百日咳
百日咳とは、百日咳菌またはパラ百日咳菌という菌に感染することで、激しい咳を引き起こす感染症のことを指します。
百日咳の原因
百日咳は、百日咳菌またはパラ百日咳菌が、咳や痰、唾液等から飛沫感染することで発症します。侵入した百日咳菌またはパラ百日咳菌が、鼻や喉、気管・気管支の粘膜を侵すと、気道の繊毛活動を低下させる毒素を作り出すため、激しい咳等の特徴的な症状を発症すると考えられています。
百日咳の症状
百日咳はカタル期、痙咳期、回復期の3期に分類され、それぞれで症状が異なります。
感染後約10日間の潜伏期間があります。潜伏期間を経過後、症状が現れ始めます。
百日咳の主な初期症状は、鼻水や軽い咳等の風邪と同様の症状です。この時期を「カタル期」といい、1〜2週間ほど続きます。
カタル期を過ぎると「痙咳期」に入り、百日咳の特徴的な咳症状が現れます。具体的には、短い咳が連続的に起こり、その後に息を吸う際にヒューという、笛のような音の出る発作が繰り返されます。呼吸時等の器官へ刺激があった時だけではなく、刺激がなくても突然発作が起きるようになります。咳が続くことで、顔に赤みまたはむくみが出たり、睡眠不足や食事が困難になる等、日常生活もままならなくなります。
約1ヶ月が経過すると、咳発作は治まっていきます。しかし、咳発作により気道に粘膜損傷が生じているため、気道が完全に回復するまでは、刺激を受けると咳が出やすい状態が続きます。そのため、完全に発作がなくなるまでに数か月かかることも少なくありません。この時期を「回復期」といいます。
百日咳の治療と予防
百日咳の治療
百日咳の治療には、マクロライド系の抗生物質が使われることが殆どです。抗生物質は治療早期に投与した方が高い効果が期待できるため、カタル期の投与が理想です。しかし、カタル期は百日咳の特徴的な咳症状が見られないことから、百日咳と診断ができず、投与されることは殆どありません。
激しい咳に対しては、対症的に鎮咳薬や気管支拡張薬などが用いられますが、効果が乏しいことも多く、自然の回復を待つことも少なくない。
百日咳の予防
現在、百日咳にはワクチンがあります。健康障害を起こしやすい乳幼児を中心に、世界中で予防接種が行われており、ワクチン接種を打つことで予防が可能です。ただし、百日咳のワクチンの効果は10年程度と言われており、定期的な追加接種を行った方が良いでしょう。なお、百日咳菌の予防接種を受けていても、パラ百日咳菌を完全に予防することはできません。
ワクチンを打ったからと安心せず、規則正しい生活を送り免疫力を下げないように注意をすることで、百日咳菌及びパラ百日咳菌の感染予防に繋がります。
はるた呼吸器クリニック 院長春田 吉則
【経歴・資格・所属学会】
広島大学医学部卒業
中国労災病院・広島大学病院・広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀等で勤務