アルコール性肝炎
アルコール性肝炎は、長期にわたる大量の飲酒や飲酒量の増加により発症します。症状としては、腹痛、発熱、黄疸(皮膚などが黄色くなる症状)を伴います。また、肝機能の異常に伴い、白血球数の増加も見られます。
通常は禁酒により改善します。しかし、禁酒したにもかかわらず、肝性脳症、肺炎、急性腎不全、消化管出血などを合併し、肝不全により死亡する重症型アルコール性肝炎になることもあります。その際は、血漿交換が治療の中心となります。
アルコール性肝炎の原因
アルコール性肝炎の原因は過剰な飲酒です。
お酒を飲み続けると肝臓に負担がかかります。それを続けていくと、70~90%の人がアルコール性脂肪肝を発症します。その後も飲酒量を制限することなく過剰な飲酒を続けていくと、10~20%の人がアルコール性肝炎になります。また、さらに飲酒を続けていくと肝不全、肝硬変などより重症な病気が発症していきます。
アルコール性肝脂肪の発症経緯は、多量の飲酒により肝臓の機能がアルコールを解毒することに重きを置くようになってしまうからです。それにより、脂肪の代謝が行われなくなり、肝臓に脂肪がたまっていくことで脂肪肝となります。
アルコール性肝炎の症状
肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれており、自覚症状を感じにくい臓器です。そのため初期の段階では、症状はほとんどなく、健康診断の際に肝機能への指摘がある程度です。
しかし、症状が進んでくると、顔が赤くなったり黒くなったりします。また、倦怠感や皮膚の病気を発症することもあります。その他にも、食欲不振、発熱、肝臓の腫れや痛み、ひどい場合では腹水(内臓の外側にある腹膜で覆われた空間に、異常な量の液体が溜まる状態)が現れることもあります。
アルコール性肝炎の治療と予防
アルコール性肝炎の治療
アルコール性肝炎の一番の治療は禁酒することです。しかし、患者のなかにはアルコール依存症を合併している患者も多く、内科のみでの禁酒指導だけでは治療が難しいケースも多いです。アルコール依存症を合併している患者では、精神科医と家族のサポートにより、依存症の治療も並行して行っていくことが大切です。
また、症状によっては肝臓を守る薬や栄養剤が処方されたり、食事内容などの生活習慣の改善を促すための指導が行われることもあります。
その他にも、症状に合わせて利尿剤や下剤を使い、治療を行っていきます。
アルコール性肝炎の予防
アルコール性肝炎の一番の予防は飲酒をしないことです。また、休肝日を作ることや、アルコール度数の低いお酒を飲むといった工夫も大切です。
さらに、タンパク質やビタミンには肝機能を改善する効果もあるため、飲酒後に栄養を補給することも予防に有効的です。
仁愛内科医院 院長今川 宏樹
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務