大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸の粘膜層の一部が隆起し、大腸の内腔に突出した病変の総称です。ポリープには様々な形があります。大きさも1mm程度の小さいポリープが出来る場合もあれば、数cm大のポリープもあります。同時期や期間を置いて多発的にポリープが形成されることもあります。
大腸ポリープは、その構造によって非腫瘍性と腫瘍性と大きく2つに分類出来ます。非腫瘍性のポリープは、炎症や感染症にかかった後に出来る炎症性と加齢によって出来る過形成性、腫瘍が過剰に発育した過誤腫性ポリープがあります。腫瘍性のポリープには腺腫やがんがあります。
腺腫はがんに変化するケースも少なくありません。さらに、大腸がんのほとんどは腺腫からがんに移行して発生します。腺腫は良性ですが、がんに移行することもあるため、放置することは危険です。良性の段階でも、早期に治療しましょう。
大腸ポリープの原因
大腸ポリープは飲酒・喫煙・運動不足・肥満等の生活習慣や食生活、炎症等様々な要因が複合することによって発生すると考えられています。
大腸がんは、遺伝性大腸がんも多いことから、大腸ポリープも遺伝により出来やすい体質の方がいるとされています。遺伝性の大腸ポリープは、大きく2種類に分けられます。大腸に多数のポリープが発生する「家族性大腸腺腫症」と、ポリープの数は少ないが大腸がんが家族内に多く発生する「リンチ症候群」です。どちらの場合でも、血縁関係者に大腸がんや大腸ポリープと診断された方がいる場合は、定期的にがん検診を受けることをお勧めします。
大腸ポリープの症状
ほとんどの場合無症状で、発覚が遅れることも少なくありません。ただし、肛門近くにある直腸部分にポリープが出来た場合には排便の際、血便が出ることや、ポリープ自体が肛門から出ることがあります。また、稀ですが、大きなポリープによって大腸を塞がってしまうことがあります。ポリープにより閉塞されると腸閉塞(イレウス)になり腹痛や嘔吐等の症状が起こります。
大腸ポリープの治療と予防
大腸ポリープの治療
大腸ポリープが見つかった場合、必ずしも直ぐに治療を開始する訳ではありません。切除が必要となるか大腸内に青い色素を散布する色素撒布や内視鏡による拡大観察によって診断します。腺腫や、がんを疑うポリープだった場合に治療を行います。またポリープの形状が凹んでいた場合、大きさにかかわらず治療が必要です。
なお、直腸やS状結腸でよく見られる「過形成性ポリープ」は、経過観察となることが多いです。ポリープの治療は切除治療です。切除治療には複数の方法があります。中でも一般的なのは、大腸内視鏡という大腸カメラによる切除です。一般的な切除方法は3つあり、それぞれ「内視鏡的ポリープ切除術」「内視鏡的粘膜切除術」「内視鏡的粘膜下層剥離術」と言います。
内視鏡的ポリープ切除術は、ポリープの茎となる部分に、スネアという輪状の金属を引っかけてポリープを切除する方法です。
内視鏡的粘膜切除術は、ポリープの下の粘膜下組織に水や特殊な薬液を注入してポリープを持ち上げ、スネアで切除する方法です。
内視鏡的粘膜下層剥離術は、病変の周囲の粘膜を切開し粘膜下層を剥離して病変を一括切除する方法です。技術を要するため専門の医師が行います。
内視鏡では切除出来ない大きさのポリープは、外科的な手術治療で切除します。
また、最近では「コールドポリペクトミー」が行われ始めています。コールドポリペクトミーは熱を使わずにポリープを切除する手術です。上記の切除術では術後に出血や穿孔等の合併症をきたす可能性がありますが、コールドポリぺクトミーは低侵襲で合併症のリスクが低くなるとされています。
切除したポリープは、顕微鏡による(病理組織検査)が必要です。ポリープが大腸がんだった場合や、偶発症を発症した場合には、追加治療を行うことがあります。尚「偶発症」とは、内視鏡治療の際に多量の電流が流れてしまうことや、深く切除されることで穿孔になる、切除した部分から出血することです。偶発症のほとんどは治療中に発症しますが、約0.4%の確率で治療後数日経過してから出血することもあります。
電流が流れる、あるいは、出血した場合には、内視鏡を用いてクリップで穴をふさいで止血をします。しかし、穿孔は場合によっては手術が必要です。
大腸ポリープを内視鏡を使って切除した後、大きさによりますが1週間程度は出血する可能性があります。刺激物やお酒を口にしないように食事に配慮し、運動や入浴を控えることが求められます。また、出血を防ぐために抗血小板薬や抗凝固薬の使用を中止する場合もあります。
大腸ポリープの予防
近年の食生活の欧米化により大腸ポリープが増えています。そのため食習慣や生活習慣の改善が予防につながります。赤身の肉類や高カロリーの摂取、保存・加工肉の摂り過ぎには注意し、アルコールもなるべく控えるようにしましょう。また、適度な運動をし、十分な休養をとって、ストレスを溜めないように心がけることも大切です。
大腸ポリープが見つかった場合には、必要に応じて切除等等の治療を受けなければなりません。特に、腺腫性ポリープだった場合は、進行すると大腸がんを発症する可能性が高く、早期発見が望まれます。そのため、定期的にがん検診を受け、早期発見出来るようにしましょう。40歳以上の方は年1回の大腸がん検診(便潜血検査)が推奨されています。
仁愛内科医院 院長今川 宏樹
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務