分裂するときに、ゲノムの限定的な複製が起こり娘細胞に移行し潜伏・持続感染しCIN1(子宮頸部軽度異形成)の状態となります。CIN2(中等度異形成)、CIN3(高度異形成・上皮内がん)と病変が進行するうちに宿主染色体へのHPV DNAの組み込みが起こりp53の不活化とアポトーシスの抑制、RBファミリー蛋白質の不活化などにより浸潤癌へと進展していくのです。

その他の背景因子としては、初交年齢が低く性交パートナーの数が多い、経口避妊薬の使用、喫煙、クラミジア感染などが知られています。喫煙によるCINおよび子宮頸癌のリスクは1.5倍で、経口避妊薬の使用の経験者は、子宮頸がん発生率が非服用者の1.31倍になるとされていますが、多分に統計学的な報告で、直接の原因とは考えられていません。

子宮頸がんの症状

初期病変では無症状であり、検診によるスクリーニングやその他の診察機会に偶然に発見されることが多いです。浸潤癌の症状としては、性交後出血、不正出血、帯下異常などです。近接臓器に浸潤した場合には、血尿、下血、排尿・排便異常などの他、より進行すると腰痛や神経痛症状を認めることがあります。

子宮頸がんの診断・治療と予防

子宮頸がんの診断・治療

明らかな浸潤がんの場合、クスコ腟鏡診にて肉眼的に腫瘍が確認できれば診断は可能です。そのような場合には細胞診、組織診を実施し病理学的な診断を確定することで、次に臨床進行期の診断に移ります。しかし一般的には、初期病変は細胞診で異常が指摘され、それをきっかけとして酢酸加工後コルポスコピー、狙い組織診にて病理学的に診断されることが多いです。がんの病理学的診断が確定したのちに、ⅠA期までが疑われるときには、一般的には円錐切除術を施行し進行期診断を行います。ⅠB期以上に診断されたときには、画像診断(MRI・CT・PET-CTなど)を用いて、腫瘍径の評価、遠隔転移の評価を行います。画像診断で一般的に描出可能な病変はⅠB期以上の例です。

子宮体がんや卵巣がんなど、多くの癌では手術的・病理学的診断に基づいて進行期分類が決定されていますが子宮頸がんのFIGO進行期診断では治療前の臨床的検査結果により決定されます。そのため術前の診察は熟練した医師により、必要があれば麻酔下で行われることが望ましいのです。このFIGO進行期の問題点は、医師の診察で決定されることから施設間あるいは医師間での大きなバイアスが生じることです。さらに現状では画像診断をどのように取り入れるのかのコンセンサスがなく、現在FIGO腫瘍委員会では画像診断を取り入れた新たなFIGO進行期についての議論が行われています。本邦では、TNM分類に画像診断を取り入れ、画像所見を腫瘍の進展度合いやサイズの評価、実質臓器転移、リンパ節転移の評価に用い、内診、直腸診による局所所見を加味してTNM分類を診断するということにしています。

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治療に関しては、臨床進行期によって詳細に治療は分かれていますがここで詳細は触れません。大まかには、Ⅰ期までは手術療法を主に選択し、Ⅱ期以上では放射線療法単独または同時化学放射線療法が行われます。治療の選択には、患者の年齢、基礎疾患などが考慮されます。

前癌状態である異形成の状態で診断できた場合には、出産の希望の有無により子宮頸部円錐切除術、レーザー蒸散などが行われます。子宮頸部円錐切除術は子宮の入口付近の一部を切除する手術で将来妊娠することも可能ですが、早産になるリスクが高くなるというデメリットがあります。妊娠を希望されない方は、子宮のみを摘出する手術が行われることもあります。

浸潤がんの場合、広汎子宮全摘出術や広汎子宮頸部切除術等の手術が検討され、骨盤リンパ節の郭清も施行されます。より進行期が進むと、放射線療法や、抗がん剤の点滴と放射線治療を併用する同時化学放射線療法が選択できます。ただし、放射線治療や抗がん剤の投与は強い副作用が伴うため、慎重な判断が求められます。

