肺結核
肺結核とは、結核菌に感染することによって発症する肺の感染症のことです。結核菌は人から人へ感染する菌(抗酸菌)です。戦前、肺結核は国民病として恐れられるほど、多くの方が発症していました。戦後になりワクチンの開発や、レントゲン診断による早期発見、結核治療薬導入等により、患者数は減少しています。しかし、2016年には1万8千人が新たに肺結核に罹患していることから、肺結核にかかる可能性は低くはないと言えます。
肺結核の原因
空気中に存在する結核菌を吸い込む等して、体内に取り込まれることで肺結核を発症します。乳幼児が初めて感染すると、すぐに症状が出ることが多く、粟粒結核や結核性髄膜炎として発症することも少なくありません。一方で成人の方は、結核菌が体内に侵入しても、すぐに発症することはありません。結核菌が体内に存在している状態で、加齢、ストレス、糖尿病やHIV等で免疫力が低下して結核菌が活発になると発症します。肺結核では、肺の各所に結核性病変が形作られ、菌が体外に排泄されます。
尚、結核菌に感染したからといって、必ずしも肺結核を発症するわけではありません。肺結核を発症する方は、結核菌に感染した方の10%程度と言われています。
肺結核の症状
肺結核になると、咳が2週間以上持続します。さらに、体重の減少や倦怠感、血の混じった痰、寝汗、発熱等の症状も見られます。
ただし高齢者や一部の方は、はっきりとした症状が出ず、発症に気付かないケースもあります。発症に気付かず放置すると、周囲に感染を広めることがあるため注意が必要です。
肺結核の治療と予防
肺結核の治療
抗菌機序の異なる治療薬を組み合わせた治療が行われます。2種類以上の薬物を組み合わせるのは、結核菌は増殖スピードが遅く、1種類の薬物を投与するだけでは結核菌が薬剤耐性を獲得してしまうためです。治療開始から2か月目までは、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、ストレプトマイシンといった4種類の抗菌薬を内服します。さらにその後は、4か月間リファンピシンとイソニアジドに切り替え、内服治療を継続する形となります。
肺結核は、6か月以上薬の内服を続ければ治せます。
肺結核の予防
肺結核を予防するためには、規則正しい生活を送り、免疫力を下げないようにすることが重要です。また、ストレスが溜まると免疫力が低下し、感染した結核菌の活性を抑えることができず、肺結核を発病してしまうことになる。
肺結核を発症した場合は、医師の指示通りに6ヶ月以上継続して薬を服用し続けることが大切です。自己判断で中止しないようにして下さい。
はるた呼吸器クリニック 院長春田 吉則
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部卒業
中国労災病院・広島大学病院・広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀等で勤務