急性ウイルス肝炎
急性ウイルス肝炎とは、肝炎ウイルスに感染することで肝臓の細胞に炎症が起き、急性の肝機能障害を呈する病気です。
肝炎ウイルスには、A、B、C、D、E型の5種類が確認されており、どのように感染するかは肝炎ウイルスの種類によって異なりますが、5種類の内A型、B型肝炎ウイルスには予防接種があります。
急性ウイルス肝炎は多くの場合では突然炎症が起き、数週間続いた後に落ち着きますが、約1%から2%で劇症化し、肝臓移植治療が必要になるケースがあります。
急性ウイルス肝炎の原因
急性ウイルス肝炎は、A、B、C、D、E型の5種類の肝炎ウイルスに感染して起こります。
A型肝炎ウイルス
不衛生な水や食べ物等から感染し、感染力は強く、初めて感染した時には急性肝炎を発症しますが、一度感染した方は免疫を保持します。
初めてA型肝炎ウイルスに感染し発症することが主で、東南アジア等への海外旅行中に感染することも多くあります。
B型肝炎ウイルス
血液や性的接触等、体液を介して感染することが原因ですが、医療従事者による針刺し事故で感染することもあります。
B型肝炎ウイルスでは後遺症を残さずに治癒することが殆どですが、肝炎が慢性化して、肝がんや肝硬変を起こす場合もあるため、注意が必要です。
C型肝炎ウイルス
輸血や医療関係者の針刺し事故、入れ墨、注射の回し打ち等の血液を介して感染します。
現在では、献血の検査制度が格段に向上したため、輸血によるC型肝炎ウイルスの感染は殆どありません。
D型肝炎ウイルス
感染者の血液や体液との接触によって感染しますが、母子の垂直感染は稀です。
D型肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスを必要とする「リボ核酸系ウイルス」ですので、B型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスを同時感染した時、B型肝炎の症状が悪化します。
E型肝炎ウイルス
鶏のレバーやシカ、イノシシ等の肉を、しっかり加熱せずに食べることで感染します。海外旅行中(東南アジアやメキシコ)で感染することも多くあります。
また、妊娠後期にE型肝炎ウイルスに感染すると重症化し、その致死率は20%にもなると言われているため、注意が必要です。
急性ウイルス肝炎の症状
急性ウイルス肝炎の症状は、原因となるウイルスによって違いがありますが全身倦怠感や黄疸、皮膚の痒み、食欲不振、嘔気嘔吐等があります。
A型、E型肝炎の症状では、他のウイルスによる肝炎に比べると発熱することが多く、C型肝炎ウイルスによる肝炎の場合は自覚症状がないことが多くなっているため、注意が必要です。
急性ウイルス肝炎の予防と治療
急性ウイルス肝炎の予防
水や食べ物が原因となっているA型、E型の場合は、経口感染の機会を防ぐことが予防になります。生水や生鮮食物の摂取をできるだけ避け、肉はしっかりと焼いて食べましょう。
血液などの体液が原因となっているB型、C型の場合は、避妊具を付けることや、注射針を使い回さない等が予防となります。
しかし、A型とB型のウイルスに対してはワクチンがあるため、予防の為に接種しましょう。尚、B型肝炎ワクチンは2016年から定期接種化されています。
急性ウイルス肝炎の治療
急性ウイルス性肝炎は、C型肝炎以外の場合や重症の場合を除き、特別な治療をしなくても改善に向かうことが殆どですが、C型肝炎は高い確率で慢性化してしまいます。
治療は「安静」と「栄養療法」があります。
安静
寝たまま安静にしていると肝臓への血流が増し、それにより肝臓に栄養が送られ肝障害を回復させる効果が期待できます。
栄養療法
低たんぱく、低脂肪の栄養補給を行います。たんぱくや脂肪は肝臓で分解されるため、それらを抑えることで肝臓を休ませる効果が期待できます。
また、抗ウイルス療法が行われることもあります。
仁愛内科医院 院長今川 宏樹
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務