智歯周囲炎
智歯周囲炎とは、親知らずである智歯の萌出異常により、歯肉溝という深いポケットのようなものが形成され、細菌感染によって歯の周囲に慢性の炎症が起きている状態のことです。主に20歳前後の下顎智歯の萌出期に見られます。
智歯周囲炎の原因
智歯周囲炎の原因は、智歯の萌出異常です。智歯の萌出異常は、萌出すべき場所が小さくなるまたは狭くなることや、方向の異常、弱い萌出力等の、顎と歯の発育の不調和により起こります。
智歯周囲炎は、上顎よりも下顎に異常が生じることで発症することが多いです。その理由は、下顎の方が萌出時に歯を覆っている歯肉と、歯のポケットが大きく深いことから、食べかすが残りやすく、炎症を起こし易い構造になっているためです。ただし、稀に上顎の萌出方向の異常により発症することもあります。
智歯周囲炎の症状
慢性の場合は無痛となり自覚症状が殆どありません。
一方、急性に発症した場合は、智歯周囲の歯肉が赤くなったり、腫れ、自発痛、圧痛等の症状が出ます。症状が進行してくると、ポケットからの排膿や開口障害、嚥下痛等が見られる他、顎下リンパ節の腫脹・圧痛・硬結と共に、38度程度の発熱が見られます。
智歯周囲炎の治療と予防
智歯周囲炎の治療
慢性型の場合は、智歯を覆っている歯肉である歯肉弁の切除手術または抜歯をします。歯肉弁切除は、智歯の萌出方向が正常かつ智歯萌出の十分なスペースがある場合に行います。智歯の抜歯を行う場合は、術視野が狭く困難なため、歯肉の切開や歯槽骨の削除を行なってから治療を開始します。
一方の急性型の場合は、全身に対しては抗菌薬、鎮痛剤の投与をします。局所的には洗浄、消毒を行い、膿瘍が形成されている場合は切開が必要です。また、開口障害が強く、口腔内の処置が困難な場合には、刺激の少ない消毒液によるうがいをすることもあります。これらの治療を行い、急性症状が無くなってから抜歯します。
智歯周囲炎の予防
智歯周囲炎の一番の予防策は、親知らずを抜歯することです。親知らずの抜歯が難しい場合には、細菌や汚れが溜まらないように注意しましょう。親知らずの周辺は歯ブラシが行き届かず、汚れが溜まり易い特徴があります。そのため、ブラッシング方法を見直し、親知らず付近だけでなく、口の中全体のケアをしっかり行うことが大切です。
また、細菌の感染を予防するために、規則正しい生活を送り、免疫力を低下しないように心がけることも、予防に繋がります。

なないろ歯科クリニック 院長佐々木 博昭
【経歴・資格・所属学会】
1996年 広島私立修道中学校卒業
1999年 広島私立修道高等学校卒業/広島大学歯学部入学
2005年 広島大学歯学部卒業/医療法人森田会平和通り歯科口腔外科勤務
2010年 医療法人社団やまもと歯科医院勤務
2013年 なないろ歯科クリニック開院