また、再発した場合は、手術療法、化学療法、放射線療法などの単独治療が行われます。

子宮頸がんの予防

HPVとの暴露を減らす一次予防として、(1)ライフスタイル、(2)ワクチン、早期発見早期治療により癌死を防ぐ二次予防として、(1)細胞診、(2)コルポスコピー、(3)HPVtesting、があります。

ライフスタイルとしては、パートナーの数の制限や日常的にコンドームを使用することによりHPV感染を減少させる可能性があります。ワクチンは、現在HPV16/18に対する2価ワクチン(サーバリックス)とHPV16/18と尖圭コンジローマの原因ウイルスHPV 6/11を加えた4価ワクチン(ガーダシル)の2種類があります。もっとも接種が推奨されるのは、10~14歳の女性で、初交前の接種が望ましいものです。さらに9価ワクチンも昨年認可されました。詳細は別項に譲ります。

二次予防のうち、(1)細胞診は、子宮頸部の擦過細胞診は子宮頸部病変の発見には有力な手段でスクリーニングには不可欠です。(2)コルポスコピーは、拡大鏡とも言われ、二次検診で子宮頸部病変を的確にとらえ、生検部位を特定するのに不可欠な検査法です。(3)HPV testingの導入により、細胞診にてごく軽度の擬陽性ASC-US(Atypical Squamous Cells of Undetermined Significance)が検出されてもハイリスクHPV陰性者に対しては経過観察とし、陽性者のみコルポスコピーを施行することで不必要な生検を避けることができるという治療指針も示されています。

子宮頸がんは早期に発見できれば、完治も可能ながんです。しかし、症状が進行していたり転移していると、完治できる確率は低くなり、一度完治しても再発する確率が高くなります。少しでも体調に異変を感じた場合には、早めに病院を受診して下さい。

この記事の監修

ひらた女性クリニック 院長平田 英司

みなさんこんにちは、ひらた女性クリニック院長の平田英司です。
長崎大学医学部を卒業し広島大学産科婦人科学教室に入局して以来、25年以上にわたり総合病院勤務医として婦人科腫瘍、産科、女性医学、不妊と産婦人科の四つの診療分野につき幅広く研鑽を積んで来ました。婦人科は広島県の代表的な婦人科腫瘍専門医として手術執刀を含め診療の中心的役割を担い、産科はNICU 設置病院に主に勤務し総合的周産期医療に従事してきました。
しかし、こと外来診療に関しては、仕方がないことですが、総合病院の外来はどこも効率優先から待ち時間が長く診療時間が短くなりがちで、病気や問題の本質にせまり難く、これがストレスになっていました。
患者さんも医師も納得する診療、とにかくていねいな診療、これを実現するべく自分のクリニックを開院させて頂く運びとなりました。一見軽微に思える症状でも、また症状がなくとも抱えた問題について気軽に相談でき、かつ専門的診療まで実施可能で、さらに広島市内県内のみならず全国の高次医療機関への紹介が可能な「究極のかかりつけ医」を目指します。
「どうせうまく治らない」「どうせわかってくれない」「女性医師でないからわからない」と思いつつでもいいから、気軽に受診して下さい。必ずや、あなたの問題を一緒に解決し、快方に向かわせられると思います。

【経歴・資格・所属学会】

【略歴】
広島県呉市出身、幼少期は福山市育ち
広島市立袋町小学校, 広島大学附属中・高等学校 出身
長崎大学医学部医学科 卒業
広島大学産科婦人科学教室 入局
以後、JA尾道総合病院、呉共済病院、公立御調病院、四国がんセンター、
広島大学病院(診療講師、統括医長、医局長)、東広島医療センター(医長)に着任

【資格】
医師免許
学位(甲、広島大学大学院 医歯薬保健学研究科 外科系専攻)
日本産科婦人科学会専門医・指導医
婦人科腫瘍専門医
細胞診専門医
母体保護法指定医

【所属学会】
日本産科婦人科学会(専門医・指導医、役員(幹事)歴あり、代議員歴あり) 
日本婦人科腫瘍学会(婦人科腫瘍専門医、代議員歴あり)
日本臨床細胞学会(細胞診専門医)
日本周産期・新生児学会 
日本女性医学学会(旧更年期学会)
日本産科婦人科遺伝診療学会
日本エンドメトリオーシス学会(旧内膜症学会)
日本癌治療学会
日本癌学会

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