急性出血性大腸炎
急性出血性大腸炎とは、毒素を産生する大腸菌に感染することで、血性下痢を主とした様々な症状が現れる病気のことです。
どの年代でも発症リスクはありますが、特に小児と高齢者の発症率が高いという特徴があります。急性出血性大腸炎を引き起こす大腸菌は人から人へと感染するため、感染が確認されたら感染を拡大させないために接触を避けることが重要です。
急性出血性大腸炎の原因
急性出血性大腸炎を引き起こす大腸菌は複数確認されていますが、最も多いのは大腸菌O157:H7です。大腸菌O157:H7は牛の腸に生息しています。牛乳や牛挽き肉の加熱が不十分だった場合、大腸菌O157:H7を殺菌できず感染します。また、牛糞肥料で汚染された食べ物や水等から感染するケースも確認されています。
急性出血性大腸炎の症状
主症状は下痢です。突然、水様性下痢と腹部の強い痛みを感じた後、感染から24時間以内に血性下痢が生じます。下痢は個人差があるものの1週間程度続くことがあります。稀に発熱はあっても軽いことが多いですが、発熱した場合は39℃を超える高熱になることもあります。
また、急性出血性大腸炎を発症した方の5〜10%は、溶血性尿毒症症候群という合併症を引き起こします。溶血性尿毒症症候群とは、全身に小さな血栓ができて血流に障害を来たし、脳や心臓、腎臓等に悪影響を及ぼす危険な病気です。溶血性尿毒症症候群を発症した場合には、筋力低下、皮膚の蒼白化等、血小板数の低下等の症状が現れます。血栓ができた箇所が脳に影響を与えると、脳卒中の原因となり最悪の場合死に至ります。
急性出血性大腸炎の治療
最も重要な治療は脱水を防ぐための水分補給です。急性出血性大腸炎は下痢症状が見られることが殆どのため、脱水症状になり易い病気です。こまめな水分補給が行われますが、口からの水分補給で補えない場合には点滴治療を行います。
抗菌薬の使用は溶血性尿毒症症候群を誘発する危険があるため注意が必要です。
また、合併症を併発した場合には、水分補給に加えて合併症の治療も行われます。合併症が重篤な場合には、入院による集中治療が必要となることもあります。
急性出血性大腸炎の予防
急性出血性大腸炎を予防するためには、牛肉を口にする際は完全に火を通してから食べることが重要です。十分に加熱せずに食べると、毒素を産生する大腸菌が体内に侵入し大腸に感染する危険があります。牛挽き肉は、内部温度が71℃以上にするか、出てくる肉汁が透明になるまで調理しましょう。また、牛乳や乳製品は加熱殺菌したもののみを選んで下さい。
仁愛内科医院 院長今川 宏樹
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部医学科卒業
広島大学医学部附属病院・県立広島病院・中国労災病院・井野口病院・公立みつぎ総合病院・JA尾道総合病院・国立病院機構 呉医療センター・広島記念病院などで勤務